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聖力と精力




「髪――いえ、やはり指先から順に行きますか」


「あっ、フィオ様⁉︎ エイリーンに触れてはいけませんよ⁉︎」


「大丈夫です。色魔の【吸精】は望むところ……存分に吸ってください」


「そ、そんな……いいんですか? エイリーンは加減できませんよ?」


「吸い尽くせるものなら、どうぞ」


「あ、あぁっ……夢の様です! エイリーンが……フィオ様の精を――」


「合わせて聖力もどうぞ。こちらは私からのサービスです」


「えっ⁉︎ あ、待ってください! そんなに入らな――いぃ⁉︎」



 指先から徐々に肩口……そして全身を私の聖力で満たして行きます。

 ふふ、どうですか? 他人の――それも男の聖力で満たされる感覚は……おや? 肩から首にかけて、聖力の巡りが悪いですね? 入念に解しておきましょう。

 くっ、これがベッドの上なら……肌を重ねて、効率良く全身を解す事ができたというのに。



「はぁ……クソ主人。どうでもいいけど、色魔が能力を使う前に何とかしなさいよ? 今の私はか弱い乙女なの」


「種族を奪われとると大変じゃのう? 特性も全て失ってしまうのじゃったか」


「全部じゃないわよ。けど、前の私が見たら、鼻で笑うくらいには弱体化してるわね」


「……それでカリン様に突っ掛かるのだから、オレにはお前の気が知れない」


「あら? やっと正気に戻ったのね、狼」


「すまない。欲に目が眩んでしまった……もう大丈夫だ」


「くくっ、トゥアエよ。“乙女”と言うにはウルくらいの純真さが無いといかんぞ?」


「狼のは『恋する乙女』でしょ。ホント……クソ主人のどこがいいのよ」


「ご、ご主人様だって、いざという時は頼りになるんだ!」


「それで普段の暴走を帳消しにできるの? ……今も、色魔にいやらしい事してるわよ?」


「なっ⁉︎ 何をしているんだ⁉︎ ご主人様⁉︎」



 ……ただのマッサージですよ? 健全なマッサージです。

 こうして手の平を揉み解すことで、凝りを解消――柔らかいですね? エイリーンさんの手がすごく柔らかいです。

 流石は色魔族。こんな手で擦られてしまえば、私とて長くは保たないでしょう……そして、触れているだけなのにこの官能感。

 これが【吸精】ですか……なるほど。



「……まだ手を握っておるだけじゃな? そんなに慌てる事も無かろう」


「ん? ああ……あんた達には聖力の流れが見えないんだったわね。クソ主人は色魔に聖力を流し込んでるのよ」


「ほう? それのどこが不埒なのじゃ?」


「自分の許容量以上に聖力を満たされるのって、すごい気持ちが良いの――って何よ? 獅子。そんなニヤニヤして……」


「いいや? お主が普段、どんな『ぷれい』をしているのか気になってのう?」


「は――はぁ⁉︎ 私はあんた達みたいに尻軽じゃ無いから⁉︎ そんなホイホイ体を許したりしないから⁉︎」


「じゃが、主人様から聖力を貰い、気持ち良くなっておるのじゃろう? その後に何も無いとは思えんのう?」


「聖力の! 補充! 私がしてるのは事務的な補充作業よ! 他のメイドは知らないけど……クソ主人から聖力を補充しないと、満足に体も動かせないもの。似た様な事してるんでしょ」


