将来
「ハッハッハッ!DHギルドの奴ら、自分達がトップだと思って胡座をかいてるからこうなんだよ!」
——スライムショックが収まってから3日後、グンセさんはいつものようにカウンターの中に座り、高笑いしていた。
「はぁ……流石にDHギルドへ、喧嘩売るとは思いませんでしたよ。その片棒を担いでるとか、胃が痛くなりそう」
「お陰様でDHギルド幹部の泣き顔は見れたし、金も稼げたし万々歳だぜ」
「何でそんなにDHギルドが嫌いなんですか?」
「ヤクザとDHギルドなんて水と油だぜ?奴ら、何でも独占しようとしやがって、しまいにゃウチのしまにも手を出そうとして来やがったんだよ」
「はぁ。それでそのお返しをした訳ですか」
「おう。何倍にもして返して、菓子折まで付けてやったぜ」
「グンセさんてヤクザの割に、好きな事やって遊んでますよね?上の人たちに怒られないんですか?」
「上?怒られるって何のことだ?」
「いや、組長さんとか、立場が上の人達が居る訳じゃ無いですか」
「おいおい、今更何言ってやがる。俺が、群瀬組の頭で組長だぜ?」
「……は?」
「だから俺が組のトップだっての。確かに言ってなかったが、テメェは勘がいいから気付いてるもんだと思ってたぜ」
「ええええええ!?」
——完全にヤのつく人の下っ端で、ただの店番だと思ってた!確かに今回の件はおかしいとは思ったけど、上からの指示でやってるもんだと思ってたよ!!
今まで散々失礼な事言って来たんだけど……もしかして、僕、埋められる?
(こ、ここは謝っとくべきだ!)
「い、今まで失礼な態度とってすいませんしたああああ!!お願いです!埋めたり沈めたりはしないでください!!」
僕はその場で、手を地面に付けて土下座をする。
「はぁ……急に態度を変えんじゃねぇよ。ムノのお陰で組の資金が一気に潤ったんだ。テメェはビジネスパートナーで、対等の立場だと、俺は思ってるぜ?」
やばい、グンセさんがちょっとカッコよく見えてきた——いや、やっぱり無いな。顔を見たらそうでも無かった。
「まぁ、そう言ってくれるなら良いです。これからもよろしく」
「…おい。手のひら返しがスゲェな。それに今、失礼なこと考えてただろ」
「いやまさか。グンセさんはカッコいいなーって」
「……嘘は分かるっての。はぁ…やっぱり、埋めるか沈めてやりてぇ……」
グンセさんが額に手を当てて、ため息をついていたが——突然真面目な顔になり、僕を見ながら真剣に話し始める。
「まぁ、ムノ。テメェは18になったら正式なDHになって、それを機に俺との関わりは捨てろ。……DHがヤクザと関わっても、碌な事にはならねぇ」
「え?そんなの嫌ですよ」
「おいおい…そんな事言ってたら、DHとして大成しねぇぞ?」
「ぼったくられましたが、これでもグンセさんには感謝してるんですよ。もしグンセさんと会わなければ、僕は今頃どこかでのたれ死んでたかもしれないから。——まぁ、ぼったくりだけど」
「ぼったくりぼったくり言うんじゃねぇ。どんだけ根にもってやがるんだよ……。だがなぁ、テメェの未来を考えると、それはお勧め出来ねぇんだよな…」
「ははっ。そんな思い通りにならない未来なんて、僕が聖剣でぶった斬ってやりますよ。僕は、DHギルドも教育学校も、そして虐げてきた人々全て、文句が言えない位に……強くなって見返してやります」
「ムノ……」
グンセさんが、僕の言葉に目頭を押さえる。
「…あ、今の台詞。ちょっとカッコよかった?」
「……はぁ。全部台無しだぜ」
そう言ったグンセさんは、少し嬉しそうで、どこか誇らしげな顔をしていた。