干渉局:観測課
「ここが観測課だな?」
「はい! ウルさん。探索課で見つけた異世界を、ここで観測しているんです」
「と言っても異世界を外側から眺めているだけですからね。あんまり面白くないですよ? フィオドール様」
「観測も大切な仕事ですよ、ニンクさん。一応見て回りましょう」
「フィオドール様がそう言うのでしたら……」
私は異世界の観測が嫌いではありません。
あの世界を外側から見たときの全能感……まるで、自分が神にでもなったかの様な感覚に陥ってしまいます。
それに女性の入浴シーンも覗き放題ですからね。それはもう入念に観測しませんと……
「ねぇフィオ兄さん? こんなに部署を分ける必要ないと思わない? あれ見てよ……暇そうにしてる天使がいるんだ」
「ふむ? サボっている訳では無いのでしょうか? 要領が良くて、他の方より早く仕事が終わってしまったとか」
「その……現状、介入の補佐を除いて仕事が無いんです。最近は新しい異世界も見つかっていませんので」
「ちなみに、私とセリーもここへ所属していますよ! フィオドール様!」
なるほど……クレフスさんの言う事にも一理ありますね。
忙しい部署に観測課の天使を回せば良いのでは無いでしょうか? 細かく指示を出さなくても、ある程度は天使達の自由意志に任せてしまえば……
「ここへは非常時に対応する者を残して、ほとんどの局員は他の部署へ派遣されています。主に探索課へ……ですが」
「暇そうなのは非常時に対応する為の局員か」
「はい、ウルさん。誰も残さない訳にはいきませんので……彼女に話を聞いてみますか?」
「どうする? ご主人様」
「聞きましょう。交流は大事ですからね」
「では、私が声を掛けてきますね? フィオドール様はこちらで……ニンク! 椅子! 椅子持ってきて!」
「椅子かい? それなら僕が出せるよ」
「あ、ありがとうございます。クレフス様……すぐに呼んできます!」
探索課では……ツツキさんでしたか? 彼女と話をしましたからね。観測課でも局員と話して親睦を深めておきましょう。
私に限ってあり得ないとは思いますが……クレフスさんの様に局員の名前も覚えていない、ではいざという時に困りますからね。
《感心だ。ご主人様……見直したぞ》
《そうでしょうとも。カリンさん程ではありませんが、私も先の事を考えているのですよ》
《……その先は言わなくていいぞ。嫌な予感がする》
《肌を重ねた相手の名前が分からないと、楽しみが減ってしまいますからね》
《いいと言っただろう⁉︎ オレがせっかく感心したのに!》
「フィオドール様? ここはニンクが椅子になる……というのはいかがでしょう?」
「……は?」
「君の名前は覚えられそうだよ。天使にしてはぶっ飛んでるね?」
「魅力的な提案ですが……逆はいかがですか?」
「お、おいご主人様⁉︎」
「逆……私が、フィオドール様の上に?」
「フィオ兄さん? ここは天界だよ? 過激なのはまずいって……」
「そうだぞご主人様! 狐が……『特派』が来る!」
それがどうしたと言うのです? キリリスさんも混ざれば良いではありませんか。
天界の風紀を取り締まると言いますが、私が『特派』にいた時は一度もそんな理由で出動しませんでした。
それどころか、屯所に設置されていた『異常を知らせる鐘』なんて一度も鳴っていません。
つまり、建前に過ぎないのです。私が椅子になったくらいで出動していたら『特派』は大忙しですよ。
《風紀を乱すの者はご主人様しかいない! 自分がしでかした事で出動する訳ないだろう⁉︎》
「さぁ……お乗りくださいニンクさん」
「ほ、本当にいいんですか? ……なんかゾクゾクします」
「これ止めなかったら共犯扱いになるのかな? でも僕じゃフィオ兄さんを止められないし……乗る方を止めればいいんだね」
「ニンクさん、失礼します」
「へっ?……きゃ⁉︎」
クレフスさんの動きが不穏でしたので、私から滑り込ませていただきました。
背中越しに伝わる柔らかい感触……それでいてしっかりと弾力のある良いお尻です。ニンクさん、見た目とは裏腹に肉厚な臀部をお持ちなのですね?
私好みで非常にそそられます。このまま案内していただけないでしょうか?
「ふふ……わちきの領域は彼方でございんす」
「……でっか」
「ご主人様から降りろ。狐」
「やっぱ速いねー? 僕でも見えなかったよ」
「ふむ……私に乗っているのは、ニンクさんではありませんね?」
チリン――
「ふふ……『特派の鐘』が鳴りんしたよ? フィオ坊?」
「これはキリリスさん……良いお尻をお持ちですね?」
まさかキリリスさんの椅子になれる日が来ようとは……前々から思っていたのです『あの尻に敷かれたい』と……
やはり私の目に狂いはありませんでした。着物の上からでも大きさが分かるほど、主張の激しいお尻でしたからね? この感触にも納得がいきます。
次は胸……あの胸に触れたいのですが……ウル、考えなさい。どうしたらキリリスさんの胸に触れられますか?
「フィオドール様、今戻りまし――たぁああ⁉︎ ど、どういう状況なんですか⁉︎ これ……」
「ちっ……降りろと言っている!《影鞭》!」
「影が……フィオ坊、避けておくんなし?」
「お任せください。落ちない様お気を付けて」
「す、すごい……流石フィオ兄さん! まるで猟犬の様な身のこなしだよ!」
「いいなぁ……私もフィオドール様に乗りたかった」
「……何これ〜?」
おや? そちらにいる緑髪の女性は……ああ、セリーさんが呼んできた天使ですね?
申し訳ありません。お話を聞くという件でしたが、今はこの感触を一秒でも長く味わっていたいので……このままでもよろしければお話しください。
――っと、ウル。そろそろ影の鞭は止めて貰えませんか? これでは話を聞けませんよ?




