【最古】対策緊急会議
「フィオドール、時間を止めて頂戴。わたくしは防諜結界を張るわ」
「……【時間停止】」
「フィオ坊……お預けでありんすか?」
「キリリスさん……残念ながら時間切れの様です」
「キリリス?貴女も手伝って頂戴。なるべく強力な防諜結界を張って」
「……わちきはいつも『宝具』で済ませてしまいんす。結界は破る専門でありんすえ?」
「そう……ニール、ウル。手伝いなさい」
「ワシも得意では無いんじゃが……」
「オレにお任せ下さいカリン様」
時間を止めて防諜結界を張る……もしや続行の許可が出たのでしょうか?
いえ、カリンさんの表情は険しいままです。少なくともこの状況を歓迎している様には見えませんね……
どうしたと言うのです? 私の女神……確かに予定外ではありましたが、計画が進んだ事には変わりありませんのに……
「んっ……だ、ダメよ? フィオ……“女神”なんて言っても許さないから」
「諦めろご主人様。堕とす順番を守らなかったお前が悪い」
「ワシは気にせんでも良いと思うんじゃがなぁ……」
「ずるいわ? ニール……ここで好感度を稼ごうだなんて」
「思った事を言ったまでじゃ。キリリスを堕とせたのは大きいじゃろ?」
「大き過ぎるのが問題なのよ……作業は終わったかしら? 緊急会議を始めるわ」
堕とす順番……カリンさんは順番に拘りを持っていますからね。七階位を堕とす順番はどこかで聞いたような気も……
最初にリーリアさんを堕とすという話だったのは覚えています。シクティスさんとの協力体制を整え、正規の手順で干渉局へと復帰しました。
局長補佐という立場も、リーリアさんと接触し易い様にと新設された役職ですからね……シクティスさんの影響力は大きいです。
「そうね? 計画は順調に進んでいたはずだったわ?」
「リーリアさんを堕とし、シクティスさんも私色に染め上げる……」
「その為に動いていたもの……そこまでは良いのよ? けどキリリスは不味いわ?」
「わちきは不味いのでありんすか? フィオ坊……」
「とても美味しそ――いえ、美味しいですね。見ているだけで美味しいです」
「ふふ……うふふっ」
「……狐が色に狂っている」
「完全に乙女の顔をしておるのう? 獣人仲間が増えたのじゃ」
「まぁ、味方なら狐も心強い……ちっ」
「くくっ、そんな嫌わんでも良いじゃろうに。純粋な戦力として見たらどうじゃ?」
「……がるる」
「う、唸るほど毛嫌いしておるのか⁉︎【天狐】……【天界一】が仲間になったのじゃぞ?」
「茶番はそこまで。本題に移るわ?」
「本題……ですか」
キリリスさんを堕とした事による反作用とでも言いましょうか? やはりキリリスさんクラスの天使と関係を持ってしまうと、天界にも影響が出てしまうのでしょうね……
私の予想では『特派』が使い物にならなくなってしまいます。実際にこうして私を止められるのはカリンさんとキリリスさんだけでした。それが今回の件で――
「最悪の場合、フェリスが襲撃しに来るわ?」
「……私が何をしたと言うのですか」
「む? 狐を堕としたのじゃろ?」
「因果応報だ……報いを受けろ、ご主人様」
「けど、今もこうして話していられるって事は……気付いていないのかしらね」
「いいですか? ウル。これが『日頃の行いが良い』という事柄です。私の様に善良な天使には、吉事が巡って来るのですよ?」
「うぐぅ……カリン様! ご主人様が調子に乗っています!」
「ええ、愛おしいわね?」
「んなっ⁉︎」
「どうやら緊急事態では無い、と分かって気が緩んでおる様じゃな……」
「でも、流石に今回はやり過ぎよ?フィオ……一歩間違えれば、私達は消滅していたわ?」
「……いくらフェリス姉さんでも、私の関係者を消したりは――」
「するでありんしょう……あの女なら」
「ふむ、キリリスさんもそう思うのですか?」
「フィオ坊の前では猫を被っておりんす。わちきの眼を信じておくんなし?」
「そうですか……フェリス姉さんが……」
「フェリスは烏合の衆を気にしたりしないわ? だから、七階位でも日の浅い者から堕としていく計画だったの。そして戦力を拡充させるのよ?」
「ふふ……わちきがフィオ坊と組んだら、天界に敵う者が居なくなってしまいんすね?」
「そういう事よ。それでフェリスが動くのを想定したのだけど……」
「……姉さんは動かない、または気付いていない」
「何を考えているのかしら? わたくしなら絶対にこの段階で仕掛けるわ?」
「他の事に夢中でこちらに興味が無い、という可能性もありますが……」
「それはそれで怖いわね……一応、まだ気付かれていないと仮定して動きましょう。流石に計画を公にするのは早過ぎるもの」
