1. ジョージとガーターベルトとキャロライン、なのです!
ジョージ・キャロライン サイドです。
ジョージ : とある国の王子
キャロライン : 純真無垢なるジョージの妃
……、またもや寝不足なのか。
御前会議の席で、諸侯達は王子の少々トロンとした目元を見るなり、目と目を合わし意志の疎通を図った。
……、今まで溜め込まれてらしたからなぁ、
……、ご馳走を目の前にお預けされてたから、
……、新婚か……、良いなぁ、良いなぁ。いいなぁ。
生暖かい視線が彼に注がれる。それには気づかぬジョージ王子。令嬢達からの贈り物の事で、彼の頭は悶々としていたからだ。
会議に集中しなくてはと思いつつ、贈られた全冊子読破の最中に、見つけた『月刊ムーサ、全員プレゼント』が、気になって仕方がない。彼の心をガッツリ掴んだ品物とは。
『ルーナ・シーデザイン、ガーターベルト』
……いかん! 思い出してしまった! くうぅ。キャロラインに欲しいな……。しかし夫たる者が、欲しがっていいのだろうか。……何処まで読んだのかな? そこまで行ってないか。丁寧に読んでいるから。
……欲しいって言ってくれないかな。ああ、キャロライン。
『殿方は香りとか? お好きなのですの? どこをご覧になられて……どうなりますの?』
等と雑誌を毎夜寝る前に読みながら、真面目に聞いてくる。
『香り』 に包まれてだな 『あんなことやこんなこと』 を妄想……、見る、見る。
ああ……キャロラインの卵菓子の様な……に、それを、全プレ……お、応募しようかな……! ふおおおぉ! 朝からふ、不埒な!
相変わらず悶々の森を彷徨う王子なのである。
☆☆☆☆☆その夜。
「ふきゃぁ……何という世界ですの。はうう、奥が深いのですの、王子様は月刊ムーサを全て、お読みになられましたの?」
凄いのですの。大人なのですのと、ほんのりと顔を赤らめ、寝台の上にて読書をしつつ、ジョージに問いかけるキャロライン。
「まぁ……続きが気になって、コホンコホン」
無邪気な質問に、少しばかり恥じてしまった彼は、咳払いをして気持ちを誤魔化した。白い絹地、レースを襟元袖口にあしらってある寝間着姿の妻。隣にてクッションを背に座っている、夫の咳に気が付くと、雑誌を閉じ心配そうに顔を近づける。
お熱が? お風邪を召されたのかしら、と腕を上げジョージの額に手を当てるキャロライン。柔らかな二の腕の白さが夫の目に、飛び込んで来た。
「お熱はありません…… 良かったのです。ねぇ王子様…… わたくし、お会いしたいのです」
額から手を離しにっこりと笑うキャロライン。妻の愛らしい顔をとろける様に見ながら、熱……あったら良かったな……等と少々意味不明な事を考えながら、「誰に?」 と聞くジョージ。
「ルーナ・シー先生ですの。わたくし大ファンなのです。なのでこの前こっそりファンレターを書いて……出しましたの、ねぇ王子様、お会いしたいのです。無理かしら?」
「え……、無理では無いけれど、ファンレター書いたの……」
ジョージの頭に 『ルーナ・シーデザイン、ガーターベルト』 がクローズアップされて行く。そんな夫の脳内等知らぬ無邪気な妻は、甘える様に身を寄せる。
「はい、先生の作品のファンですの、とお書きして、お会いしたいと書きましたの。お返事は……未だですが、お会いしたいのですの」
月間ムーサをきゅっと胸に抱き、小首を傾げてジョージに話す彼女。おねだりを、しかも寝台の上で、そして初めてされた王子は……
「わかった、直ぐに手配しよう」
即座に請け負ったのは、当然な成り行きなのである。