幸運少年と大企業 商戦 4
レーガンさんの言葉に、僕達は何もいう事が出来ずに沈黙が続く。
いずれは気付かれるとは思っていた。
今回これだけ目立つ動きをみせたんだ、それも当然かもしれない。
重い雰囲気の中グンセさんが口を開く。
「……何の事だ?俺達は偶然シャドウウルフの皮を手に入れただけだ」
「それで押し通せると思ってる?だとしたら、本当の馬鹿だ。それで信じる輩なんている訳がない」
「ハッ馬鹿で構わねえよ。だが、俺達が皮を入手したのは偶然で、それを利用したに過ぎない。入手先については客との信用の問題で言えない。テメェが思ってたような情報じゃなくて悪かったな。商談は破談だ、帰ってくれ」
グンセさんは僕を庇おうとレーガンさんをあしらう。
そこで——レーガンさんの雰囲気が豹変する。
「……ハァ、下手に出るのは辞めだ。おい……グンセ、正直に話せば今なら許してやるよ」
「ハッやっと本性出しやがったか。何度言われても知らねえよ。それでも納得できねえなら表に出ろ。相手してやるよ」
グンセさんとレーガンさんの間にピリピリとした空気が流れ、まさに一触即発という状態。
そこで僕は覚悟を決める。
「……グンセさん。レーガンさんは信用出来る方ですか?」
「おいムノ!」
グンセさんは止めようと大声をあげるが、そこにレーガンさんが食い気味に割り込んでくる。
「私の全てを賭け、私の連盟の上層部以外他言しないと約束しよう。もしそれを破ったらその時は私の首をもっていけ」
レーガンさんは嘘を言っているようには見えない。それに——。
「グンセさん」
「……嘘は言ってねえ。それとコイツは敵には容赦しねえが、知人を裏切るような真似はしない」
グンセさんには真偽を見破るスキルが有る。
その裏付けが取れれば、信用しても大丈夫だろう。
「分かりました。なら、素材の件をお話しします」
「……感謝する。グンセがここまで誤魔化そうとするんだ。大方、君に関係する事なのだろう?」
レーガンさんは先程までの緊張した表情を戻して、僕に話し掛ける。
「ですが、話してもあなたの利益にはならないと思います。それでも構いませんか?」
「ああ、それでも構わない。利用出来ればしたかったが、元々は私が気になっただけだ」
それなら——。
「それでは……お話しします」
——僕は、運によるレアポップ沸きと素材のドロップ率についてレーガンさんに説明した。
また、古い箱やユニークレアについては隠し、商談の条件の必要最小限の説明で抑えた。
「……遽には信じられん話だが、君を信用する。まだ何か隠してそうだが、今回はこれで良い」
レーガンさんはそう言うとグンセさんに顔を向けるが、グンセさんは納得がいかない表情でカウンターに肘を突いている。
「グンセ……DHに戻るつもりは無いのか?もし、少しでもその気があるならうちの連盟に来い」
グンセさんはレーガンさんに顔を向けず、そのまま返事を返す。
「アメリカ二位の強豪連盟にか?そんなん、息苦しくてやってらんねえよ。それに……今はDHに戻るつもりはねえ」
「今は、か。……であれば私はその時を待とう。ムノ君はどうだ?君の力が有れば、うちが一位になるのは不可能じゃ無い」
連盟とはDH同士で集まったグループの事で、複数のパーティーが所属する集合体。人数も数人から数十、数百まで様々で、規模や実績に応じてランキングが発表される。
アメリカはDHが最も盛んな国で、その国の二位である連盟となれば、世界ランキングでも上位なのは間違いないだろう。
——そんな連盟に僕が?
「まあ……すぐにとは言わない。もし加入する気があれば、グンセを通じて私に連絡をくれれば良い」
そこでレーガンさんはグンセさんに何かを投げる。
「グンセ、ここの倉庫に武器が入っている。後はお前達の好きに使えばいい」
グンセさんが受け取ったのは、何かの鍵とメモのような紙。
レーガンさんは踵を返し、店を出て行こうとする。
僕はその後ろ姿に声を掛ける。
「レーガンさんありがとうございました!連盟の件は今は考えて居ませんが、この恩は忘れません」
レーガンさんは足を止める——そして。
「二人共、また会おう」
彼女はそう呟いて去って行った。
——こうして僕達は武器の弾を入手した事で優位に立つ事に成功する。
そして、JHW崩壊計画は次の局面へと移る。




