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女神と忠犬




「おかえりなさい。遅いわよ? フィオドール。もう一人で済ませてしまったじゃない」


「申し訳ありません。カリンさん」



 第一使徒カリン。

 私の使徒の中で最も長く同じ時間を過ごし、最も頼りになる私の右腕です。

 いつ見ても傷一つない玉の肌、それを引き立たせる赤暗い髪、そして――



「まあいいわ。それより()()()()を使ってしまったから、後で補充させて頂戴ね?」



 カリンさんがこちらに向き直り、()()()を象徴する真っ赤な瞳で見つめてきます。

 天使になるとこういった種族の特徴は薄れてしまうのですが、使徒は違うんですよね。



「……この前補充したばかりだったのでは無いでしょうか?」


「ニールの匂いのするベッドを使うのは嫌だもの。遠慮なく使ったわよ」



 確かに。よく見ればベッドの上だけでなく、あちこち血が飛び散っていますね?

 それにしても、前回補充した分よりは随分と少ない様に見えます……ふむ。



「カリンさん、飲みましたか?」


「赤い方は飲んだわ? でも()()()はまだね。そして、都合の良いことにここは寝室だわ?」



 なるほど、誘い込まれたという訳ですか。

 しかし、詰めが甘いですねカリンさん……こちらにはウルがいるのです。



《出て来て下さい、ウル》



 ……? ウル? ほら、二人で責め立てますよ?

 カリンさんを好きにする機会です、早く出て来なさい。



「ウルならさっき貴方の影から出て行ったわよ? とっても悪い顔をしていたわ?」


「なん――」


「そして、これで詰みよ」



 今まで隠していたのでしょう、ベッドの下から大量の血液が広がっていきます。


 完成したのは血の檻。

 ご丁寧に様々な結界まで張り巡らされて――これを破るには私でも多少の時間が掛かるでしょう、見事なものです。



「フィオドール。ううん……フィオ? もう我慢できないわ? 二回分、二回分だからね?」



 ど、どちらを二回分でしょうか? 血の方だと流石に私も倒れてしまうのですが――






***






「はぁ……また私の美しさに磨きがかかってしまいましたね」


「相変わらず気持ち悪いな。お――ご主人様は」



 外へ出て涼んでいたら、私の下半身から声が聞こえました。

 まさか……先程まで酷使していたフィオさん(我が聖槍)がついに喋っ――



「違うッ! そんなモノとオレを間違うんじゃない!」


「はぁ……ご主人様を放って逃げた忠犬(ウル)ですか」



 ただの第三使徒――ウルでした。

 いつの間に戻っていたんでしょうか? 私が感知出来ないとは……

 結構凄い事なのですが、何故か褒めたく無いですね? 黙っていましょう。



「犬じゃない! オレは『狼』だッ!」



 そう言い放ち、ウルが影から飛び出して来ました。

 深い紺色の髪に、琥珀色の瞳。

 全身を黒装束に身を包んだ……狼の獣人です。


 あの黒装束は以前行った異世界で見た……そう、『くノ一』衣装です。

 あれを初めて見た時は震えました。見せないことで引き立つ美しさがあるとは……まあ、ウルは肌を露出させているのですが。



「おい、聞いているのか? 狼だぞ狼。獣人族で最も誇り高い種族なんだからな?」


「それは……ニールさんの前で同じ事が言えますか?」


「……」



 言えないでしょうね……ええ、何を隠そうこの忠犬、ニールさんの元臣下です。

 今では同じ使徒として肩を並べていますが、この様子だと未だに力関係は変わっていないみたいですね?



「カ、カリン様はどうしたのだ?」



 明らかに話を逸らして来ましたね? そしてカリンさんにも様付けです。

 ニールさんを使徒にしようとした際、思いきり力の差を見せつけられていましたからね……無理もないでしょう。



「カリンさんなら寝ていますよ。私の血を飲んでいましたから」


「……またアレか」



 カリンさん、吸血鬼として若い時に使徒になったせいか、未だに『吸血酔い』になってしまうんですよね……酔っている姿も可愛いんですが。



「それで、誇り高い狼さんは私に何用でしょうか?」


「ふん、おま――ご主人様の計画があまりに杜撰だったからな、オレが知恵を貸してやろうと思っただけだ」


「えぇ……」


「『えぇ』とはなんだ『えぇ』とは! 言っておくが、お――ええい! ご主人様だけの計画ならこんな事言わないんだからな⁉︎ ニール様の計画でもあるから手助けしているんだ!」



 ふむ……勢いで難色を示してしまいましたが、悪い話ではないかもしれません。

 これでもニールさんの話では臣下時代、八面六臂の大活躍だったらしいですし……


 よし、脳内フィオドール達、集合、着席して下さい。

 今回の議題は『ウルに計画を見直してもらうか否か』です。

 見直して貰うべきだと思う方は白の、見直して貰う必要が無いと思う方は赤のフィオくん像を目の前に置いてください。


 ふむ……白、白、白、白が多い……おや? 赤の方も居ますね。

 理由を聞いても? ……『すぐに分かる』ですか?


 なるほど、私の知覚領域にも反応がありました。



「フィオドール様! フィオドール様はいらっしゃいませんか⁉︎」



 白のフィオくん像、没収です。計画を進める前に一波乱ありそうですね……

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