溶解する理性
「サターニャさん! 落ち着いて……落ち着いてください!」
「いいや、限界だな! このポンコツは壊す。開発局の連中も殺す」
「そんな物騒な⁉︎ そ、装置は改良中ですから! きっともう少しですよ!」
「ああ⁉︎ そのセリフは前も聞いたな……いつだ⁉︎ 三日前か⁉︎」
「いえ、すみません……昨日言いました。で、でも来年には経過報告が――」
「来年だと⁉︎ ……いつだ⁉︎ あと何日待てばいい⁉︎」
「あ、う……約二百日です」
「にひゃ――いつだ⁉︎」
「ふえぇ……ふぃ、フィオ先輩! 助けてください!」
「……ふむ」
檸檬色の髪に、つり目がちな孔雀緑の瞳……私の記憶にあるサターニャさんと一致しますね。
確か彼女は戦闘能力の高い天使だったはず、“ポンコツ装置”発言は生成された肉体への不満からでしょうか? それなら納得ですね。
リーリアさんが縋る様な目で見つめて来ます……仕方ない、ここは私が局長としての手本を見せてあげましょう。
「サターニャさん。お久しぶりですね」
「ああ⁉︎ っ……な、何だよ」
「お忘れですか? 貴女のフィオドールです」
「や、やめろよ……おい! リーリア! 兄貴の幻覚なんか見せてんじゃねぇ!」
「えぇ⁉︎ わ、私は何もしてませんよ⁉︎ 本物……本物ですから!」
「ああ⁉︎ 嘘ついてんじゃねぇ! 兄貴は介入禁止されてんだ……ここに来る訳ねぇんだよ!」
「それは解除されました。今の私は局長補佐です」
「っ……マジか⁉︎」
「マジです」
「げ、幻覚じゃねぇっていう証拠は⁉︎」
「どこに触れて欲しいですか? いえ、ここは胸一択ですね」
「む――待って! 待ってくれ兄貴! 胸は――ぁんっ」
「この感触……久しぶりですね? サターニャさん」
「くぅ……ば、バカ兄貴! いきなり胸なんか――んっ」
「あわ……あわわ……」
「おっと」
「ぁ……な、何でやめちまうんだ⁉︎ 俺が“バカ”って言ったからか? ち、違うんだよ兄貴――」
「リーリアさんが居るのを忘れていました」
「リーリア? ……か、関係ねぇよ! 今は俺の事だけ見てくれ!」
「うっ……いいなぁ」
「申し訳ありません。私は今、極秘任務を遂行中なのです」
「極秘任務⁉︎ か、かっけぇ……俺も! 俺も手伝うぜ兄貴! だから……な? 終わったら俺と――」
「ちょ、ちょっと待ってください! フィオ先輩? 介入……介入しないとですよね?」
「……そうですね」
忘れていた訳では無いのですが……もう少し楽しんでからでも良いのでは? こうして局員と触れ合う事も、局長の大切な仕事ですよ?
まぁ、今の局長はリーリアさんですからね……ここは大人しく従っておきましょう。私には、リーリアさんと装置の中で熱く絡み合うという任務がありますから。
「そうだ…… 聞いてくれよ兄貴! このポンコツ装置が酷いんだ!」
「ふむ……聞きましょう」
「こいつらの作る体がさ、能力もまともに使えないんだぜ? 身体能力も高くねぇし……そんなんじゃ戦えねぇっての」
それは……リーリアさんの話と矛盾していますね。天使に見合った肉体が生成されるのではなかったのですか?
