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見えない仕込み




《そもそも、ここは何処なの? フィオドール》


《何でも、天界に新しく用意された七階位用の領域らしいですよ》



 私は今、肩に紅色の蝶を留め……影に足を侵食されながらも天界を歩いていました。

 やはり謝罪をする時は自らの足で出向かねばなりません。と言っても、自分の領域に帰るだけなのですが……



《新しい七階位って言うと、【裁雷(さいらい)】のリーリア?》



 【裁雷】のリーリア。過去最短で七階位に至った、天界きっての神童と噂されています。

 本人は『全然! 全然神童とかじゃないですから!』と否定していましたが……

 大魔王を倒して七階位へ昇格している以上、噂されるだけの事はあるのでしょう。


 【裁雷】というのは実力を認められた者が名乗れる『渾名』です。

 勿論、私も持っています。脳内のミニフィオくん達が【最強】という札を掲げていますね。

 ふふ、まだ最強ではありませんよ? ……まだ、ですが。



《綺麗な花畑のある丘で、蝶も舞っていましたよ》


《素晴らしいわ。後で絶対一緒に行くわよ? フィオドール》



 ええ、ついでにリーリアさんにも会いに行きましょう。

 そして花畑で押し倒しましょう。

 私は彼女の教育係もやっていましたからね……最短で七階位になれたのも私のお陰。

 七階位の中でも、ハーレム入り最有力候補です。



《ええ、それでそろそろ……ウルに影を解く様、頼んで貰ってもいいでしょうか? 逃げませんので》



 もう耐性を獲得しましたので、足は動くのですが……影を引きずって歩くのは不審に思われてしまいます。


 ほら、私の知覚領域が他の天使を捉えました。このままでは無様な姿を――無様? 私がですか?

 いいえ、影を引きずっていても私の魅力が損なわれる事はあり得ません。


 客観的に見てみましょう。

 長く美しい金色の髪、透き通る様な白い肌……そしてここぞの場面で覗く碧眼。

 ここに影が混ざった所で、何の問題がありましょうか?

 ウル、もっと侵食して来なさい。ああ顔はやめて下さいね? 顔以外、顔以外の全てを影に包んでも構いません。



《そうね。ウル、もういいわよ? ご苦労様》


「……逃げるなよ?」


「大丈夫です。逃げませんよ」



 ああ、影が……私の魅力を証明する機会が――まあ幾らでもありますね、そんな機会。


 おっと、そろそろ知覚領域に引っ掛かった天使達が見えてくる頃ですね? 身嗜みを整えなくては。

 髪は――大丈夫、枝毛もありません。服に汚れも無い、いつも通りの真っ白なローブです。

 目は閉じて、口角を上げて……完成です。



「見て! フィオドール様よ」


「え……本当だわ。こんな所でお会い出来るなんて」



 声を掛けるには少し遠いですね。胸の聖結晶を見るに……中位天使ですか。

 名前――名前は? 誰でしょう?



《セリーとニンクよ。どちらも天位三階位、天界統治の手伝いが主な仕事ね》



 そうでした。セリーさんとニンクさん。

 聖結晶の輝きを見れば、凡その階位は分かるのですが……上位になる程、乳白色が濃く現れますからね。



《声を掛けてみたら?あの二人は貴方のファンよ》


《よろしいのですか?》


《よろしいのよ?もう仕込みは済んでるわ》



 ふむ……カリンさんがそう言うのであれば――



「こんにちは。セリーさん、ニンクさん」


「「ッ⁉︎」」



 私が声を掛けた瞬間、二人は慌てて片膝をつき、聖結晶に両手を添え――天界の最敬礼ですね。

 今までは通りすがりに声を掛けた事なんてありませんし、驚かれて当然でしょう。

 話し掛けようとしても、カリンさんの『ダメよ』で終わっていましたから……



「フィ、フィオドール様。私達に何か御用でしょうか?」


「それとも何かご不快でしたでしょうか? こ、この子は悪くないんです! もし罰を下すのでしたら、私へ!」



 こ、これはどうした事でしょう。ただ一声掛けただけでこの脅え様……

 それに、罰? もし罰を下される者が居るとすれば、こうして胸を盗み見ている私でしょう。

 この最敬礼を考えた者は天才です。

 聖結晶に両手を添えるものですから、胸……胸が……特に右の子が凄いです。


 カリンさん、右の子のお名前を教えて貰えないでしょうか?



《はぁ……右の白髪がセリー。左の黒髪がニンクよ》



 ありがとうございます、私の第一使徒。愛していますよ。



《い、いいのよ? 早く帰って来てちょうだいね?》



「いえいえ、不快になんて思っていません。お二人の事は以前から気にかけていたのです。今までは要らぬ配慮をさせぬ様、声を掛けられませんでしたが……もう大丈夫そうですね」


「あ、ありがとうございます! まさかフィオドール様に目を掛けて頂けていたなんて」


「感激です。私達もフィオドール様の期待に応えられるよう、より一層精進いたします!」



《フィオドール、もう少し踏み込みなさい》



 踏み込む? 私としては右の……セリーさんの谷間に飛び込みたいですね。

 しかし、踏み込んで大丈夫でしょうか? 二人とも私の事を尊敬して下さっている様ですし、余計な事はしない方が――



《今のままじゃ、二人には一生手が届かない高嶺の花よ。だから少しだけ、手が届きそうな場所まで貴方が落ちてあげるの》



 これが天才ですか。いえ、もはや神――女神ですね? ありがとうございます……私の女神。



《い、いいのよ? ところで……貴方のベッドって凄くふかふかよね》



「あの、フィオドール様? やはり何か――」


「ふむ……セリーさん」


「は、はい!」


「最敬礼の手はもう少し、緩めては貰えないでしょうか? 私の目に毒ですので……」


「っ!」



 ああ、見る見るうちに赤面して行きます。

 この反応はどちらでしょうか?羞恥か、激怒か……いえ、私の女神が言ったのです。

 女神の慧眼に間違いなんてあるはずが無いでしょう。



《んっ……あっ……》



 これは……まずいですね? 早く帰らねば私の寝室が使い物にならなくなってしまいます。



「あのっ!」


「ええ、言いたい事は分かります。私がもっと自制できる様な天使であったなら、この様な事は言わずとも済むのですが……申し訳ありません」


「いえっ! その……ありがとうございます」



 ……ふむ? こちらこそありがとうございます。いいものが見れました。

 ここはお返しに私の裸体を――といきたい所なのですが、そうも言っていられません。

 私のベッド、そして寝室が血塗れになってしまいます。



「それでは、私はこれで失礼いたします。これからも共に天へ尽くしましょう」


「はい! 声を掛けて頂き、ありがとうございました!」


「これからもフィオドール様の為に尽くします!」


「ふふっ……では」



 もう猶予はありません、転移です。

 先程まではウルに邪魔されて不可能でしたが、ここ天界では転移ができます。

 まさか、歩く事で誠意を見せようとしたのが仇になるとは思いませんでしたが……



「《転移》」






***






 そして自らの寝室に転移した私が見たものは……


 真っ赤な血に染まったベッドと、その上に力無く横たわる少女の姿でした。


 ……大惨事です。

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