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安全の代償




「実は……エイリーン様から『介入の成功率を上げろ』とのお達しがありまして」



「ふぅ……ウル。判定は?」


「セーフだな。ご主人様が直接エイリーンに報告でもしない限り、遭遇する確率は低い」


「どうやら警戒し過ぎていた様ですね……リーリアさん、続きをどうぞ」


「えっ……つ、続きですか⁉︎」


「成功率を上げるのでしょう? リーリアさんの考えた対策を聞きたいのですよ」


「あ、う……そのぉ……」


「まさかリーリア……何も考えていなかったのか⁉︎」


「違うんです! 『介入補助装置』を使わなければ、成功率は上がると分かってはいるんですが!」


「嫌なら別の対策を考えればいいだけだろう……無いのか?」


「そ、そんな簡単に言わないでください……『魔界介入事件』の後に導入されたんですよ? 私も色々考えたんですけど……」


「ふむ……装置の性能を上げる事は出来ないのでしょうか?」


「リーリアが認めた者だけ、装置なしで介入可能にするのはどうだ?」


「えっと……あの装置は開発局の――」



「待ちなさい、ウル。リーリアさんは『装置派』なのですよ? 今後の事も考えて、装置の性能を上げるのが最善手でしょう」


「ご主人様こそ待つんだ。今回の不満調査を忘れたのか? 『反装置派』の存在を蔑ろにする訳にはいくまい」


「『反装置派』……クレフスさんだけでは――」


「匿名にすると言っていたよな⁉︎」


「ごほん……ごく少数の意見ではありませんか。それに、装置の性能が上がれば『介入できない』という問題も解決します」


「エイリーンが求めているのは早急な問題解決だろう。装置の改良には時間が掛かるはずだ。つまり、精鋭に装置なしの介入許可を与える事こそ最善」


「その判断で天使が消滅してしまった場合、リーリアさんは深く悲しむ事になるでしょう……私はそんなリーリアさんを見たくありません。ここは彼女の願いを叶えるべきです」


「……ご主人様が行けばいいんだ」


「あ、あの! お二人ともちょっと待ってください!」



 ふむ、リーリアさんに聞けば結論が出ますね。私とウル……どちらの案を支持するのか。

 リーリアさん……私は貴女を想って『装置派』についたのです。ここでウルを支持する様な真似をしたら……どうなるか分かっていますね? そのローブが無事に済むとは思わない事です。



「えっと、まずは……フィオ先輩」


「はい。私の案を採用していただけるのですね?」


「あぅ……そ、装置は開発局の方で現在も改良中でして……」


「おや、もう手を打っていたのですか」


「はい……次の経過報告は来年になります」


「……ふむ」


「ふふっ、どうするんだ? ご主人様は次の年まで、何の対策もしないまま問題を放置するのか?」



「それで……ウルさん」


「ああ、オレの案で行くんだろ? まずはご主人様に――」


「すみません……仮に装置なしでの介入を許可しても、介入する異世界がありません」


「な、なんだと? どういう事だ?」


「探索課で発見した異世界の座標は、あの装置へ直接送られてしまうんです……観測課も『介入補助装置』経由で観測している状況でして……」


「……装置に依存しているのが現状だと?」


「は、はい……せっかく案を出していただいたのに、申し訳ありません!」



 まさか、私とウル……両方とも採用されないとは……この場合はどうしましょうか?

 やはりリーリアさんのローブを剥ぎますか? いや、あえて下着だけ消失させてしまうのも魅力的ですね……ウル、どちらがいいでしょうか?



