干渉局 副局長
「さて、【黄昏】とはどんな能力なのか……説明して貰うぞクレフス」
「……やだ」
「流石は六階位だな? あれだけ喚いてまだ不完全燃焼か……続きをしよう」
「や、やめてよウル! 冗談だから! ちゃんと説明するさ!」
「私も気になりますね。ここは何処なのです?」
「……ここは『黄昏時』と言って、僕個人の所有する時空だよ。フィオ兄さん」
クレフスさんの所有する時空……ここは天界では無いという事ですか。
それでは探しても見つかる訳がないですね……探知系の能力が効かなかった理由が分かりました。
「と言っても、僕が勝手に主張しているだけなんだけどね! この空間には他に誰もいないし!」
「自分だけの時空を作り出す能力か……」
「うーん、どちらかと言えばこの時空は副産物かな?メインは『誰そ彼』の方だよ」
「『黄昏』の語源ですね」
「く、詳しいねフィオ兄さん……そうだよ。【黄昏】は『対象を指定して発動する能力』を無力化できるんだ」
自己強化系の天敵ですね……私の【擬態】が解除されたのはそのせいですか。
問題はどこまで適用されるのか、ですが……使役系や召喚系も見方によっては対象を指定していますよね?
「クレフス、どこまで無力化できるんだ?」
「んー、無力化出来るのは一瞬なんだよ。もう一回使われたらまた【黄昏】を使わなくちゃいけないんだけど……」
「いや、そうじゃなくてな……強化系だけか?」
「ん? そんなの捉え方次第で何でも無力化できるよ。僕を対象にする能力はもちろん、例えば【炎域】だって空間を対象に指定しているよね?」
「なるほど……強力だな」
「ただ、自分に被害が及ぶ前に発動しなくちゃいけないからね。速さで劣ってたり、奇襲されると弱いかな」
「ほう? それは良いことを聞いた」
「ふっ……ウルじゃ無理だよ。僕は速度特化だからね! 狼さんじゃ追い付けないかなー?」
「……せいぜい寝首をかかれない様、気を付けるんだな」
「奇襲するつもり? 六階位の僕が対策をしていないとでも?」
七階位のリーリアさんは奇襲で討たれそうになっていた訳ですが……
そういえば、クレフスさんは干渉局で何をしているのでしょう? やはり介入部に所属しているのでしょうか?
「クレフスさん、干渉局ではどこに所属しているのですか?」
「僕かい? 僕は副局長をやってるよ! フィオ兄さんこそ、どうして干渉局にいたのさ?」
「この度『局長補佐』として干渉局に復帰いたしまして……」
「嘘⁉︎ フィオ兄さん干渉局に復帰したの⁉︎」
「何で副局長がそんな事も知らないんだ……」
クレフスさんが副局長ですか……出世しましたね。私のいた頃は『局長』と『その他』しか存在しませんでしたから、副局長がどのくらい偉いのかは分かりませんが。
……あの時干渉局に居た天使達は元気でやっているでしょうか?
「リーリア局長が優秀過ぎるんだよ。お陰で僕はずっと暇さ」
「リーリアは天使が足りないと嘆いていたぞ」
「えぇ? じゃぁ何で僕に仕事が回ってこないのさ?」
「……そういう事なんだろう」
「うーん?」
「クレフスさん、私が現役だった頃の局員は元気にしていますか?」
「ん? ……もちろん! 何人かは『特派』に流れたけど、ほとんどは介入部に居ると思うよ!」
「そうですか……まだ干渉局に居るのですね」
「『特派』だと? どんな奴だ?」
「僕が覚えてる訳ないじゃん。ああ、『特派』のキリリス様だけは覚えてるよ?」
「それは一番忘れていい人物だ」
「何でさ? キリリス様は僕と同じ時空に生きてるよ?」
「……お前、同僚の事はちゃんと覚えているのか?」
「これでも副局長だからね? 頑張って覚えたよ。干渉局には六十二人の局員がいるんだ。あれ?……二十六人だっけ?」
「ご主人様、副局長の座が空いている様だ」
「うん? 副局長は僕だよ?」
「六十人もいるのですか?」
「えっ、いないのかな?」
「リーリア……頑張っていたんだな」
副局長とはどんな仕事をしているのでしょうか? クレフスさんは実戦向きですから、介入部の方が向いている気がしますが……
