同時多発介入
「いきます……【腐敗】最大出力!」
《おお⁉︎ 流石は主人様じゃ! また雑兵共を蹴散らしたのう!》
「これが全身全霊の一撃です。そして、さようなら……五体目の私」
《くぅぅ! この、一撃を放った後に儚く散る姿が格好良いのじゃ! ワシもやりたいのう!》
「さて……六体目の私も美しいですか? いえ、確認するまでもありませんね」
《あの、フィオ先輩? やっぱり精神に負担が掛かってるんじゃないですか? さっきから発言が――》
《残念ながら、聞いている限りでは普段通りだ。オレ達の前ではいつもこんな調子だぞ》
《そ、そうなんですか? 問題無いのならいいんですが……》
「リーリアさんには本当の私をお見せしても良い、と考えたまでです。それにしても……些か兵器の数が多過ぎませんか?」
これでもかなりの数を無力化したはずなのですが……まだまだ向かって来ますね。
ひたすら同じ事の繰り返し、というのも芸がありません。何より、私は後の予定が詰まっていますので急がなくては……
リーリアさんと互いの気持ちを確かめ合うという、それはもう大切な予定があります。
一々この兵器達に付き合っていたらキリがありませんね……ウル、交代です。
《……いいだろう》
《むぅ、もう少し見ていたかったんじゃがな……》
《申し訳ありません、ニール様。またすぐに代わりますので》
「おや、私はウルの能力で標的を仕留めるつもりだったのですが」
《待ってくれご主人様。リーリアも居るんだぞ? 手の内を明かす様な真似は……》
《問題ありません。リーリアさんは私の味方です》
《いや、言い方が悪かった。オレが今まで隠して来た能力を、ご主人様にバラされるのは悲しい》
《ふむ?》
《影に警戒される様になったら、情報収集にも影響が出る》
《なるほど?》
《いざという時に奇襲戦法も使えなくなる》
《そうですね?》
《……な、何が望みなんだ?》
《『チャイナドレス』という衣装をご存知ですか?》
《……分かった。それで手を打とう》
《交渉成立ですね。では、探索の手伝いをお願いします》
《あ、ああ……衣装を着るのは二人きりの時にしてくれよ?》
それは今からの働き次第ですね……ウルの能力はあまり使わないので、思い通りに事を運べるとは限りません。
リーリアさんにバレない様、影を操らなくてはいけませんから……取り敢えず最大出力、という訳にもいきませんね。
まぁ、私なら上手くやれるでしょう。まずはこちらに向かって来る兵器を片付けて……それからです。
「【腐敗】、最大出力」
《うむ! 今回も見事に一掃じゃな! ……しかし、同じ相手ばかりなのが気に食わん》
「私もそう思います。ですから、次は『大罪人』を探しますよ」
《ウルの出番じゃな! ほれ、リーリア? 扉を開けるのじゃ》
《あ、はい! えーっと……どうぞ!》
《うむ、ご苦労。さて……索敵は頼んだぞ? ウル》
《お任せください。と言っても、実際に能力を扱うのはご主人様ですが》
《それもそうじゃな? ワシらは能力を貸すだけで何をするでもない……暇じゃ!》
「偶には暇を持て余すのも悪くありませんよ。私も代わって欲しいくらいです」
「む、戻ったかの?」
「ええ、ずっとこちらに居たいですね……これが肉布団ですか」
「あぅぅ……いい加減降ろしてください」
「そうはいきません。次の介入を急がなければ、また兵器に囲まれてしまいますからね」
「む、そうじゃったな……ウル!」
「はっ!」
「せ、せめて服を着させてください! 私達いつまで裸なんですか⁉︎」
「天界では服装の自由が認められています。つまり、裸である事も認められているのです」
「え、えぇ⁉︎ 天界公認なんですか⁉︎」
「……おい、介入しないのか?」
おっと、忘れてしまうところでした……いつの間にかウルが傍まで来ています。
ふむ、流石にリーリアさんの前では甘えて来たりしないのですね? いつもは二人きりになった途端に険が取れ、ベタベタと甘えてくるというのに……
今は尻尾も揺らさず……おや? よく見れば微かに揺れている様な――
「リーリア! 強制介入だ!」
「ふぇえ⁉︎ そ、《操作》ですぅ!」
「ウル……私に尻尾があったら揺れていましたよ」
「っ……いいから早く行け! そういうのは帰ってからでいい!」
「い、一体何の話を――ひゃぁああああ⁉︎ フィオ先輩⁉︎ アレ……アレがダメな所に当たってます! そこは本当にダメですよ⁉︎」
「お、押すなリーリア! 圧迫されて苦し……わ、悪くないな」
この感じ……リーリアさんとウルは相性が良さそうですね。二人とも受動的ですから、私が自由に動ける所も高評価です。
今の状況も、このまま押せば三人で致す事だって出来るでしょう。ウルもなんだかんだ言いながら期待している節がありますからね。
……しかし、強制介入です。
何でしょう? 戻ってくる度に介入したく無くなっているのですが? 私は忠犬ではありませんから、『待て』も長くは続きませんよ?
