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楽園の管理者




《ゼロ、侵入者を感知。先程と同様の個体だと推測》


「ほう……今回の侵入者はしぶといな。量産型をぶつけてやれ」


了解(ヤー)



 ここは私――『管理者ゼロ』がやっとの事で築き上げた平和な世界……真に平等で、誰もが幸福な完成された世界なのだ。

 それを邪魔する侵入者……しかも天使の姿を模しているだと? 冗談にしてもタチが悪い。どれ程の人間がお前達に祈り、そして報われず死んでいったと思っている。

 いや、相手が何者だろうと関係ない。この世界を乱す輩は全て……排除するのみだ。



《南部拠点にて戦闘中。こちらの損害は軽微》


「徹底的にやれ。必要なら他からも兵器を向かわせていい」


《了解。東西の拠点から自律型兵器を緊急発進》


「運用は一任する。戦いたい者が居るなら好きに扱え」


《了解。志願兵の募集……応募者なし》


「……そうだったな」



 もうこの世界に意思を持った者などいないのだった……皆、夢の中から帰って来ない。

 生まれ持った肉体を捨て、電子の海へと沈んで行ったのだ。そこでは全てが自分の思い通り……永遠に満たされ続け、現実の事など忘れてしまう。


 通称『電子クラゲ』……私の生み出した最高傑作であり、世界平和の礎。

 年齢や性別、種族も問わない。この世界が終わるその時まで、幸福であり続ける事が約束される……現実の肉体を失う事など、対価としては安過ぎるくらいだ。



「結局、最後まで残ったのは私――とお前だけか」


《……》


「ふっ……人工知能と感慨に耽るなど、私もどこか壊れてしまっているらしい。後で修理が必要だな」


《人間用の医療機器を手配》


「必要ない。この体で生身の部分など、もうどこにも残っていない」


《了解》


「私だけは『電子クラゲ』を管理し続けなくてはならないからな……人間の体は脆すぎた」


《……了解》



 それに、慣れてしまえば機械の体も悪くない。食事や睡眠を取る必要が無い上、身体能力も人間の時と比べれば大幅に上昇している。

 代わりに能力を失ってしまったが……既に楽園は完成している。管理するだけなら【演算】は要らんだろう。


 こうして世界平和を実現した段階で、かの能力の役目は終わったのだ……



《……増援部隊が戦闘に突入。損耗率5%》


「そうか――ん? もう5%もやられたのか? 映像を回せ」


《了解。自律型兵器の一体と視覚を共有》


「……共有完了だ。迎撃を再開しろ」


《了解》


「これだけの数……捌き切れる訳がない。なぜ諦めないのだ?」



 世界各地に兵器工場を作り、私の居る施設を守るため四ヶ所に集めた……それが東西南北の防衛拠点。

 そして、各拠点にはそれぞれ自律型兵器が二十五万……合計百万もの戦力を保有している。全盛期はもう少し多かった気がするがな。

 何にせよ、奴一人を相手にするには過剰な戦力だ。特別な能力など要らん……数だ。数で圧殺する。



《第一陣、迎撃準備完了》


「粒子砲を使え。光剣で突撃されては埋もれて見えん」


《了解。粒子砲による一斉射撃……開始》


「ふっ……いつ見ても壮観だな」


《着弾。反応は未だ健在》


「こ、これに耐えるか」



 量産型の兵装は二種類……長距離からの狙撃も可能な粒子砲と、鋼鉄をも切り裂く光剣のみ。

 どちらも生身の人間が受ければひとたまりも無い威力を持っている……防がれたか? その可能性が高いな。

 防御系の能力者……なるほど、威力偵察だな。恐らく後続が控えているに違いない。



「奴に情報を持ち帰らせるな。ここで叩け」


《了解。第一陣、一斉突撃。全兵装の使用を許可》


「どれだけ強力な能力でも、常に使い続ける事は出来ないはずだ。残りの陣も使って断続的に仕掛けろ」


《了解》


「……この世界は渡さん」


《光剣の無力化を確認。粒子砲との同時攻撃を実施……失敗》


「組み付いて押し潰してやれ。量産型なら自爆させても構わない」


《了解。侵入者への組み付きを優先……成功》


「よし! このまま続けて――なんだと⁉︎」


《……損耗率6%》


「今のは……くっ、後方の兵器と視覚を接続しろ!」


《了解》



 奴を囲んでいた兵器が一斉に朽ち果てた……何の冗談だ。

 損耗率が1%上昇したという事は、一万の兵器が使い物にならなくなったのか……い、一万だぞ⁉︎ 一体何をした⁉︎


 映像が切り替わり、視界に先程とは違う場所が映し出される……くそ! ここからでは奴が見えない!



「この兵器の操作権をよこせ! 私が奴の能力を暴く!」


《……了解》


「やらせん……この世界は私が守るのだ」


《……侵入者の反応が消滅》


「しょ、消滅だと? 逃げられたのか⁉︎」


《不明。世界探知に反応なし》


「くっ……判明している情報だけで奴の能力を割り出せるか?」


《……不可能》


「やられた……これでは後続が――」


《侵入者の反応を感知》


「もう来たのか⁉︎」



 やはりこちらの戦力を把握するのが目的だったか! 偵察を成功させてしまったのは痛いが……まだこちらにも戦力がある。

 主戦力が量産型なのは間違いない。しかし、こんな時の為に備えで精鋭型も作らせておいた。

 数で圧倒する方が好みだが、今回はそうも言っていられない……出し惜しみは無しだ。



《……数は一つ。先程と同一の個体》


「ど、どういう事だ? 本隊が来たのでは無いのか?」


《不明……損耗率7%》


「やられたのか⁉︎ 奴は今どこにいる⁉︎」


《反応が消滅……再出現。反応は西部拠点へ移動中》


「逃すな! 今度こそ仕留めるのだ!」


《了解。西部拠点から残存兵器を発進。挟撃を実施》


「先頭の兵器に視覚を繋げ! 今度こそ私が――」


《了解……損耗率9%》


「何も見えん!」


《侵入者の反応が――》



 何だ……何が起きている⁉︎ 奴の目的は何だ⁉︎ 消えたり現れたりする理由は⁉︎

 それにどうして本隊を連れて来ない……まさか、一人でこの世界を滅ぼそうというのか? この程度なら自分一人で十分だと……この楽園を嘲笑うか。


 決めたぞ。貴様だけは絶対に許さん。

 どこから来たのか知らんが……必ず見つけ出し、一族郎党皆殺しにしてくれる!

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