勇魔寸劇
「わ、ワシに任せるのじゃ……」
「お待ちくださいニール様! 流石に腐らせるのは不味いです!」
「え、えっ? 何を腐らせるんですか⁉︎」
「行きなさい。私の第二使徒……観測課の機能を停止させるのです」
「ふぇえ⁉︎ だ、ダメですよフィオ先輩⁉︎ 何考えてるんですか⁉︎」
「リーリアさん。貴女に介入の補佐をお願いしたいのですが……」
「あ、え? 私にですか⁉︎ でも……ウルさんやニールさんが居ますし」
「二人にはリーリアさんの代わりに、書類仕事をやって貰いますので」
《待て! ご主人様……本当にその作戦でいくのか?》
《何か問題がありますか? ここでリーリアさんとの距離を詰めます》
時間を掛けて少しずつアプローチを行うつもりでしたが、この機会を無駄にはできません。
リーリアさんさえ良ければ……装置の中で初体験をしても構いませんよ? いかに狭い場所であろうと、私に不可能はございません。必ず満たして差し上げます。
……そういう訳です。協力して貰えますね? ウル?
《オレは構わんが……本当に観測課の装置を壊すのか? 絶対問題になるぞ……》
《では、リーリアさんを説得しますか? 私と共に装置の中へ入って貰えれば構いません》
「リーリア……ご主人様の補佐を頼んでもいいか?」
「で、でも……書類には局長でしか処理できない物もありますので……」
「それ以外を処理しよう。頼む……介入の補佐に行ってくれ」
「それなら……いいんですけど、何でそんな必死に――」
「観測課が使い物にならなくなってしまうんだ」
「なっ⁉︎ それじゃ補佐も出来なくなってしまいますよ⁉︎」
「出来るだろう? ご主人様と装置の中へ入ればいい」
「えぇ⁉︎ だ、ダメですよ⁉︎ 私……し、下着が――絶対ダメです!」
「行きなさい……私の第二使徒」
「くっ……いいのか⁉︎ 観測課が腐り果てるぞ⁉︎」
「脅しです⁉︎ これ脅しですよね⁉︎ あ、待ってくださいニールさん!」
「リーリア……お前にはニール様を止められない。オレもご主人様を止められない」
「うぅ……頑張ってくださいウルさん! 私と一緒にフィオ先輩を説得しましょう!」
「……すまんな。答えを聞こう、リーリア」
「そ、そんな……」
なぜでしょう? ウルが魔王に見えてきました。
勇者リーリアの元パーティメンバーでありながら、悲運にも魔王となってしまったウル……お互いに戦いたくない。しかし、運命がそうさせてくれない……
ニールさん、戻って来てください。これはなかなか見ものですよ? 私と鑑賞会をしましょう。
《分かったのじゃ! ウルが魔王とは……見逃す訳にはいかんな》
《そうでしょう。元魔王としての評論を聞きたいものですね? ニールさん》
《くくっ、やめよ主人様。所詮は小さき世界の自称魔王……井の中の蛙じゃ》
《そうでしたね。啖呵を切って挑んだ挙句、カリンさんにも勝てませんでした》
《……もうちょっと優しくならんか? ワシもいい勝負してたじゃろ?》
《静かに。続きが始まりそうです》
「リーリア。何かを守る為には、何かを犠牲にしなくてはいけないんだ」
「それは……」
「オレは自分の身を犠牲に、ご主人様(の立場)を守っている。お前が守りたいものは何だ?」
「……観測課――いえ、干渉局の皆です」
「では、何を犠牲にする」
「……私自身を」
「今来たんじゃが……これは主人様の方が魔王なのではないかの?」
「配役的には、ウルは四天王でしょうか? 魔王の器ではなかった様ですね」
「今と変わらんではないか」
「そういう役回りなのでしょう。しかし……何か物足りませんね」
「そうかの? 十分楽しめそうじゃが……」
確かに演劇としては十分でしょう。 ですが、私が求めているのはただの演劇ではありません。
肌色成分が足りないのです。そうですね……溶かしますか。二人の服を溶かしていきましょう。この真面目な雰囲気がどこまで保てるか……羞恥心との戦いですね。
「待つのじゃ主人様」
「懲りませんね。ニールさん……また気を失いたいのですか?」
「ただ溶かしても面白くないじゃろう」
「発言を許可します。続けてください」
「うむ。そうじゃな……言いよどむ度に溶かすのはどうじゃ?」
「それではリーリアさんが不利――なるほど。流石は元魔王、と言った所でしょうか」
「くくっ、悪くない……褒められるのも気持ちが良いのじゃ」
ここに来て私の意図を汲みますか……そうです。私はリーリアさんの肌が見たいのです。
討論でリーリアさんが負かされるのは必至、既に下着の無いリーリアさんがローブを溶かされてしまえば……乙女の秘密大公開です。
ウルが言い負かされてしまえば意味がありません。心配ないとは思いますが……一応【予知】でも使っておきますか。
「む、久し振りに使うのかの?」
「ええ……出番ですよ。ミニフィオくん」
「……」
「くぅ〜! 小さくて可愛いのじゃ! 一体くらい貰えんかの?」
「ダメです。これは私の一部……能力そのものですからね。さぁ、やりなさい」
「……っ」
「むっ⁉︎ ……消えてしまったぞ? 主人様」
「ええ……意味が分かりませんね?」
消える? 猟犬にでも嗅ぎつけられましたか? いえ、それなら私が察知できるはず……面倒な事になりました。
【予知】を失ってしまうとは……便利な能力だったのですが、仕方ありません。きっと何か見てはいけないものを見てしまったのでしょう……姉さんの痴態でしょうか?
あり得ますね。私に察知されずにミニフィオくんを消せるのは姉さんくらい……犯人が分かりましたよ? ニールさん。
「むぅ……小さい主人様を消すとは……許せん!」
「何も消さなくても良いと思うのですが……これは忠告でしょう」
「忠告じゃと?」
「『これ以上続けたら、お姉ちゃんも出演する』というメッセージです」
「り、理解できん……ぬわぁああ⁉︎ ふ、服が――しまったのじゃ⁉︎」
「今はニールさんで我慢しましょう」
「ご主人様。説得が終わったぞ……って何をしている⁉︎」
「フィオ先輩……エッチな事はしないって約束を――ニールさん⁉︎」
「溶けてしまったのじゃ……んんっ」
「くっ、オレが説得している間に何があったんだ……」
「不安です……フィオ先輩と一緒に装置の中……あうぅ」
「良くやりましたね? ウル」
「ああ……ニール様に何をしたんだ?」
「説明は後でも良いでしょうか? どうやらフェリス姉さんが見ている様なので……」
「何っ⁉︎ ……どうするんだ? ご主人様」
「……私が行く他ないでしょう。リーリアさんは介入部でお待ちください」
「えっ、はい。分かり――きゃぁああ⁉︎ 服が⁉︎」
「くっ! すぐに戻りますので……《転移》」
ようやくリーリアさんが能力に掛かったというのに……フェリス姉さんはいつも私の邪魔ばかりしますね?
これは少々、過激なお話が必要ですか……弟は姉を超えて行くものだと、体で理解していただきましょう。【予知】の仇は討たせて貰いますよ? フェリス姉さん……




