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才能に縛られた世界の『無能』でも、『運』が良ければ成り上がれるはずだ  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
3章 凸凹コンビと黒い人

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黒き英雄と無能の少年 4

「——という事で、渡馬の身柄は世界DHギルドで預からせてもらう。グンセ、それで良いな?」


 レーガンさんは渡馬を法に則り裁くつもりでいるようだ。日本DHギルドの私的利用に、僕達への暴行容疑……いや、殺人未遂か。おまけにエラー対応での不手際により、日本DHギルドをクビになるのは間違いないようだ。


 この話は既に世界DHギルドに連絡がいっており、もう渡馬には逃げ場はない。



「……ああ。分かったよ」


 グンセさんが顔を顰めながら呟くように答える。その顔は明らかに納得していないが冷静にはなれているようだ。


 それなら僕は急いでエラーの方へ戻ろう、とその場を離れようとした……その時。


「……ムノ、悪かった。だがお陰で頭を冷やせた。——ありがとよ」


 グンセさんは僕と目を合わせず、そう言った。


 僕はそれに笑顔で返事をして、二人を残したまま校舎の外へと駆け出した。




ーーーーーー



 DH教育学校から出ると、エラーとグラウンドを回るように時間稼ぎをしているレイジさんのパーティーとヒメさんの姿。いずれも深刻な表情をしていないので対応自体は問題無く出来ているようだ。


 僕は聖剣をエラーに投げて突き刺して、その後みんなに合流した。


 僕はそのままレイジさんに話し掛ける。油断はしていないが相変わらずレイジさんは暇そうにしている。


「渡馬は世界DHギルドが身柄を引き取って裁くそうです。グンセさんとは一悶着有りましたが、何とか抑えました」


 レイジさんが僕の言葉に表情を明るくする。


「そりゃ良かった!だが、本当なら俺がグンセさんを止めるべきだった。はぁ……だが、感情的になった俺と違って君は冷静だった。良い大人が情けねえなぁ」


「……詳しくは分かりませんが、渡馬とグンセさんには何か因縁が有ったんでしょう。僕はそれを知らなかっただけで、知ってたら僕自身もグンセさんに協力してたかもしれませんよ」


「それでも助かった。ありがとよ。ま、後の詳しい話は本人に聞いてくれ。それよりも今は目の前のコイツだ。消える素振りが全くねぇんだよな……」


 レイジさんはエラーの姿を見つめながらそう話す。そしてエラーは発電所で交戦した時と同じように姿を維持したままだ。


  

「大きいと消えるまでにも時間が掛かるなんて事は……」


 ふと思った疑問を口に出してしまう。


「……おい、やめてくれ。俺も思いついてはいたが考えないようにしてたんだよ。表面積で考えると数十倍か?それ消えるまでに何日掛かるんだよ!その間寝ずに逃げ回れるか!」


「はは……」


 交代制なら或いは、とは思ったがレイジさんの顔を見る限り口に出すのは得策では無い。


 ——それなら何とか倒す事を考えないと。



「うーん……弱らせるなら、反発する銀をぶっ掛ける?でもここにはそんな銀も無いし、そもそもどうやってかけるんだ……」


 エラーから離れつつ顎に手を当てて考える。


「それなら既に動いている」


 声のした校舎玄関側へ目を向けるとレーガンさんとその後ろに数人のDHが立っていた。僕はレーガンさんに駆け寄る。


「どうやってですか?」


「もうすぐ世界DHギルドのヘリが銀粉を積んでやって来る。それをエラーにぶっかけてやれば良い。しかも特別製の超高級銀粉だ」


「それなら……でも超高級って?ミスリルでも混ぜたんですか?」


「ミスリルじゃ吸収されて終わりだ。……実は銀以外にも吸収されない金属が発見されたんだよ」


「え、今更発見ですか?魔素も数十年研究されてるのに……」


「まあその金属自体が新発見なんだ。」


 ん?金属で新発見?それって……。


 レーガンさんはニヤリと笑う。


 そして遠くから聞こえるヘリの音。


「お前ら全員でヘリを守れ!絶対に撃ち落とされるな!!」


 レーガンさんの大声が響くと共に、数人のDH達が動き始める。その動きを見るに、パーティーメンバーだろうか?その動きはその辺のDHと比べて早く、ミスリルランクのレイジさんのパーティーに引けを取らなそうだ。


 

 ヘリがエラーの頭上に近づいていく。銀を散布する為かその高度は低めになっている。


 ——意識をこちらに向けなければ。そう思った僕はエラーへと駆け出した。


 レイジさん達のパーティーとすれ違う瞬間に声をかける。


「エラーの注意を逸らすために前に出ます!」


「援護するわ!」

「援護する!」


 ヒメさんとローブを着た男性が反応する。


 僕は空を確認する。ヘリの距離を見るに十数秒も有れば充分だろうか。散布し始めたら僕も逃げないと何が起こるか分からない。


「来い」


 エラーに突き刺したままだった聖剣を手に持ち、エラーに近づいていく。


 今の所、エラーへの距離は僕が一番近い。そして狙い通りにエラーの意識もこちらに向いているようだ。


 そして、エラーが右手を振り上げる。僕はそれを見てふと思う。


(やっぱり同じような動作をするんだな。まるで、そうプログラミングされているような……)