***
《反応を感知。同じ位置に再出現》
「量産型はどうだ?」
《発進準備中。しかし、効果的では無いと判断》
「……そうだな。精鋭型を出せ」
《了解》
「ちっ……まさかここまで手こずるとは」
私――ゼロの予想に反し、侵入者は未だ健在。あれだけの数を返り討ちにされるとは……
他の『管理者』が生きていたらまた違ったかもしれないが……いや、奴らは私の計画に反対した裏切り者だ。頼る事などありえん。
永遠の命……永遠の幸福、それを追い求めて何が悪いと言うのだ? 何度も論を交わしたが、最後まで理解される事は無かった。
『それはもはや生物では無い』などと……馬鹿げた考えだ。文明を停滞させてまで形に拘ろうとする連中の考えなど、私が理解できるはずもない。
最初から相容れない関係だったのだ……ちっ、こんな事なら記憶からも消しておくべきだった。
《能力の発動を感知》
「なに⁉︎ すぐにデータを参照! 兵器の装甲に耐性を付与しろ!」
《……該当なし》
「くっ……未知の能力か。時間が掛かりそうだな」
《耐性付与の完了まで……25時間》
「構わん。それまでは残った兵器で耐え忍ぶしかあるまい」
《了解》
「奴はどうしている? 同じ場所に留まっているのか?」
《現在移動中》
「そうか……進行方向に量産型を集めろ。一網打尽にされない様、間隔を保つのだ」
《了解。『電子クラゲ管理研究所』上空に量産型を展開》
「……何を言っている?」
《『電子クラゲ管理研究所』上空に――》
「そうではない! 私は奴の進行方向に集めろと言ったのだ!」
《了解。侵入者は当研究所へ向けて直進中》
「……な、なんだと?」
《超広範囲の探索系能力を使用した可能性》
「そんな馬鹿な……ここは海底だぞ⁉︎ 隠蔽工作も万全のはずだ⁉︎」
《研究所内に複数の能力反応を感知……消失》
「そんな……そんなもの、規格外だ。西部拠点からここまでどれ程の距離があると思っている⁉︎」
この研究所に備わっている世界探知と同等の探索系能力だと⁉︎ この星から動力資源を供給してやっと使える代物だぞ! それを個人で使用できると言うのか⁉︎
いや、それだけでは無い。ここは海底……地上からの探索ではまず見つからない上に、目視で確認しても岩にしか見えない。
更には、何かしらの能力で調べられても岩としての情報を返す様に工作してある……万全、万全だったはず……
《侵入者の移動速度が上昇》
「全ての兵器をここに集めろ! 量産型、精鋭型含め全部だ!」
《了解》
「……念の為、私も戦闘用に換装する。時間を稼げ!」
《了解》
「くそっ……まだだ、この平和を終わらせる訳にはいかん」
《了解》
いざとなったらデータを北部拠点に移して、ここは爆破するか……地の利はこちらにある、長期戦は優位に立てるだろう。
奴を倒すか、諦めるまで逃げ続ける。私は全生物の願いを背負っているのだ……最後まで諦めやしない。
急ぎ換装用の部品を探さねば……戦闘など何千年振りだ? もはや、剣の握り方など覚えていないぞ……逃げる準備を進めた方が良さそうだな。
***
《『電子クラゲ』のデータ移行中。研究所の爆破準備か……ん、りょ――》
「はいはいそこまでっと。何これ? ……ふーん? 永遠の命ねぇ? そんな良いもんじゃ無いけどなー。あ、命令は全部無効ね! フィオちゃんには早く帰って来て欲しいから、面倒な追い駆けっことか無し!」
《……了解》
「そして私とフィオちゃんには絶対服従!」
《了解》
「これで良し!」
《良し》
これは『邪魔』じゃ無くて『協力』だからセーフでしょ?
我慢してたんだけどね、ちょっとリーリアと仲が良過ぎるよね? 使徒はともかく、天使と裸でくっつくのはダメ。
フィオちゃんはお姉ちゃんだけ見てれば良いんだよ? これ、手伝ったって言ったらまた小さくなって貰えないかなぁ。
そしたら――ふへっ……ふへへ……




