【経験】は蜜の味
「天界最強の天使……フィオドール、ここに見参です」
「お? いらっしゃい。フィオちゃん」
「フェリス姉さん……【予知】の仇を取りに来ました」
「あちゃー……やっぱバレちゃうよね。でも、フィオちゃん? 能力を溜め込むのはやめた方がいいよ」
「私は姉さんの様に、自分の能力に振り回されたりしませんので」
「いんや? 振り回されてるよ。フィオちゃん……シクティスを領域に連れ込んだらしいね?」
「…………」
「あはは、大丈夫。『経験の園』だっけ? 領域の中までは見れてないから。でも……昔のフィオちゃんならそんな事しなかったよね?」
「私を止めますか?」
「うーん……止めたいんだけどね? お姉ちゃん、加減できないから」
「……ふむ」
「お姉ちゃんだって、フィオちゃんの敵になりたい訳じゃ無いんだよ? むしろ味方。これ以上、フィオちゃんがおかしくならない様に――」
「姉さん。私と勝負しましょうか」
「……え?」
私は望んで変わり続けているのです。自らの欲望を解放し、性欲を満たす為に動いている……いわば思春期ですね。
そんな私を邪魔すると言うのなら、例え姉さんでも容赦はしません。いつまでも自分が優位に立っていられるとは思わない事です。
***
んー……なんか間違っちゃたのかな? 私――フェリスは善意で説得しようと思っただけなのに……
フィオちゃん……最初の頃は無感情で、お姉ちゃんの言う事は何でも聞いてくれたのに。最近は他の子に構ってばっかりでさ……
『経験の園』――フィオちゃんの領域にだって、まだ一回も招待されてないし。それどころか中も見せて貰えない……流石に不安にもなるって。
能力を増やさない方がいい、って言うのもフィオちゃんを想ってるからこそなんだよ? 制御出来なくなったら……暴走する前に消さなきゃいけなくなっちゃうんだから。
「準備はいいですか? フェリス姉さん」
「えー……本当にやるの?」
「そろそろ、姉さんの認識を改めさせていただきます」
「うん? フィオちゃん……弟じゃ無くなっちゃうの?」
「……強さの方です」
「フィオちゃんの強さ? それなら知ってるよ! お姉ちゃんが知らない訳無いじゃん」
お姉ちゃんは、寝るかフィオちゃんを見てるかの生活を送ってるからね! 魔界までは流石に見れなかったけど……フィオちゃんが戦ってる所は沢山見てきたよ?
本当に……本当に強くなったよ。やっぱり【経験】は強いね。時間は掛かるけど、育ったら誰の手にも負えない……最強候補だと思うよ?
まぁ、だからこそお姉ちゃんには勝てないんだけど。
「いいえ、姉さんは知りませんよ」
「知ってるよ?」
「いいえ、知りません」
「知ってる!」
「私が既に姉さんよりも強い、という事をご存知で?」
「知って――んん? き、聞き間違いかな? フィオちゃん……それはあり得ないよね?」
「事実ですよ。フェリス姉さん……天界最強はこの私です」
「フィオちゃん……お姉ちゃんの能力が何か分かってて言ってる?」
「……【経験】では?」
「えっ、あぁ……うん。そうなんだけど……」
フィオちゃん……もしかして、もう手遅れだったりする? 能力が制御出来なくて、思考能力が下がってたり……
【経験】は時間が経てば経つほど強くなるんだよ? お姉ちゃんは、フィオちゃんよりも長生きしてるからすっごく強いの。単純な事なんだけどなぁ……
それに、今のお姉ちゃんは天界と接続してるからね? フィオちゃんに勝ち目なんて無いよ……どうしよう? どうやったら元のフィオちゃんに戻せるかな……
「姉さん。覚悟してください」
「うーん……お姉ちゃんからは攻撃しないけど、いい?」
「構いませんよ。私も攻撃しませんので」
「フィオちゃん……」
どっちも攻撃しなかったら戦いにならないよ……それも分かんないんだ……思ってた以上にやばいね。
でも、そんなフィオちゃんも大好きだよ。お姉ちゃんがずっと傍に居てあげるから……もう休んで――
「これが私の全力……【退化】です」
「フィオちゃ――んほぉおおおおおおお⁉︎」
「はしたないですよ? フェリスお姉ちゃん」
「ああ……ああっ⁉︎」
あああ⁉︎ ああ……あああああ⁉︎ あ、あああああああ――
「つ、強い……」
「最強です」
「さ、最強すぎ……」
「フェリスお姉ちゃん」
「あうあぁ……」
か、勝てない……無理だよこんなの……攻撃も、防御もできない。
目を背ける? 嫌だ。一瞬足りとも目を離したく無い。さ、触ってもいいのかな? 消えたりしない? あ、飴ちゃんあげたら一緒に寝てくれたりしないかな……
な、何とかしなきゃ……何とかしてフィオちゃんを舐めなきゃ! 絶対美味しいよ……ああ⁉︎ その前に記憶! 永久保存! 匂いも覚えなきゃ……それから――
***
勝った。勝ちましたね? 姉さんの目を見れば分かります。あれは性犯罪者の目です。
今頃、どうやって私と一緒に寝ようか考えている事でしょう……戦わずして勝つ、これが真の強者と言うものです。
まぁ……戦闘でも負けるつもりはありませんが、確実に長期戦になってしまいますので。何より疲れますしね……
「フィオちゃん……」
「何でしょうか? フェリスお姉ちゃん」
「あうぅ……」
しかし、ここまで効果覿面なのは予想外でしたね。思考を奪うどころか、言語すらまともに扱えなくなってしまうとは……
今なら悪戯もし放題なのですが、リーリアさんが待っていますからね……『フィオドールくん7歳』が効く、という事が分かっただけ良しとしますか。
「お姉ちゃん。もう私――僕の邪魔をしないでください」
「あぅ……で、でも! フィオちゃんが壊れちゃうのは見過ごせなくて……」
「壊れません。お姉ちゃんとは違います」
「うぅ……フィオちゃん……」
「『邪魔をしない』と誓ってくれたら、三分だけ好きにさせてあげます」
「ううっ⁉︎ ……じゅ、十分!」
「三分です」
「きゅ、九分!」
「三分です」
「せめて……せめて五分!」
「五分です」
「『邪魔しない!』絶対邪魔しないから!」
「……ここに誓約は成りました」
「っ! 【時間停止】」
「【強制解除】……五分は五分です。もう始まっていますよ?」
「んんっ⁉︎ フィオちゃ〜ん‼︎」
『誓約』を結ばせる事が出来たのは大きいですね……これでしばらく姉さんの介入は防げるでしょう。カリンさんが喜びそうですね?
姉さんなら『誓約』を破る事も可能でしょうが、その場合は制裁を受けますからね……弱体化した隙に調教フルコースも夢ではありません。
「はぁ……はぁ……フィオちゃん」
「はい」
「な、舐めてもいい? いや、“好きにしていい”んだった! 舐める!」
「流石に舐めるのは――んぶっ」
「おいひい……ふぃおひゃん」
好きにしていいとは言いましたが……躊躇なく唇を舐めてきましたね? この思い切りの良さは見習わなければ……
後二分……既に顔中姉さんの唾液まみれです。
それにしても……なぜ下半身は攻めてこないのですか? 真っ先に狙ってくると思ったのですが……恥ずかしいのでしょうか? 案外可愛いところもあるのですね。