「ウーナはしっかり交わっておるぞ? この前の快楽談義で話を聞いたのじゃ」


「な、何してんのよあいつは……」


「お主もしておるんじゃろ? 獣人の鼻を舐めるでないぞ……お主からは偶に、ご主人様の精え――」


「だぁあああああ⁉︎ か、勝手に嗅がないでよ⁉︎ ……してない! 本当にしてないんだから!」


「むぅ……強情な奴じゃな? 吐け! 証拠は既に挙がっておるのじゃ!」


「あ、あんた達は性に大らか過ぎるのよ! ちょっと狼⁉︎ 戻って来て獅子を止めなさい!」


「いいや、ワシに加勢するのじゃ! ウル、今こそこの異端児を矯正する時ぞ!」



 トゥアエさんも大変可愛らしい方ですよ? 初めて手を握った時なんか、顔を真っ赤にして――おっと、銀の杭が飛んできました……これ以上はやめましょう。

 今はエイリーンさんとの行為中ですからね。他の女性の事を考えるのは失礼に当たります。

 さて、首回りはこれくらいにして、いよいよ本命の胸に差し掛かりたいのですが……どうにも私の影が不穏な動きをしていますね。



「……呼んでいますが、行かなくて良いのですか? ウル」


「今はご主人様を止めるのが先決だ。エイリーンから手を離せ」


「しかしながら、エイリーンさんが抵抗できない今が好機なのです。ここで調教しておくのが最善ではありませんか?」


「……一度人肉を喰らった狼は、次からも人を喰らう様になる。襲われるのはお前だぞ、ご主人様」


「だからこそ、徹底的に調教するのです……ご覧ください。もう牙は抜きました」


「はぅ……フィオ様の……一杯……好き」



 そうでしょう、そうでしょう。エイリーンさんは正直者ですね? 流し込む聖力をさらに倍にして差し上げます。

 精力の方は私から調節できませんので、思う存分吸い取ってください……くくっ、この味に慣れてしまえば、もう後には退けませんよ?



