帰還と予約
「おかえりなさい、フィオ――あら? ニールをお姫様抱っこなんて……ずるいわ?」
「ただいま帰りました、カリンさん。ニールさんは凍ってしまったので私の体温にて解凍中です」
都市の跡からニールさんを見つける事には成功したのですが、全身氷漬けになっていました。
消滅していないので、生きてはいるのでしょう……問題ありません。
「フィオ先輩! 流石です!【帝王】に勝ったんですね」
「ありがとうございます。リーリアさんも、ここを防衛していただいて助かりました」
「い、いえ! 私は特に何もしてませんし……」
謙虚ですね? リーリアさん。まあ確かに数百かそこらの魔族なんて、カリンさんとキリリスさんが居れば事足ります。むしろ防衛には過剰な戦力でしょうね……
「何もしていないのはキリリスだわ? リーリアはちゃんと有象無象をなぎ払ったじゃない」
「おや? そうだったのですか?」
「ふふ……わちきは今回、楽をさせてもらいんした」
「あ、あの! 私、能力を使っただけで! 他には何も無かったですから!」
……これは何かありましたね? 私の勘が告げています、問い詰めたら美味しい思いができると。恐らくリーリアさんがやらかしてしまったのでしょう……
まさか……能力が暴発して皆さんの服が――
《何してる、変態フィオドール……さっさと戻って。経路を閉じるから》
《シクティスさん……もう一度言ってもらえませんか?》
《……へ、変態。そういう所がダメ。信じられない》
やはり私の裸体を見てしまったからでしょう……シクティスさんからの当たりが強いです。
しかし、これはこれで悪くありませんね? 是非ともジト目と合わせて罵って欲しいものですが……
《フェリスの下着も顔に張り付いていたからな……あれは致命的だった》
《受けねばならない、使命感の様なものを感じたのです……きっと姉さんの罠でしょう》
《……否定しきれないのが怖いな。はぁ……オレがついていながら何て失態だ》
そう気を落とすことはありませんよ、ウル。方法はともかく……シクティスさんと距離が縮まったのは間違いありません。以前ならこんな風に罵ったりはしてきませんでしたからね。
待ってください……この罵倒で私が気持ち良くなってしまえば、それはもう性的な関係と言えませんか?まさか口説くより先に関係を持ってしまうとは……
シクティスさん……やりますね。
《っ! 今……絶対変なこと考えてた。私は勘がいい。早く戻らないと凍らせる》
《……これは進展なのか?》
「さあ、フィオ……帰りましょう? わたくしまで急かされてしまったわ?」
「そうです! 帰りましょう! 何も無かったので! 何も!」
「ふふ……揺れ揺れでありんす」
ふむ、そうですね……帰りましょうか? なかなかに実りある魔界攻略になりました。
天界にこの事が広まれば私の名声は更に高まるでしょう……ハーレムは近いですね。
「では、皆さん……凱旋といきましょうか」
***
「ん……経路遮断……重封印」
「お疲れ様です。シクティスさん」
《お帰り。変態フィオドール……無事で良かった》
干渉局へ戻ってすぐ、シクティスさんが出迎えてくれました。
介入経路の遮断と封印処理をしていますね……魔界へ繋がった原因が不明な以上、この経路は以降も使わない方がいいでしょう。
「さて、わちきは先に戻らせてもらいんしょう……使徒が心配でありんすから」
「ええ、ありがとうございました。キリリスさん……マリーさんにもよろしくお伝えください」
「ふふ……一緒に来てもいいんでありんすよ? フィオ坊」
これは……キリリスさんからのお誘いです。しかも意味深な流し目付き……
もしかして、もしかしますか? 私の戦う姿を見て発情してしまった……そういう事ですか?
それなら仕方ありませんね……リーリアさん、少し待っていてください。いや、いっその事全員まとめて相手すれば――
《まだダメよ。フィオ……キリリスはダメ》
《そうだぞ? ご主人様、狐の色香に惑わされるな》
「……申し訳ありません、キリリスさん。私はまだやる事がありますので」
「そうでありんすか……いつでも来ておくんなし?」
そう言ってキリリスさんが《転移》して行きました。据え膳が……私の狐さんが……
「あ、あの! 私も干渉局の皆に報告しなければいけませんので!」
「ん……任せる」
「はい! あ……その、フィオ先輩」
「何でしょう? リーリアさん」
リーリアさんまで行ってしまうのですか? 報告は後でも構いませんから、今は私と愛を確かめ合う事を優先するべきではないでしょうか……
「えっと、後でお話しできたらなぁ……と思いまして」
「分かりました。私から伺えばよろしいでしょうか?」
「……え? それって――わ、私の部屋ですか?」
「違う場所がよろしいですか? でしたら私の部屋でも構いませんが……」
《いくら何でも露骨すぎないか? リーリアだって警戒くらいするぞ》
分かっていませんね? ウル。リーリアさんは総じて受け身……そこに私への崇拝も加わった今、彼女は絶対服従天使へと変貌しているのです。
私が白と言えば白……私が脱げと言えば脱ぎます。
《もはや奴隷と変わらんではないか……リーリアも七階位なんだぞ?》
「えっと……その、フィオ先輩の部屋で……お願いします」
《勝ちました。大勝利です》
《……冗談だろう? 軽率すぎないか? リーリア》
ウルにもこれくらいの従順さが必要ですね? 少しはリーリアさんを見習ってもらえないでしょうか……彼女は脱ぎますよ? ウルも脱いでください。
《……脱いだぞ? だが残念だったな。オレは影の中だ》
《引きずり出します》
《何を馬鹿な……えっ⁉︎ ま、待って! 本当に引っ張られてる⁉︎ 何だこれ⁉︎》
「あの……フィオ先輩?」
「……分かりました。では、都合の良い時に連絡してください」
「は、はい!……それでは失礼します!」
《助かった……何だったんだ今の》
さて、私はリーリアさんからの連絡が来るまで休むとしましょう。流石に今回は疲れましたからね……『経験の園』へと帰りましょうか。
《ちょっと待って? フィオ》
《おや、カリンさん。他にやる事がありましたか?》
《ええ、もう少し計画を進めておきたいのよ》
《そうですか……具体的には?》
《そこの水精霊――シクティスをいじめましょう》
水精霊……シクティスさんがですか? ふむ、詳しく聞かせていただきましょう。




