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水精霊は流される




「ねえ? シクティス……貴女はこの後どうするのかしら?」


「ん……天界の統治に戻る」


「契約の話よ?」


「んん⁉︎」



 本当にシクティスさんが水精霊なのですか?

 確かに水系統の聖術を得意とするイメージはありましたが……精霊は普段、実体を持たないはずでは?



《シクティスは天使になって初めて肉体を得たのよ。本人は精霊だった事を隠したがっているみたいだけど》


《それはまた何故でしょう?》


《そうね……理由は色々思い浮かぶけど、本人に聞かないとはっきりしないわ?》


《すまない……ニール様だけでも休ませてくれないか? オレが看ておくから……》



 おっと、そうでしたね。ニールさんは先に送り届けましょうか……よろしくお願いしますね? ウル。



《ああ、ご主人様もちゃんと休むんだぞ?》


「《転送》」



「ん……フィオドールはもう戻っていい」


「そうはいかないわ? フィオがいなきゃ契約出来ないでしょう?」


「カ、カリン……フィオドールが居ないところで話す……」


「あら……他の水精霊に先を越されもいいのかしら?」


「せ、せめて《念話》で!」



 シクティスさんの反応を見る限り、水精霊だったというのは本当の事みたいですね?

 私は長いことこの天界に居ますが、元精霊の天使というのは他に知りません。

 精霊達は契約の時にのみ肉体を生成し、自らの契約者と交わります。まあ性行をする訳ですが……一度でも身体を重ねてしまうと、天使になる事が出来ないのです。


 何でも『純潔を保つこと』が条件らしいのですが……私には関係ありませんでしたからね。


 そして精霊という種族は非常に情熱的です。自分の気に入った者とは積極的に契約しようとしますから……

 私も既に経験させていただきました。彼女達は良かったですね……どの精霊もそれぞれ特徴的でして――



「けど、フィオは精霊達からとても魅力的に見えるらしいわ? あまり水精霊だけを待たせるのも可哀想なの」


「待って! カリン! それ以上は――」


「だったら、シクティス……分かるわね?」



 ……? カリンさんから目配せをいただきました。これは私が何かするべきなのでしょうか? シクティスさんとセッ――契約できるのでしたら何でもしますよ?



「シクティスさん……」


「フィオドール……ダ、ダメ……」



《カリンさん……これはいけるのでは?》


《いいえ、まだ遊べるわ?》



 もしもし? カリンさんの悪い癖が出てませんか? シクティスさんを見てください。

 上気した肌に潤んだ瞳……このまま唇を奪ったとしても受け入れてくれそうな雰囲気を醸し出しています。


 これ以上何をすると言うのですか……



《フィオ? 精霊は本能的に契約者を求めるものなのよ》


《……はい。そうみたいですね?》


《つまり精霊は皆エッチがしたくて仕方ない種族なの》


《……最高の種族ですね?》


《シクティスも貴方と契約したいはずだわ? けどこのむっつり精霊は自分から言い出さないの》


《……なるほど、つまり――》


《ええ、わたくしはそれが気に入らないの……だから嬲るわ? 絶対に自分から求めさせるのよ》






***






《聞こえるかしら? むっつり水精霊のシクティスさん?》


《カリン! ひどい……私が水精霊だって彼に言ったの?》


《あら? もう恋人気取りなのかしら?》


《ち、違う! そういう意味じゃない!》



 私――シクティスは今、窮地に立たされいた。


 私はカリンと友好的な関係を築けていると思っていたのだけど……どうしてこんな仕打ちを受けているのだろう?



《私……何かカリンの気に触る事をしてしまった?》


《そうね? フィオから手を出して貰おう、って魂胆が見え見えで気に入らないわ?》


「んん⁉︎」


《何が『フィオドール……ダ、ダメ……』よ。貴女、自分が今どんな顔をしているか分かってるのかしら?》



 え……私は今どんな顔をしているのだろう? わ、分からない……指摘されてしまう程情けない表情をしている?

 確かに、その……彼との契約を想像してしまったから普段の表情ではないかもしれない。でも、そんな誘っていたつもりなんて……



《シクティス……わたくしは貴女を友人だと思っているわ?》


《え? うん……私も》


《その友人として聞きたいのだけど、貴女……天使になる前、ただの精霊としてフィオに会っていたら契約してたでしょう?》


《……うん?》



 私が……ただの精霊として彼に? ど、どうだろう?



《想像してみなさい。貴女の住んでいた泉にフィオが水浴びに来るの……当然、服を脱いでね?》


《泉に……彼が?》



 は、裸……魔界で観測していた時に見てしまっている……引き締まった身体……



《泉と同化していたのでしょう? なら、貴女の中にフィオが入って来ることになるわ?》


《わ、私の中に……?》



 彼が遠慮なく入ってくる……あっ……そんなに深いところまで?



《さあ……貴女の大好きなフィオドールが目の前に来たわよ?》


《う……ぁ……》


《フィオは断らないわ?》



 ……私の知らない知識を持っていて、私よりも強い。しかも断られない? そんなの契約するに決まってる。一日かけて契約する。

 けど、それはあり得たかもしれない過去の話。



《そう……きっと契約していた》


《そうでしょう? ほら、今からでも遅くないわ? フィオにおねだりなさい》


《ありがとう、カリン。でも私は天使で……七階位だから》



 私が彼の使徒だったら……こんな思いはしなくて済んだのかもしれない。きっとカリンと同じ様に、彼の隣に居れたのかもしれない。


 もっと早く会いたかった。天使に……せめて七階位になる前に。今の私は天界の秩序を守らなくてはならないから……



「そう。フィオ? 残念だけどシクティスは敵になってしまうみたいだわ?」


「ん⁉︎」


「そうですか……抱けるのはリーリアさんのみ、という事ですね?」


「んん⁉︎」



 て、敵? ……私が? ……誰の? それにリーリアを抱くって――



「ようやくハーレム計画が進められるわ? フィオ」


「カリンさんのお陰です。これからもお願いしますね」


「……ま、待っ――」


「くだらない秩序なんて無くしてしまいましょう?」


「ええ、シクティスさんが加わらないのは悲しいですが……私は本人の意思を尊重しますので」


「だ、だから待っ――」


「さようなら、シクティス。わたくし達の計画……止められるものなら止めてみなさい?」


「失礼します、シクティスさん……お元気で」



「か、仮契約! 仮契約をしたい!」



「仮契約……仮契約ね。まぁいいでしょう……話を聞きましょうか? シクティス」



 ……カリンに嵌められた? けど話だけでもしなくては……情報が足りない。その為なら仮契約くらい――



「まずは仮契約が先よ? フィオ……全力でキスしてあげて」


「お任せください。骨抜きにして差し上げます」



 や、やはり早まったかもしれない。どうしよう……助けてフレイ。私、堕とされてしまうかも……

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