「す、すごっ……い、いいです……フィオ様ぁ」


「話し合いが終わり次第、カリン様もこちらに来るそうだ。止めるなら今の内だぞ?」


「ふむ……慎重過ぎませんか? いえ、カリンさんが正しいのは分かっています。ですが――」


「も、もっとください……エイリーンの中に……もっとぉ」


「ほら、エイリーンさんもこう言ってますよ?」


「調教が成功するしないに関わらず、今『総括官』を二人共堕とす訳にはいかないらしい……天界が回らなくなる」


「……姉さんがいるではありませんか?」


「その“姉さん”がこの計画最大の障害なんだぞ? ご主人様。次の役職が『お姉ちゃん係』になってもいいのか?」


「そんなまさか。いくら姉さんでも、そこまでの強権は発動しませんよ」


「カリン様とシクティス……狐も合わせて全会一致だ」


「……」


「あっ……フィオ様、止めないで……も、もっと」


「それでいい。エイリーンに何が効果的か分かっただけで十分だ」



 申し訳ありません、エイリーンさん……『お姉ちゃん係』には嫌な予感しかしないのです。

 それに、カリンさんを含めた三人の意見が一致したのなら、私も言い逃れできません……次です。次は必ず全身をマッサージしますから……



「しかし、この……エイリーンは話ができる状態なのか?」


「どうなのでしょうね? 本能的に精力を求めている様にも見えますが……」


「美味しいです……フィオ様の精力……でも、何か足りない」


「……そろそろ手を離さないか? ずっと精を吸われているぞ」


「これは癖になりますね」


「っ……ほら! 手を離せ、エイリーン!」


「うっ……あぁ⁉︎ フィオ様の手――精力がぁ⁉︎」


「続きはまたの機会です。エイリーンさん」


「い、嫌です! 精力……もっと! もっとください!」


「おい、ご主人様……どうするんだ。完全に中毒者だぞ」


「ふむ……もう一度手に触れても?」


「なっ⁉︎ ダメだ! それでは何の解決にもならない!」


「いえ、一気に聖力を流し込み……気絶させます」


「な、なんだそういう事か……良し、それなら構わないぞ」


「では失礼して――」


「【鎖縛】!」


「……おやおや」


「ちっ……エイリーン! 何を考えている!」



 【鎖縛】……エイリーンさんの拘束系能力ですね? 太い鎖で雁字搦めにされてしまいました。私にそっちの気は無いのですが……

 困った事に、私はまだ【鎖縛】の耐性を獲得していません。というのも、この鎖……封印系の能力も保有している様でして【経験】が上手く機能しないのです。

 全く耐性が獲得できていない訳ではありませんが、この分だと完全耐性への道のりは長そうですね……



「うふっ、うふふ……エイリーンの、エイリーンによる、エイリーンの為の精力! もう絶対に逃がしません!」


「ちっ……気が狂ったか⁉︎ ご主人様も冷静に考察している場合では無いぞ!」


「この緊張感……堪りませんね。私はどうなってしまうのですか?」


「うふふ、怖いですか? 大丈夫ですよ……エイリーンがフィオ様を飼ってあげます。この瞬間から、フィオ様はぁ……犬です」


「私が……ウルに?」


「言ってる場合か⁉︎ くそっ……オレは狼だ!」


「エイリーンがお世話してあげます。前は逃がしちゃいましたけど、今度はちゃーんと鎖で縛っておきますからね? 煩い虫も全部追い払いますから」


「くっ、私を快適な環境に押し込んで……堕落させる気ですか」


「やめろ! ご主人様は今でさえ天使として危ういのに……これ以上堕落したら天界に居られなくなるぞ⁉︎」


「その時はエイリーンの使徒にします。ずっと……ずーっと一緒に暮らします」


「悪くありませんね。これで他の女性も許容していただければ――」


「ダメです! 絶対にダメ! やっと……やっと見つけたエイリーンの交配相手。他の女に渡す精力なんて一滴もありません!」


「……分かっていただろう? エイリーンはこういう女だ」


「もう少し何とかなりませんか?」


「その為の計画だろう。今は時期尚早なだけだ……ニール様! トゥアエ!」



「なんじゃ? もう少しで聞き出せそうな所を……」


「やるわね狼! 今度はちゃんと止められたじゃない! ……お礼にこの純銀製下着をあげるわ!」


「いらん――って眩しいな⁉︎ 早くしまってくれ!」


「それで、なぜご主人様が縛られておるのじゃ? もしや緊縛の快感に目覚めて――」


「違います!ニール様……エイリーンの乱心です!」


「はぁ? 私が居る時に面倒事起こさないでよ……クソ色魔決定ね」



 エイリーンさん……ニールさんから寛容さを分けて貰えませんかね?

 他に女性を囲っても、私の精力――もとい性欲は底なしですから……きちんと皆さんに行き届きます。だからこの鎖を解いてください。

 ほら、三人が戦闘態勢に入ってしまいましたよ? いくらエイリーンさんでも、ベッドの下から身動きの取れない状態で戦うのは困難でしょう?



「【征重】」


「あーあ、とうとう使ったわよ。あのクソ色魔」


「トゥアエ、気を抜くなよ。この場の重力はエイリーンの支配下だ」


「知ってるわよ。はぁ……何でこう面倒な相手とばかり戦わなくちゃいけないのかしら」


「くくっ、大盤振る舞いじゃな。ベッドの下から抜け出す為に能力を使うとは」


「うふ、うふふ……こんなに虫がたくさん。やっぱり私のフィオ様が羨ましいの?」


「……ご主人様はお前のものじゃ無い」


「御託はいいからさっさと始めましょ。クソ吸血鬼が来たら話が拗れるわよ?」


「そうじゃな。カリンが来る前に終わらせるかの……その方がエイリーンの為じゃ」


「フィオ様? エイリーンの領域に帰ったら、まずはお風呂に入りましょうね? 体の隅々まで洗ってあげますから」


「っ……それはオレの仕事だ!」


「いやメイドの仕事でしょ……何やってんのよ狼」


「む、ワシもやらされておるぞ? ……どういう事じゃ?」



 その答えは単純です。私が毎日六回、入浴しているからですね……私は大の風呂好きですから。

 情事と入浴、どちらを選ぶかと聞かれたら……入浴しながら肌を重ねますね? 当然です。そのくらいの風呂好きですよ。

 私の密やかな楽しみだったのですが……公開情報になってしまいましたね。


 しかし、これで皆さんにも発破を掛ける事ができたのではありませんか?

 このままでは主人との楽しみが減ってしまい――おや、何ですかその目は? 私との触れ合いが気に入らないとでも? これも皆さんの為を思って――

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