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才能に縛られた世界の『無能』でも、『運』が良ければ成り上がれるはずだ  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
2章 少年と不運の少女

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幸運少年と大企業 商戦 2

ーーーーーー

※夜叉神視点  



計画実行数日前


 ——東京都内、ジャパン・ハンター・ウェポン本社の社長室。


「ハッハッハ!夜叉神君!良く日本ダンジョン工業と提携を結べたもんだ!あそこは何度提携を呼びかけても、絶対に首を縦に振らなかったのに!」


「……ありがとうございます」


「これでJHWも更に大きくなり、世界の競合会社とも戦える!大手柄だよ!」


 この男は何を勘違いしているのか分からないが、今回の提携は私の手柄だ。決してお前には譲らんぞ。


「……それでは、失礼します」


 私はこの場を早く去るため、そう言い残して社長室を後にする。


 社長室の扉を閉め、深く溜息をつく。


「……無能な狸が。もうすぐそこから引き摺り下ろしてやるからな」


 私は誰にも聞こえないような小さな声で——そう呟いた。



 ——JHW本社、マーケティング部にある一室。


 私は本部長室の椅子に座ると、肩を落として項垂れる。

 もう少しだ、もう少しで私はこの会社の頂点に立つ。


 それにしても、あの餓鬼。会社を潰すと大見得を切っていた割に、全く動きがない。


 あの時、嘘は言っていなかったが——流石に怖気付いたか?



コンコン


 部屋の中にノックの音が響く。


「……入れ」


「夜叉神本部長、少々ご相談したい事が……」


 扉を開けて入って来たのは、マーケティング部の次長。


「相談とは何だ?」


「それが……最近、レジェンドレアの出品が有りまして。しかも、相場の8割程度の値段で」


「それならいつものように買えば良い。レジェンドレアなら失敗は無い。そう伝えただろう?」


「今週に入って五つ目の出品なんですよ。明らかに異常なペースなのに、最近はレジェンドレアが出るような階層まで深く潜っている目ぼしいパーティーは居ません」


「ふむ……出品者はわからないのか?それか海外のDHが日本で捌いている可能性は?」


「出品者はうまく隠されているようです。海外のDHなら考えられますが……わざわざ他国で売る理由が」


「まあ、損はしない筈だ。すぐに買え」


「……了解しました」




 ——その数日後。


「夜叉神本部長!た、大変です!他社が基本価格を下回り装備の出品を行っています!!」


「……何だと?そんなバカな事をしているのはどこの企業だ?直ぐにクレームを入れろ!」


「そ、それが……既に10社以上が大幅に下回る価格で出品しており、合計で数百点が8割の価格で……!」


「分かる会社だけでもクレームを入れて今すぐに辞めさせろ!!もし7割を切るようなら全て買い叩け!DH達に悟られるな!」


「は、はい!!」




 ——その2日後。


 くっ、この数日で装備価格が大幅に値下がっている!

 このまま続くとの資金では買取も厳しくなる!レジェンドレアで資金を使ったのが悪かった——ッ!


「ま、まさか……レジェンドレアの出品も?」


 何者かの手の内で踊らされている事に気づくと、私に怒りが満ちてくる。

 そしてこの件にあのガキが関係している事は間違い無い!!



「や、夜叉神さん!!」


 次長と課長が慌てて入室してくる。


「ノックはどうした!それに本部長と呼べ!」


「す、すみません!ですが、大変な事が……!」


「昨日の今日で何なんだ!!」


「それが……っ!レア素材防具の筈のシャドウウルフ防具が、各箇所15万で大量に出品されています!!その数……50セット分です!」


「なっ……!」


 50セットだと!?

 レアポップの魔物素材を、それだけ集めるのは狙って出来るものでは無い!ま、まさか年単位に及ぶ計画で、JHWを潰そうとして来ているのか!?


 ——あのガキ、まさかどこかの回し者か!


「……と、どう致しましょう。普段運用している資金の方がもう無くて……」


 次長が私の顔色を伺う。


「……買え、今すぐにだ。そうしなければ相手に資金が無い事を悟られてしまう」

 

「あ、相手ですか?」


「ああこの一連の流れは全て、JHWを狙った物だ。他の企業が協力しているのは間違い無いが、問題はそこじゃ無い。元凶を突き止めなければならない」


「そ、そんな。我が社を狙うなんて……」


「……それと、これほど大変な時に部長はどうしたんだ」


「す、数日有給を取って、愛人と旅行だそうです……」


 ——アイツはダメだな。


「……そうか。なら君が私の下となって動け。働き次第では部長に推薦してやる。課長、君もだ」


「「わ、分かりました!!」」


「マーケットの動きは逐一連絡しろ。私は別で動く」


「了解しました」


「なら、行け」


 私がそう言うと、二人は部屋から退室する。


 私は部屋にある電話の受話器を取り、内線をかける。


「——夜叉神だ。早川君は居るか?」


『はい。代わりますね』


 内線を受けた女性社員から、電話が男性に切り替わる。


『はいはい早川です。夜叉神さん、警備部隊に何の御用で?』


「——今すぐに調べて欲しい事がある。それと動けるように準備をしておけ」


『……分かりました。それで、何を調べましょうか』


「それは——」




 早川という男性との話しを終え、私は椅子にもたれ掛かる。


「私とJHWに喧嘩を売ったこと、必ず後悔させてやる——」


 私は一人部屋の中で、そう小さく呟いた。


ーーーーーー


『夜叉神本部長。またシャドウウルフ装備が14万で50セットです』


「……買え」




『つ、次は13万で30セットです……』


「一時間程置いてから買え」



『……更に12万で30セットです』


「……そろそろ良いだろう。買うのを辞めて明日まで様子を見る」



 そう言って次長との電話を切る。


「さて、次はどう動く?——群瀬組の組長の、グンセ」


 

 早川に探らせたのは、シャドウウルフ防具の出品者だ。

 どうやらDHギルドの連中に袖の下をしたら、簡単に辿る事が出来たそうだ。


 だが、どうにも簡単に行き過ぎている。

 むしろ——見つけてくれと言わんばかりの雑な隠し方だ。


 ここで手を出すのはまだ早い。様子を見るのが最善だろう。




 ——翌日。


『夜叉神本部長。武器のスーパーレアと、レジェンドレアの出品数が急に増えています』


「値段は?」


『相場の8割を即決価格にオークション形式です。それにボーンナイトソード、バードランサーの槍も数十の出品が有り、これは相場の7割から8割です』


「……スーパーレア、レジェンドレアには買わない程度に調整しつつオークションに参加しろ。他の武器には手を出すな」


 ここに来てスーパーレアやレジェンドレア?これは、何かがおかしい。確かに上のレア等級が値下がれば、それに応じて下の等級も値下がるだろう。

 だが、シャドウウルフ防具のように物量で押し切れば、もっと簡単に武器の価格も下がるだろうに。




「——そうか。そういう事か」


 この戦い、私の勝ちが見えて来た。


 

「ククク……グンセよ、これは悪手だぞ。大企業の力、見せてやろう」


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