幸運少年と大企業 変動 1
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——才能、それは数十年前から突如発現した人の新たな価値。
才能というものは今まで人を判断するものとは違い、あまりにも分かり易すぎた。
一目で分かる人の判断基準、価値。それを世間が受け入れていくのは、当然の流れだったのだろう。
才能が発現してから10年もすると、才能に応じた教育課程がごくあたりまえの事になり、それに応じて履歴書等の書類にも才能欄が追加されていった。
当初は様々な国で問題視されたその話題も、時間の経過と共に忘れられていく。そうして忘れられてしまえば、当たり前の事を問題にする人は居ない。
それから数十年過ぎ、才能に応じた仕事に就くことが当たり前で義務となった世の中。子供が大きな夢を語る事は無くなり、自分の才能の範囲内で模索する。
まるで、流れ作業の中で分別していくように、人は職業を決めていってしまう。だがあらゆる分野で目に見えて発展している以上、問題として取り上げるような人は居ない。
——そんな才能を中心としたシステムの世界で、類稀なる魔法の才能を持った一人の少女。彼女がDHとしての教育を受けるのもまた、当たり前の事だった。
一般的な魔法使いの才能"魔道士"の初期知力は3。だが、その少女はレベル1で知力が10も有り、才能の内容も例がないとくれば、周囲の期待が集まるのも当然だ。
両親も周囲も心の中では思っていた。もしかしたら、この子は世界でも有数のDHとなるのでは無いか、と。
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幼少期で才能が分かってから、私はDHとして最高の教育を受け続けた。私は周囲の期待通りに成長していくが、幼い私の内心を理解してくれる人は居なかった。
両親は教育の為に仕事で家を開ける事が多く、家族三人で外出した記憶も私の才能が分かる以前のもの。周囲はこの環境と才能を羨むが、それは決して良いものでは無かった。
——私は、普通の子供のように家族との時間を過ごしたかった。
そのまま私はその環境で成長し、15歳を迎える。
元々不器用だった父親は私に話しかけて来る事は無くなり、仕事に全てを捧げた生活。
母親も最低限の家事はするが、私がわがままを言うと怒鳴りつけてくるので最近では会話も無くなってきた。
家族としては完全に崩壊していた。だが、それでも周囲は私を羨むのを止めない。
そして私はDH免許を取り初めてダンジョンに潜ると、素材が落ちないという事が判明する。
——全てを犠牲にして積み上げて来た物が、簡単に崩れ去ってしまった瞬間だった。
父親と母親はそれをきっかけに抑えていたものが爆発し、家の物を投げつけあう大喧嘩。そのまま母親は家を出て、私の親権は言われるがままに父親へ。
私がもしまだ、DHとしてやっていけると分かったら、両親は戻って来てくれるのだろうか?
才能通りにDHとして大成すれば、普通の家族のように戻れるのだろうか?
有り得ない事だとは分かっていても、どうしても期待してしまう。だからこそ私はDHに縋り付いて、離さないように足掻く。
これが本当に最後の機会。
もしも失敗すれば、私の望むものは何も手に入らない。
だから。
———私の忌まわしき才能『破滅と変動の魔女』
——私は言葉を紡ぎながら、その力に全てを託す。
—私は願う。破滅の後には希望通りの変動を。
「対象に破滅を————"カタス・トロフ" 」