「……下着だな」


「お任せください」


「あ、あの……そこでフィオ先輩に提案が――ひゃっ⁉︎」


「提案……提案とはなんですか? リーリアさん」


「ちょ、ちょっと待ってください! ……あれ? な、なんで?」


「もったいぶるなリーリア。言いたい事があるなら言っていいんだぞ?」


「すみません! で、でも別の問題が発生してしまって――下も⁉︎」



《……ウル、結構際どい下着でした》


《……カリン様の物とどちらが?》


《同じくらいです》


《ばっ⁉︎ そ、そうか……意外だ……紐じゃないか》



「あぅう……な、なんで? なんで消えちゃうんですか……」


「さて、リーリアさん。提案とやらを聞きましょう」


「ローブも消えますか? 消えませんよね? 消えないでください……」


「リーリアさん?」


「は、はい! 消えるんですか⁉︎」


「ローブも消しましょうか?」


「け、消さないでください!……えっ、“ローブも”って――」


「リーリア、提案とやらが気になる。解決策があるのか?」


「あ、はい……解決策と言いますか、強行策が……」


「よし、聞かせてくれ」


「……フィオ先輩に装置を使って介入して貰う、っていうのはどうでしょうか?」


「それは……装置が壊れないか?」


「壊れますね」


「そ、その! フィオ先輩が上手く力を抑えてくれたり!」


「……出来るのか?」


「出来ますね」


「後は難しい介入をフィオ先輩に任せて、簡単なものを他の局員へ回せば!」


「難しい介入か……装置から生成される肉体の強さはどれくらいなんだ?」


「それは私も気になりますね。どの程度、力を抑えればいいのでしょう?」


「……四〜五階位が装置の限界です。五階位の方は介入に失敗する場合があります」


「五階位未満、という事か」


「能力はどうなるのです? 数に制限はありますか?」


「フィオ先輩の様に、たくさん能力を持っている方が使用するのは初めてなので……ふ、不具合があるかもしれません」


「ご主人様……無理じゃないか? 自力で一から異世界を見つけた方がいいぞ」



 力を抑えても能力の数で引っ掛かる可能性があるのですか……確かに厳しいですね。

 ですがウル……私が介入出来てしまえば、問題は解決したも同然ではないですか? リーリアさんに恩を売る機会でもあります。

 もし失敗したとしても、偽りの肉体が滅びるだけ……まぁ装置が壊れてしまう可能性も否定できませんが、私に被害はないでしょう。



「やるだけやってみましょうか」


「あ、ありがとうございます! フィオ先輩!」


「装置が壊れても文句は言うなよ? リーリア」


「えっ……こ、壊れるんですか⁉︎」


「私が力の制御に失敗した場合の話ですよ。リーリアさん」


「……二、三個は覚悟しておけ」


「あ、あの装置には開発局の最先端技術が使われていまして……」


「私が最先端です」


「……四、五個ダメにするかもしれん」


「そんなっ⁉︎」



 まったく……失礼にも程がありますね。私はフェリス姉さんと違って、聖力の調節くらい出来ますとも。能力の数はどうしようもありませんが……

 仮に一つだけしか持ち込めなくとも【経験】だけで十分です。こちらが天界最強の能力となっております。

 そうと決まれば早く行きましょう。介入の補佐はウルがしますか? それともニールさんが? 私はどちらでも構いませんが……



「リーリア、介入の補佐はどうしたらいい?」


「あ、介入の補佐ですか……観測課で行いますか?」


「……その言い方だと違う場所でも出来るのか?」


「はい……装置から直接読み取ることになりますが――ってダメです!」


「な、なんだ急に……」


「いえ、装置の中に入らないと読み取れないのを忘れていました……その、中は狭いですから」


「ふ、ふーん? なるほどな?」


「ウル……私の言いたい事は分かりますね?」



 今すぐ観測課にある装置、結晶を破壊し尽くしてください。そして介入の補佐はリーリアさんにしていただきます。

 リーリアさんは今、下着を失っていますから……半裸と言っても良いのでは? 密閉された装置の中で、半裸の男女が二人きり……何が起きても不思議ではありませんね?

 完璧ですね……行きなさい、ウル。作戦開始です。ニールさんも寝てないで、観測課ごと腐らせて来てください。

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