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英雄は佇む




《フィオドールの旦那……どうしよう? 飲み込んだだけで消滅しちまった》


《……何かまずいのですか?》



 氷龍になった戦乙女から《念話》が届きました。アグラを消滅させたのは良い事ではないのでしょうか?


 それにしても、自らの体を龍に変えてしまうとは……ふむ、細部まで完璧に再現されていますね。

 興味深い技――聖術なのでしょうか? それに槍はどうなったのでしょう?



《いや、まさか飲み込んだだけで消滅するとは思わなくてさ……アタシ、この後爆発するんだ》


《ばっ⁉︎ ここを離れるぞご主人様!》


《いえ、受けましょうウル。こんな経験はなかなか出来ませんよ?》



 私の要望通り、見栄えの良い技にしてくれたのでしょう。

 確かにこの規模の氷龍が爆発したら……圧巻でしょうね。この『中央都市』は跡形も無く吹き飛んでしまうのではないでしょうか?



《ほ、本当に巻き込んじまうぞ……いいのかよ?》


《構いませんよ。さあ、貴女の技を私にください》


《ニール様……先立つ不孝をお許しください……って『中央都市』にはニール様もいるぞ⁉︎》



 ニールさんなら大丈夫でしょう。むしろ喜んでくれるのではないですか? 私の聖力を半分も使用した大爆発……これは大喜び間違いなしですね。


 こんな時にまで使徒を喜ばせる事を忘れない主人はそういませんよ?



《オレも使徒だぞ⁉︎ オレは喜んでいないぞ⁉︎》


《これも貴女の経験になります。受け入れてください》



《じゃ、じゃあ……爆発するぞ? あ、まだアタシの名前を――》




 瞬間、視界が白に染まり、爆風と氷の結晶が私に降りかかります。

 名前があったのですか……聞けませんでしたね? しかも、彼女の言葉に耳を傾けていたせいで不意を打たれる形になってしまいました。


 爆風に吹き飛ばされるのは格好良くありませんからね……何とか踏ん張らねば……



「……おっと」



 飛来した槍を右手で掴みます。ちゃんと返してくれた様ですね……しかし、私じゃなければ体を突き抜けていましたよ?

 キリリスさんから借りた槍ですから【フィオドール特効】とか持っていても不思議ではありません。


 これは受けられませんね……



「……おっと」



 飛来した依り代を顔で受けます。ちゃんと返してくれた様ですね……しかし、フェリス姉さんのパンツはこの規模の爆発にも耐えるのですか?

 絶対に何かしらの能力を持っていますね……姉さんの事ですから【弟特効】とか付与していても不思議ではありません。


 私好みの色と形状、そして肌触り……顔で受けて正解でした。



《く……うぅ……影の中まで真っ白だ。だがなんとか生きてるぞご主人さ――まッ⁉︎》



《無事でしたか? ウル》


《ななな……な、なんで⁉︎》



《私も無事ですよ……服以外は》



 やはり無防備に受けたからでしょうか? 服が全て吹き飛んでしまいました……今度姉さんに衣服を編み出す秘訣を聞いた方が良さそうですね。



《さ、最悪だ……早くパンツを剥がせ! そして服を着ろ! シクティスに見られているんだぞ⁉︎》


《確かに、シクティスさんには刺激が強過ぎますか》



 名残惜しいですがパンツを剥がし、服を――着なくても良いのでは? この後は帰ってリーリアさんとお楽しみの時間です。着てすぐに脱ぐのも手間ですからね……



《本当に頭が回っていないのか? その姿でカリン様に見つかったら、ここが魔界だろうと関係なく押し倒されるぞ》


《誰も損をしない平和な世界ではありませんか》


《その世界にオレは居ないな? いいから早く着るんだ。たまには素直に忠告を聞いてくれ》



 仕方ありませんね……では服を着ながらニールさんでも探しましょう。あまり遠くに飛ばされてないと良いのですが……






***






「ば、爆発した……」



 私――シクティスはフィオドールの戦いを見届けた。

 まさか氷像が龍の姿になるとは思わなかったけど、彼は無傷で【帝王】を討つ事に成功……私の心配は杞憂に終わった。


 しかし安堵したのもつかの間。いきなり氷龍が爆発……観測していた映像も真っ白で何も見えなくなってしまった。

 あの氷像が何なのか見極めようと意気込んでいたけど、途中から戦況を追うので精一杯になってしまった。



 恐ろしい速度で【帝王】を圧倒したと思ったら、いつのまにか槍を手にしていたし……かと思えば龍へと変化するし……挙げ句の果てには【帝王】を飲み込んで爆発。

 結局あれが何なのか分からなかった。いや、今はそんな事よりも――



「彼は……」



 あれだけの規模の爆発……彼は無事なの? 観測映像は真っ白のままで何も映って――いや、違う。

 これが正常な映像……この一面真っ白な景色が、あの爆発の結果……


 改めて見れば、かつて都市だったその場所は白銀の平原へと地形を変えていた。

 氷龍のいた場所は、爆発の規模を物語るかの様に地面が大きく抉れている……壮絶。その一言に尽きる光景……



 一体どれ程の聖力を用いればこんな光景が作れるのか……私には想像もできない。

 悔しいけれど、彼の方が私よりも強い。それがこの戦いで証明されてしまった。



「ふふ……」



 でもちょっと嬉しい。カリンとの知恵比べにも負けた……けど、彼が私よりも強くて安心している自分もいる。

 絶対口には出せないけれど……心の中でくらい、素直になってもいいのかもしれない。


 そうだ、私の契約者候補の姿……最後まで見届けないと。ふふ、私の英雄はあの程度の爆発じゃ消滅したりしないから……なんて。




「ん! フィオドール見つけ――たくなかった……」




 白銀の世界に佇む私の英雄は――顔面にパンツを貼り付けた全裸の変態だった。



 ……信じられない。嘘だと言ってフィオドール……貴方はどうして格好良く終われないの?



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