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干渉局:探索課




「や、やっと着きました……ここが探索課です!」


「……静かだな。誰もいないのか?」


「ここは面白くないですよ? フィオドール様ぁ……」


「ふむ、全員が異世界探索に出ているのですか?」



「そうですね。天使の数が足りないので……仕方なく」



 案内された『探索課』は静寂に包まれていました。

 大部屋の中は局員用の机が並べられ、椅子も設置されていますが天使の姿は見受けられません。

 普段なら美しい女性たちが華やかな雰囲気を醸し出しているのでしょうが……



「えっと、探索用の部屋は隣です……ここですね。開けます」


「……おお」


「暗くて、青い光が幻想的ですよね? ニンクはここでも構いませんよ⁉︎ フィオドール様!」


「私の居た頃より、設備が充実していますね?」



 部屋は全体的に薄暗く、ニンクさんの言った通り……青い光でぼんやりと照らされていますね。

 そしてここには天使たちの姿が……ゆったりと背中を預けられる椅子に座り、まるで眠っているかの様に目を閉じています。

 今、正に探索中なのでしょう。つまり彼女たちは無意識……ふっ、私の前でそんな姿を晒して、無事でいられると思わないことです。



「はい。探索中は長時間肉体を放置することになってしまいますので、天使達の負荷を軽減する工夫が為されています」


「座り心地の良さそうな椅子だな」


「あの椅子はすごいんですよ? ウルさん。定期的に体の聖力を循環させてくれるので、探索後の方が体が軽いくらいなんです」


「聖力か……オレ達使徒には分からない感覚だな」


「あぅ……そ、そうでした。申し訳ありません」


「フィオドール様? 私、歩き疲れて足が……マッサージして欲しいです」


「それは大変ですね? まだ案内して貰わねば困りますので、ここは僭越ながら私が……」


《ご主人様、奥で天使が一人……動いている。誰か探索から戻った様だ》



 困りました……私の腕は二本しかありません。ウルは影だから数えないにしても、これ以上花が増えては抱えきれなくなってしまいます。

 上……ですかね? 私の上に乗ってもらうという選択肢がありました。

 そこの椅子以上の乗り心地を確約します。遠慮することはありませんよ? さぁ、私の上に跨ってください……



「ふわぁ……ダメだー。全然見つからない。頭おかしくなりそ……う?」


「……お疲れ様です。貴女のフィオドールですよ」


「……っ!……っ⁉︎」


《もう少し言葉を選らべなかったのか? 完全に混乱してるぞ》


「ふむ……お迎えにあがりました。お嬢様?」


「……私、死んじゃったんだ」


「お望みとあらば、私は貴女を根の国までお迎えにあがりますよ」


「……っ! わ、私を連れ去ってくださいフィオドール様!」


「【削減】!」


「あっ……ぶねぇな⁉︎ おいニンク! 何して……あ」


「芝居が過ぎるんじゃないかなー? ツツキさん?」



 ふむ……ツツキさんと呼ばれた天使のことも気になりますが、ニンクさんの能力は【削減】ですか。

 手で触れようとした所を見るに、身体的接触が無いと能力を発動できないのでしょう……上位に【削減の聖眼】がありますから、獲得まで頑張って欲しいですね。



《いや……このニンクとやら、躊躇いなく聖結晶を狙ったぞ? 観察している場合じゃ無いだろ》


「ニンク! 何してるの⁉︎ フィオドール様の前で!」


「いやセリー……この泥棒猫がフィオドール様を盗ろうとしたから」


「あぁ……もう! 申し訳ありません、フィオドール様。お見苦しいところを……ウルさんも」


「いえいえ、構いませんよ? 私も当たりそうなら止めていましたから」


「……らしい。ご主人様が気にしていないのならオレも気にしない」


「うぅ……ありがとうございます! ほら、ニンク次行くよ!」


「ちぇっ……覚えといてねツツキ」


「こ、怖すぎんだけどニンク……ってか何してるの?」


「んー? 私とセリーはねぇ……フィオドール様の案内をしてるんだよ! 休憩室への案内をね!」


「なっ⁉︎」


「違うから! 干渉局の案内だから! ツツキさん騙されないで⁉︎」



 間違っていませんよ? セリーさん。私が干渉局を見て回っているのは休憩室を探す為……

 そこでニンクさんと親しくなるのが主目的ですので、お忘れなく。



《絶対に言うんじゃないぞ? 口に出した瞬間、お前の影から物を取り出す》


《……私の最悪の予想では、フェリス姉さんが飛んで来ます》


《お、恐ろしいことを言うな! 本当にそうなったらどうするつもりだ⁉︎》


《一歩間違えれば干渉局が消滅してしまいますので、事前に声を掛けてからにしてください》


《……分かった。一声掛けてから取り出す》



「では……間違っていませんよセリーさ――」


「【影縫い】!」


「くっ」


「行くぞ! セリー、急げ!」


「うぇ⁉︎ ウ、ウルさん⁉︎ わ、分かりました!……それではツツキさん、私達はこれで!」


「お、おう……私も付いて行っても――」


「【削げ――」


「ニンク!」


「……むぅ」


「や、やっぱりいいわ……その、疲れてるし? あはは……」



 やりますね? ウル……私は【影縫い】の耐性を持っています。その上で私の動きを止める事ができるとは……その能力、昇華していますね?



「っ……急げセリー! これ以上は――」


「時間切れです……【時間停止】」






***






「さて、ウル? 何か言うことはありますか?」


「……不意打ちは狡いと思う。あれでは一声掛ける暇なんて無かった」


「本当に影から物を取り出す気なんて、ウルには無かったでしょう?」


「……そうだな。その通りだ」


「貴女はいつだって私の事を考えてくれている。私の不利益になる様なことはしませんから」


「っ……ご、ご主人様」


「ウル? 私から貴女へ感謝を込めて……優しくしてあげますね?」


「オレは、オレをきちんと理解してくれるご主人様が……大好――」



「あれれ? 僕、時間止めたっけ? 無意識とか困ったなぁ……」



「――きっ⁉︎」


「おやおや……」



 これまた懐かしい声が聞こえて来ましたね……まだ干渉局に居たんですか?

 私の【時間停止】中に平然と動ける天使、彼女も時空系統の使い手ですが……また腕を上げた様ですね。

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