やはり、予期しない不具合が発生しているのでしょう。それが原因で成功率も落ちているのですか……本格的にこの装置をどうにかしないと不味いですね。
せめて、サターニャさんが満足のいく肉体を用意出来るくらいではないと……彼女の階位は四階位でしたか? いえ、五階位だった気も……
「……サターニャさん。今の階位を教えていただけますか?」
「ん? ……あはっ、驚くなよ? あれから俺も階位が上がってな……なんと六階位だ!」
「お待たせしました。リーリアさん……行きましょうか」
「えっ? も、もういいんですか?」
「あれ? 待ってくれよ兄貴! この装置を壊すの手伝ってくれ!」
「リーリアさん……この装置を使えるのは『四〜五階位まで』で合ってますね?」
「は、はい。説明した通りです……でもサターニャさんは――」
「そんなのオカシイだろ! 俺が介入出来ないなんて間違ってる!」
「なるほど……」
「な、何度も説明しているのですが……納得して貰えなくて」
「なぁ、兄貴もそう思うだろ? 兄貴は七階位だから介入出来ないもんな?」
「いえ、私は今から介入します……リーリアさんと」
「あぅ……」
「……は? ど、どういう事だ⁉︎ 意味ないぞ⁉︎ すぐに体が壊れちまうぞ⁉︎」
「体が壊れてしまうのはリーリアさんだけです。主に足腰に負担が掛かります」
「っ……ダメですからね⁉︎ まだ……こ、心の準備が――」
「そんな……嘘だろ兄貴? 俺を置いて一人で楽しむつもりなのか⁉︎」
「二人で楽しみます。リーリアさんは初めてですからね……念入りに満たして差し上げねば」
「うぅ……ダメって言ってるのに……と、溶かされちゃいます」
「くっ、何でだよ……俺よりもリーリアがいいってのか――」
「《操作》、さぁ……リーリアさん? 中へどうぞ」
「あうぅ……さ、触っちゃダメですからね?」
「もちろん。努力しますとも」
しかし、この狭い空間でお互いに触れないというのは不可能。いくらリーリアさんが小柄だと言っても、本来は個人用の装置ですからね……
ふふ、ぴったりと壁に張り付いてこちらを見つめるリーリアさん……実に嗜虐心をそそられてしまいます。先に入ったのは失策でしたね? これで逃がす事もありません。
さて……いよいよ決行の時です。ニールさん曰く『触れれば衣服が溶けてしまう』でしたか? 存分に活用させていただきましょう……【限定】と【溶解】ですね。
「では……失礼します。リーリアさん」
「あ……あっ……」
「怖がる必要はありませんよ? さぁ……私に身を委ねるのです」
「はぅ……フィオ先輩……」
「ふふ、こうして私が入ってしまえば……ほら、ピッタリと体が触れ合って――無いですね」
「……う?」
リーリアさん……リーリアさん? 実は体の大きさを自由に変えられたりしませんか? 今、限りなく薄く……紙の様になっていませんか?
能力を発動した形跡は……ありませんね。では一体なぜ――くっ! 失礼しました……リーリアさん、貴女……胸が……
いえ、予定外ではありますが……私はそのサイズも好きですよ? 胸の大きさに貴賎はありません。平等に愛し、等しく快楽へ導きましょう。
「あの……フィオ先輩?」
「はい、何でしょう? リーリアさん」
「え、えっと……まだ介入先を決めて無いです、よね?」
「ふむ……そうでしたね。『難易度順』でしたか?」
「あっ、はい! 上から順に難しい介入先が――」
「でしたら一番上から行きましょう」
「うぇえ⁉︎ ま、まずは様子を見ませんか⁉︎ ほら! フィオ先輩が装置を使うのも初めてですし!」
「いえ、他の方に先を越されてしまうかもしれませんので」
「は、早い者勝ちじゃ無いですから⁉︎ もうそんな無茶な介入する方はいませんから⁉︎」
「もう決定してしまいました」
「そんなっ⁉︎」
胸の大きさに貴賎はありません……しかし、期待していた展開ではない事に落胆の色を隠せません。もう少し、あと少しこの装置の中が狭かったら……
リーリアさんに非はありませんよ? 天使の体型は不変ですからね。いや、一部例外の方も居ますが……基本的に、天使は肉体が最盛期の状態で保たれます。
リーリアさんは元人間……故に、彼女の肉体は今が最盛期。つまりこれ以上は成長の余地が――むっ? これは聖術の気配……
この私に仕掛けるつもりですか……命知らずですね? ここは華麗に返り討ちに――しません。
「兄貴! 俺も!……俺も行くぞ!」
「……っと、サターニャさん? 飛び付いたら危ないですよ?」
「ひゃぁ⁉︎ ち、近い……近いですよフィオ先輩!」
「二人だけなんて狡いぞ!……あれ? ふ、服が⁉︎」
「ふふ、三人は狭いですね……リーリアさん?」
「あ、ああ⁉︎ ……は、離れてくだ――」
「《操作》……おや、扉が閉じてしまいました」
「あっ、兄貴……動かないでくれ……」
「ひゃぁ⁉︎ と、溶けてます! 溶けちゃってますから⁉︎ は、離れて――」
「不可抗力です。能力を制御できません」
「う、動くなって! あっ……見ちゃダメだぞ⁉︎」
「こっちも見ちゃダメです! は、早く介入してください!」
「お待ちください。この状況……私だけ服を着ているのは不自然ではありませんか?」
「ま、マジかよ⁉︎ どうしよ……み、見てぇけど……」
「サターニャさん⁉︎ 気を確かに持ってください! フィオ先輩も脱いじゃダメですよ⁉︎」
くくっ、まさか前後で挟まれる事になるとは……いけませんね。ついつい魔王の様な笑い方になってしまいました。冷静に、冷静に……
ふむ。冷静に状況を把握した結果……サターニャさんの方が大きいという事が分かりました。そして、身動き出来ないので服が脱げません。
お二人の感触は是非、直に味わいたい。ですがこのままでは……やむを得ません、溶かしますか。
これでは姉さんの事を笑えませんね? ああ……能力を制御できな――
お読みいただきありがとうございます!
以前にもお伝えしました通り、過去に投稿した部分の表記を修正しております。
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