魔界介入事件の時にも居ませんでしたね。クレフスさんなら【帝王】との相性も良かったというのに、どこで何をして――
「あれ? フィオ兄さんが干渉局に復帰したのは分かったけど、探索課で何してたの?」
「私達はニンクさんとセリーさん――局員に案内をして貰っていたのですよ」
「そうなんだ……早く戻らなくていいの?」
「今はご主人様が時間を止めているからな。焦る必要は無い」
「ここの時間は常に止まってるけど、僕は向こうで【黄昏】を使ってるから……」
「……【時間停止】も解除されてるのか?」
「……多分?」
「戻るぞ! ご主人様!」
「まだお二人が居てくれると良いのですが……」
「あ、僕も行くよ! どうせやる事ないし!」
***
「あ、戻ってきたよ? セリー」
「ああっ! 良かった――ってクレフス様⁉︎」
「うん? 誰だい? 君達」
「……やはり覚えていないじゃないか」
「申し訳ありません。時間を止めて用事を済ませていました……」
「フィオドール様! その用事とウル様が裸になっていた事は関係があるんですか?」
「ちょ、ちょっとニンク!」
「……あります」
「私もその“用事”がしたいです!」
「すごい好奇心の強い天使だね? ウルは死にかけたっていうのに」
「そんなに激しく⁉︎」
「していない! クレフスも余計な事は言わなくていい!」
「ウ、ウルさん? その……どんな感じでしたか? 痛くはないんですか?」
「セリー……お前もなのか」
セリーさんも興味がおありですか? これは休憩室への案内が楽しみになってきましたね。
確かお二人とも三階位のはず……手を出しても問題ないのでは?
「あの……フィオドール様のサイズとか……」
「お、落ち着くんだセリー! 正気に戻れ!」
「死ぬほど気持ちよかったんですかウル様⁉︎」
「ええい、ニンクも喧しいぞ!」
「んー? こんな子たち干渉局にいたかなぁ?」
「ふむ、クレフスさんはご存知ないのですか?」
「これだけキャラが濃かったら顔くらいは覚えてそうなんだけどね?」
「し、失礼しましたクレフス様!『ケイレムが天位三階位、セリー』です!」
「同じく『ケイレムが天位三階位、ニンク』です」
「『ケイレムが天位六階位、【黄昏】のクレフス』だよ。会ったことあるっけ?」
「しょ、初対面でございます! クレフス様!」
「同じく、私もです」
「……どういう事だ?」
私の推測ですが……クレフスさんは『黄昏時』に篭る時、こちらの時間を止めていないのではないでしょうか?
私ならば【時間停止】との併用も可能ですが【黄昏】は燃費の悪い能力ですからね。彼女の時空である『黄昏時』は常に時間が止まっていて、天界では時が流れている。
こうした理由からすれ違いが起きているのでは?
「なるほど……クレフスが悪いな」
「僕かい? 確かに最近は干渉局に来ていなかったからね」
「えっと、私達もつい最近ここへ来ましたので……」
「はぁ……後輩にフォローされてどうするんだ」
「そうだね、お礼にウルが何をされたか話してあげるよ」
「「本当ですか⁉︎」」
「お前が何をされたのかも話していいんだぞ? クレフス」
「……さて、干渉局の案内だったね? 僕に任せてよ!」
「えっ……ウルさんだけじゃないんですか⁉︎」
「二人一緒にですか⁉︎ それとも別々ですか⁉︎」
「別々ですね」
「フィオドール様詳しく! 詳しくお願いします!」
「フィオドール様! ニンクは何人とでも大丈夫です!」
「まずい……ウ、ウル! 次はどこへ案内したらいいんだい⁉︎」
「分からん! ここが最初で……危険度がどうのと言っていたぞ?」
「探索課からだから……低い順だね⁉︎ ほらフィオ兄さん! 次は観測課だよ!」
「よし、行くぞご主人様! 黙々と進むんだ!」
「おっと……そんなに強く手を引かずとも付いて行きますよ? ウル、クレフスさん」
「あ、待ってください! フィオドール様!」
「休憩室! 休憩室で実演をお願いします!」
両手を引かれては歩きにくいのですが……ウルと手を繋ぐのも新鮮ですから、観測課までこのまま行きましょうか。
しかし、クレフスさんが加わって女性が四人……休憩室のベッドは足りるでしょうか?




