魔石
——孤児院の一件は、ヤクザ同士の抗争として処理をされた。
目撃情報からグンセさんの所にもDHギルドの事件担当職員が訪れたが、グンセさんは知らないの一点張りで通して職員を追い返した。
この国の治安はダンジョン発生前に比べて悪くなっている。というのも魔法やスキルによる犯罪が増えた事で、警察ではその圧倒的な力に対応仕切れず、更には証拠を見つける事が困難になったからだ。
その為DHギルドが警察に代わり、魔法による調査とDHの逮捕を代行する様になった。だが——DHの中でも強さを持つ上位ランクには、強く批判する事も出来ずに野放しになっているのが現状となっている。
幸い政府に反抗する勢力は表面上には居らず、大きな問題とはなっていない。だが、ラリンス教は各国の政府を堂々と批判し、それに便乗する勢力も増えてきている傾向にある。
ラリンス教が、政府に成り代わろうと反乱を起こすのも——時間の問題で、いつ起こっても不思議では無い。
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「え、栗生組を、群瀬組の傘下に入れたんですか?」
「そうだ。奴らを調べてたら、ラリンス教とズブズブの関係で、裏取引から政府批判の民衆誘導まで、アレコレとやっていやがったんだよ」
「うわぁ……」
「で、ラリンス教と手を切る事を条件に、栗生組を残すことにしてうちの傘下に入れたって訳だ。ま、俺達が悪さしねぇように見張ってるさ」
「はあ、別世界の話みたいですね」
「まあ、ムノはこっちの世界には入って欲しくねぇな。……かと言ってDHギルド寄りも、ラリンス教寄りも困るんだが」
「現状は中立を貫きますよ。まあ、グンセさんのヤクザ勢力に加担してると言っても、否定出来ないですけど」
「ヤクザやマフィアは、昔は中立だったんだがなあ……」
グンセさんは遠くを見据える。
「ところで」
「何だ?」
「今回お世話になったので、何かお返しをしようと思います。……という事で、何か素材取ってきましょうか?目的が無いとやる気が出なくて」
「そんなんいらねぇよ……と言いたいが、そうだな。一個頼んでも良いか?」
「なんなりとお申し付けを、若」
「……いつの間にシル爺との会話を聴いてたんだよ」
シル爺と言うのは群瀬組の幹部で、グンセさんの育ての親だ。
以前よりグンセさんを若と呼び、現在はグンセさんの右腕となって組を動かしている。数少ない、グンセさんが苦手とする人だ。
「いい加減、若は止めろって言ってんだけどな」
グンセさんはそう呟いて、額に手を当ててため息をついた。
「それで頼み事って何です?ダンジョンの素材ですか?」
「ああ。今回は魔石を頼む」
「魔石ですか」
——魔石というのは、魔物が落とす魔素の結晶。
多くのエネルギーを生み出す事ができて、これを使って発電したり、粉にして上級魔法を使うための触媒にしたりする。
他にも、金属に混ぜれば硬度を上げた上で軽くなるし、土に混ぜれば植物の育成を格段に早めるそう。
世界にダンジョンが発生した後の恩恵に順位を付けるとしたら、真っ先に名前が挙がるのが魔石だろう。
そして現在でも研究は続けられ、まだまだあらゆる分野で新発見が続く——そんな、夢のような素材。
「でも魔石を落とすような魔物、上層に居ましたっけ?」
それほどの素材なので、魔石の入手難度は高い。
手に入れるには、ダンジョンの一階や二階ではまず無理で、駆け出しが入手出来るような所には落とす魔物はいないはずだ。
「おう。なんと、割と浅い三階に居るんだぜ?」
「ああ、三階なら僕でも行けそうですね。二階の魔物ならワンパンですし」
「おまけにその敵はムノと相性が良い。聖剣なら間違いなく一撃だろうよ」
「……何か嫌な予感が」
「狙う魔物は、ゴーストだ」
「ああ、やっぱり……」




