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干渉局の過去と今




「どうぞ、お好きな所にお掛けください」


「ありがとうございます。リーリアさんもどうぞ、私の上に――」


「さて! 現在の干渉局についてだったな⁉︎」


「は、はい……まずはこちらをご覧ください」


「ふむ……天界の組織図ですね?」



―――――――――――――――――――――

天界ケイレム 組織図【簡略版】


天界総括官 (シクティス・エイリーン)

特殊即応派遣官『特派』(キリリス)

人事局・干渉局・法務局・大戦局……


―――――――――――――――――――――



《『特派』か……忌々しい。特に狐が邪魔だ》


「私は『特派』にも居ましたが、何事もなく暇だったので辞任しましたね」



 ウルは諜報活動をする際に『特派』としのぎを削っていますから、嫌うのも仕方ありませんか。キリリスさんの方は私情の可能性が高いですが……


 特殊即応派遣官……名前の響きこそ良いのですが、この天界で各局の手に負えない事件など非常に稀です。

 包み隠さず言ってしまえば、割り振り切れない過剰戦力の溜まり場ですからね。




「え゛……す、すごいですフィオ先輩! 『特派』なんて極一部の天使にしかなれないのに……」


「七階位に比べたら凄くはありませんよ? リーリアさん。我々は組織を超越している事をお忘れなく」


「あ、はい……でも、私なんか足を引っ張ってばかりで……」


「リーリアさん。私は貴女の様に親しみやすい方が七階位に居て助かっています。それに、リーリアさんだって七階位に相応しい実力は持っているのですから……ご自分を卑下しないでください」


「フィ、フィオ先輩……」


「リーリアさん……」


「わ、私……私も! フィオ先輩みたいな優しい方が七階位にいてくれて! その……嬉しいです」


《影に潜ってもいいか? ここの空気が甘すぎて、息ができないんだ》



 何を言っているのですか? ウル……貴女も私の使徒なのですから、ここに寝殿の一つや二つを築くくらいの補佐をお願いします。


 他二人のメイドには難しいですが、ウーナさんならばやってくれるでしょう。



《あの常識外れの変態メイドと比べないでくれ……寝殿は無理だが、ベッドは影の中にあるぞ》


《私の影の中にある家具……外へ出しても平気なのでしょうか?》


《……やってみるか? 影の主人が姿を現わすかもしれん》



「……はっ! えっと、こちらが干渉局内の組織図になります」



 リーリアさんが正気に戻ってしまいましたか……ウルが早く用意しないからですよ? 次から甘い空気を感じたら、即座にベッドを召喚するのです。



「無茶を言うな……」


「む、無茶ですか?」


「こちらの話です。拝見しても?」


「あ、はい……どうぞ!」



―――――――――――――――――――――

異世界干渉局 組織図


干渉局・局長 (リーリア)

副局長

|\

| 介入部

交渉課・観測課・探索課


―――――――――――――――――――――



「介入部……ですか。新しくできた部署ですね?」



 と言いますか、私が居た頃に比べて随分と役割が細分化されていますね。これでは暇な局員も多いのではありませんか?


 私が局長だった頃は――






◇ ◇ ◇






「んお⁉︎ これは……フィオドール様! やばそうな異世界を見つけました!」


「ふふ……この私にお任せください。五分――いえ、三分で戻ります」


「か……かっけー! フィオドール様超かっけー!」


「いえいえ……おや? すぐ近くに別の異世界もあるではありませんか」


「え? ……あ、本当ですね。まぁこっちは誰か適当にやらせときますよ」



「なになに? 異世界見つけたの? 私が行く! 最近、観測ばっかでつまんないし!」


「えー⁉︎ 私なんかまだ七回しか介入してないんだよ? 私に行かせて!」


「残念……もう僕は介入態勢さ! 行ってきまーす!」


「あぁ⁉︎ ぐぬぬ……つ、次こそは私が――」






◇ ◇ ◇






 ふむ、特に問題なく機能していたと思うのですが……やはり局長が変わると組織のあり方も変わるのでしょうね。



「は、はい。以前は局員全てが介入していたらしいのですが……殉職率も高く、本来は介入の必要がない異世界にまで介入していたらしくて――」



《……身に覚えがあるな? ご主人様?》


《私のいた頃は殉職者を一人も出していません。確かに不要な介入はあったかもしれませんが》



 そもそも私は観測を信用していませんので……世界を表からなぞっただけで、その本質が分かる訳ないでしょう?


 いいですか? 私が滅ぼした三十五の異世界はどれも表面上は無害を装っていました。それを介入した私が見抜き、私対世界の世紀末戦争へ突入……結果、異世界が消滅したのです。



《……は? “滅ぼした三十五の異世界”?》



「――異世界の混乱と天使達の消滅を避ける為、事前調査を徹底する体制になったそうです」


「そうだったのですか……私が復帰したからには、殉職者なんて一人も出しません。安心してくださいね?」


「ありがとうございます! フィオ先輩……魔界介入事件のせいで干渉局は天使不足だったので、すっごく助かります!」


「良いのです。他の天使達を守る為、矢面に立つのが私の本望なのですから」


「フィ、フィオ先輩……」


「リーリアさん……」



《カリン様ー! ご主人様が……ご主人様が複数の異世界を滅ぼしていました! 三十五も!》


《うるさいわよ? ウル。まだ二桁じゃないの……三桁になったら祝うから教えなさいね?》


《……ち、違う。オレの期待していた反応じゃない……こんな事がバレたら――ん? どうしてバレてないんだ?》



 ウル? そんな事は考えてなくていいので、早くベッドを出しなさい。

 リーリアさんがそわそわしていますよ?あれはどこで初めてを迎えようか迷っている仕草です。


 私の座る革張りのソファー? それとも局長用の大きめの机? いっそ深紅の絨毯へ横になってもいいですね……



コンコン――



「失礼します。盗聴術式を――」


「ち、違うでしょニンク! ……フィオドール様をお迎えにあがりました!」



「……はっ! どうぞ、入ってください。フィオ先輩? 実際に干渉局を見て貰った方が分かりやすいと思うので、案内を頼んだのですが……よろしかったですか?」


「はい、ありがとうございます。リーリアさん……続きはまた後で」


「つ、続き⁉︎ 続きって……何へ続くんですか⁉︎」



 もちろんナニへと続く訳ですが……美女二人の案内も捨てがたいので、今はお預けです。ほら、ウルも唸ってないで行きますよ?


 ニンクさんにセリーさん……『両手に花』というものですね。



《ご主人様? 腕の数が足りない様だが……増やすのか?》


《私の黄金比を崩すくらいなら、花の数を減らします》


《ほう……誰が減ったのだ? 慎重に答えるといい》


《ウル……貴女は私の影。つまり、私とは一心同体なのです。私の黄金比には貴女も含まれているのですよ?》



「おい、あまり二人を待たせるな。行くぞご主人様……何かあってもお前の『影』が守ってやる」



 私は守られるほど弱くないのですが……まぁいいでしょう。またウルに拗ねられても困りますからね……

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