 

 エラーの右手が振り下ろされる瞬間、僕は全力で左側へと跳躍する。巨大な腕が振り下ろされたことで風圧は来るが、動きは遅く回避は容易い。


 そして走りながら地面に接しているエラーの右手を斬りつける。


 そのままエラーの足元へ。



 右足を斬りつければ右足を上げて踏み潰そうとしてくる。


 左足へと向かって左足を斬れば、左足での踏み潰し。そしてまた右足へ行けば今度は地団駄を踏む。


 最初に交戦した時と同じ動作だ。やはり知能を持つというよりも機械の動作に近い。


 

 前はここで撤退したが、ここで撤退したらヘリに意識がいってしまう。でもあと数秒だ。


 僕がエラーの前方へと回り腕による攻撃を誘うと、予想通りの右手の振り下ろし。


 そして繰り返し足元へ潜り込み、左足、右足を攻撃する。


(そろそろ逃げるか)


 上を確認すると上空にヘリが到達し、ヘリの底面にある格納庫が開かれようとしていた。


 僕は全力でレイジさん達やヒメさんがいる方向へと走る。


 

 後ろなんて気にしなくて大丈夫だろう。


「”アイスウォール”!」


 僕のすぐ後ろで何かが爆発する音が響く。恐らくエラーが放った魔法がヒメさんの氷の壁に阻まれたのだろう。


「さっすが!」


 僕は思い通りになり口角を上げる。




 そして、そこで空から銀の粉が舞ってきている事に気づく。僕の周囲には銀の粉に太陽の光が反射し、キラキラと輝いていた。


 皆に合流すると後ろへ振り返る。


 そして、その光景に僕は息を飲む。




 ヘリから撒かれた銀粉がエラーの周囲で輝いていた。光の粒が雪のように舞い、エラーへと降り積もっていく。写真にラメをばら撒いたようなそんな景色。


 僕はそれを見て綺麗だ、と思った。




 勿論銀粉だけではエラーへの効果はほぼ無いだろう。だが、更に上空から赤い石の破片が落下してきている——あれは。


「やっぱり、オリハルコンか……」


 エラー対策で使えるようなら、ということで僕はグンセさんにオリハルコンランスを渡していた。


 ミスリルは魔素と相性が良く反発せずにエラーに吸収されるが、もっと上のランクであるオリハルコンはどうなんだろか?と疑問に思って渡したのだが……どうやら正解だったようだ。




 ヘリから撒かれた、砕かれただけのオリハルコンの欠片。それは鋭く、エラーの身体へと次々に刺さっていく。そして刺さった場所に銀が付着しエラーは元の状態へと再生出来ないでいるようだ。


 まるで痛がるように身体を動かしているエラー。その頭や肩には赤い欠片が多く突き刺さっているのが分かる。


 そして——エラーは明らかに弱っている。


 次の瞬間エラーは膝から崩れ落ち、地面に手をついて四つん這いのような状態になった。


 周囲未だに軽い銀粉は舞っているが、オリハルコンの欠片は打ち止めのようだ。なら、最後の一押しは僕らで。


「ヒメさん!カタス・トロフでエラーを抑えつけて!ワールドエンドなら衝撃を与えるくらいなら行けると思う!」


「え?でも魔法は効かないんじゃ……」




 ヒメさんが戸惑うのも当然だ。


 僕らは最初聖剣が吸収されずに攻撃出来るのが、光属性が銀のような効果を持っているのかと思っていた。だがそれは違うんじゃ無いだろうか?


 武器や素材にランク付けされている、レア等級というもの。


 もしエラー自身にもランクがあって、その等級よりも下で無ければ吸収出来なかったとしたら?


 スーパーレアは吸収されるが、レジェンドレアのオリハルコンや、ユニークレアの聖剣は吸収されない。そして流石に吸収される恐れがあってレジェンドレア武器を試した人は居なかったのだと思う。ゴッドレアのミョルニルに関しても同様だ。


 そして僕の考えが正しければワールドエンドの魔法攻撃力分は、エラーに攻撃が通るのでは?魔法は通らない、という思い込みでヒメさんにはサポートしかさせていなかったが——試してみる価値はある。



「僕の考えが正しければワールドエンドの分は魔法が通るはずだ!ヒメさんお願い!」


 ヒメさんは戸惑いつつも僕の言葉を受け入れ、頷く。


「分かったわ!レイジさん達サポートをお願いします!」



 エラーは未だに動きを見せていない。



 そして——詠唱を始めたヒメさんの周囲に魔素が一気に集まり始め、目に見えるほどに薄紫色の渦が巻き始める。次第に渦は彼女を包み始めた。



「いけるわ!”カタス・トロフ”!!」



 その声と共に……ミスリル合金でさえ消失させる、ヒメさんの最大魔法が——エラーに向かって放たれた。

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