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英雄主義




「お帰りなさい。必要なさそうだし、ニールの鎖は解いたわよ?」


「ただいま帰りました、カリンさん。首輪も外しましょうか……まだ気持ち良さそうです」


「うぅ……酷い目にあったの――じゃぁ⁉︎」


「こんなに汚して……説得力が無いわね? 見て、フィオ。この猫びしょびしょよ?」


《カリン様……お願いします。もう分かりましたから……な、涙が》



「さて、『中央都市』の場所……というか座標は分かりました」


「そう……《転移》で来ていたのね」


「ええ、なので私達も《転移》を使おうと思います。念の為、《転移》を使うのは私だけにするつもりですが」


「の、のう主人様?《転移》した後はどうするのじゃ? また聞き込みかの?」



《フィオドール、そっちはどうなっている? まだ【帝王】は見つからない?》


《おや、シクティスさん。何かありましたか?》


《うん……最後の介入経路へ大量の魔族達が向かって来ているのを観測した。討伐隊の第一陣だと推測する。いざとなったら私も出るけど、可能ならカリンかニール……援軍が欲しい》



 討伐隊が既に動いていたのですか……いや、シクティスさんの言う通り、近場の魔族を集めた第一陣なのでしょう……それでも数では圧倒されているはずです。



《天界から他の天使を援軍として送れませんか?》


《擬似天魔大戦をやれ、と言う事なら許可できない。私は貴方が【帝王】を討つのに失敗したら、即座に撤退戦へ移行する……その時の殿は私。これなら仮にこの作戦が失敗しても、私と貴方……そして貴方の使徒達の犠牲で済む》


《確かに数の面では、そちらの方が少ない犠牲で済むでしょうが……》



 戦力的には大打撃ですね。シクティスさんの事です、新しく七階位に座す天使を育成していてるのでしょうが……彼女はここまで英雄主義でしたか?


 カリンさん、何か分かりませんか?



「シクティスは貴方のことが好きなのよ」


「なんじゃと⁉︎」


「大勝利です。ここにハーレム計画は成りました」


《血迷ったか……シクティス》



「でも絶対にその気持ちを認めようとはしないわ。天使として、七階位として、自分が今どんな立場にいるのか分かっているもの」


「ふむ、天界の頭脳は冷静じゃな」


「次にやる事は決まりました。シクティスさんを七階位から降ろします」


《血迷ったか……ご主人様》



「だけどフィオが居ないと寂しい。それに自分の英雄が討たれてしまったら、彼女は生きていけないの。だから死ぬ時は一緒に死のうとしている……間違いないわ」


「相当入れ込んでおる様じゃの」


「大丈夫ですよシクティスさん。貴女の英雄は負けません。だから生きて一緒になりましょう」


《……ちょっと分かる》



「シクティスを堕とす機会だけど……まだ彼女の番では無いわ。ここはわたくしに任せて頂戴? フィオ」


「ふむ……分かりました。カリンさんに任せましょう」



 いくら私を慕ってくれていても、死なれては困りますからね……シクティスさんと仲の良いカリンさんに任せておけば、間違いはないでしょう。


 それにしても……シクティスさんが私の事を好いていたとは……いえ、もちろんこれだけ格好良く、そして強いのですから当然なのですが。彼女はそんな素振りを見せていませんでしたからね……



「のう、主人様? 結局『中央都市』に着いたらどうするのじゃ?」


「そうですね。時間もない様ですし……強襲しましょうか」


「っ! 本当かの⁉︎ ……ワ、ワシも暴れて良いか? 良いじゃろ? 頼む連れて行ってくれ主人様ぁ!」



「フィオ? わたくしが防衛に向かうことになったわ。《転移》を頼めるかしら?」


《オレはどうする? カリン様の手伝いに行った方がいいか?》


「こちらが危なくなるまではフィオの傍でいいわ。【帝王】さえ討てれば戻って来られるでしょうし」



「では……カリンさんが防衛、ニールさんが『中央都市』のかく乱。私とウルで【帝王】を討ちます。頼りにしていますよ? ……《転移》です」



 ごっそりと力が抜けていく感覚……やはり魔界で聖力は使いにくいですね……

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