カリンさんが納得した上での行動でしたら、私からは特に何も……いえ、一点だけ気になる所がありますね。
キリリスさんの処遇はどうなるのでしょうか? このまま『経験の園』へお連れしても? あそこならフェリス姉さんに察知される心配もありませんし、狐さんとお戯れの続きができるのですが……
「キリリスは連れて行くわ? シクティスとの話し合いに同席して貰うから」
「でしたら私も――」
「フィオ? この経験を無駄にしてはダメよ?」
「……リーリアさんを堕としましょう」
「ありがとう。フェリスを何とかできるまでの辛抱よ」
「かしこまりました。こちらはお任せ下さい」
「お願いね? 後は……ニールが暇そうだから、ついでに構ってあげて頂戴?」
「むっ、ワシか? ワシの出番か?」
「ご助力をお願いできますか?ニールさん」
「うむ、ワシに任せるのじゃ! リーリアの尻を拭ってやろうではないか!」
「ニール様、リーリアはあれで結構頑張っているのです。今回の視察で痛感いたしました」
確かに、リーリアさんが努力家なのは間違いありませんね。天使になったばかりの頃から人一倍努力していたのを知っています。
ただ、なかなか実を結ばなかったと言いますか……努力の仕方を間違えていたと言いますか……それでも一心に励み続ける姿を放っておけず、ついつい手を貸してしまったのが始まりです。
そんな彼女が今や七階位……七階位のリーリアさんは、お尻を拭われたらどんな声を出すのでしょうか?
「それじゃぁフィオ? 私達は行くわね?」
「ふふ……おさらばえ、フィオ坊」
「はい、そちらはお任せします。カリンさん、キリリスさん」
「期待していて頂戴。《転移》」
「フィオ坊? 先の続きは――んぅ⁉︎」
「……今はこれでお許しください。私も待ち遠しいのです」
「ふっ……ふふ、遂にわちきも初めてを――」
「ええい、早く行け! カリン様を待たせるな!」
「んもぅ……《転移》」
「ちっ……オレ達も行くぞ、ご主人様」
「少々お待ちを。【停止解除】」
カリンさんがいなくなった事で血の檻が、キリリスさんがいなくなった事で領域が消えました。
更に私が【時間停止】を解除して……元通りですね?介入部には傷一つありません。
しかし、もっと激戦になるかと思っていたのですが……まさか魔眼への耐性を獲得しただけで終わってしまうとは……今回は良い方へ転びましたね。
「もう危険な綱渡りはやめてくれ……カリン様の計画通りに進めればいいんだ」
「今回は突発的な事故の様なものですから」
「未然に防げただろう? 誘発させる様な真似はよせと言っているんだ」
「じゃがキリリスが仲間になったのは大きぞ? これで多少は大胆な事もできよう」
「そうですね……『特派』が味方になった様なものですから」
「……カリン様。ニール様を残したのは采配ミスではないでしょうか? オレの負担が増しているのですが……」
ウルは心配性ですね? 仮にフェリス姉さんの逆鱗に触れても、いざとなったら私が何とかしますよ。一度だけなら何とか誤魔化せる――といいなぁ……という秘策がありますから。
あまり使いたくは無いのですが、姉さんは聖力お化け……能力でどうこう出来る存在ではありません。故に感情に訴えかけるしか無いのです……
「『お姉ちゃん、許して?』か……」
「一度くらいなら誤魔化せそうではありませんか? 姉さんは私に甘いですし」
「いや、その見た目で甘えられてもな……」
「ふふ、誰がこのままだと言いましたか? こうするのです……【退行】」
「……ご主人様は本当に何でもできるな」
「何じゃ? 一体何を――あるじっ⁉︎」
「ふぅ……ご覧ください。この姿こそ対姉さん用の秘策、『フィオドールくん7歳』です」
私の予測では姉さんは間違いなく年下好き……しかもショタコンです。よってこの姿の私を前にすれば思考が止まり、立場が逆転することでしょう。
そこですかさず『お姉ちゃん、許して?』を発動。全てをうやむやにします。
「どうです? 完璧な作戦でしょ――うっ?」
「か、可愛いのじゃ〜! ワシの事も『お姉ちゃん』と呼ぶのじゃ!」
《離してくださいニールさん。今、息が出来ていません》
「……ニール様。ご主人様が困っています」
「むっ、すまんのう……これでどうじゃ?」
「抱えられても困るのですが……しかし、胸枕は悪くありません」
「ふふっ、そうじゃろう? よし……このまま向かうぞ!」
「狐の次は子供の姿か……干渉局に七不思議ができるな」
この姿ならフェリス姉さんの襲撃も怖くありません。安全策ですよ?ウル。
リーリアさんの母性、又はお姉さん属性を刺激する可能性もあります。ニールさんの好みにハマってしまうのは予想外でしたが……今は胸枕を楽しむとしましょう。




