影は奔る
「着きました」
「着いたわね」
《着いたな》
「ふぃひゃ……」
先程見た『色街』よりも大きな壁で囲われている……『闘技都市』と呼ばれる魔界の都市です。
門に並ぶ魔族の数も多く……闘技場目当てなのでしょう、身体が大きい魔族が目につきます。
あの列には並びたく無いですね……私の魅力が吸われたりしませんか?
「さて、こうして見える位置には来た訳ですが……どうしますか?」
「まずは情報収集ね、お願いできるかしら?」
《分かりました、カリン様。すぐに行って参ります》
「可能なら、魔界で捕虜がどう扱われるか調べて来て頂戴。奴隷制度があるなら尚いいわ?」
《はっ!》
ウルが活き活きしていますね。使う者と使われる者……相性が良いのでしょうか?
カリンさんは使徒達の頭脳、ウルが手足として動いて……ニールさんは?
「あ、あるじさまぁ……壊れてしまう……もうだめじゃぁ」
「フィオ? 首輪に鈴を付けてはどうかしら? 後は服も破きましょう。捕虜なのに綺麗な服を着ているのは変だもの」
「ひっ⁉︎ やめるのじゃ! み、見えてしまう……ワシの胸が見えてしまうのじゃぁ!」
「獣人の女は胸を誇るのでしょう? 貴女も自慢してたじゃない。ほら……皆に見て貰いましょうね?」
「ひにゃぁあああああ⁉︎」
ニールさんもイキイキしていますね。加虐趣味と被虐性欲……相性がいいのでしょうか?
ですが、流石に服を破いてしまうのは止めなくてはなりません。
「カリンさん、そこまでです」
「っ! あ、あるじ! あるじさまぁ!」
「あら? フィオ、どうして止めるのかしら? わたくしは何も間違っていないわ」
「ええ、私もそう思います。ですので……どうでしょう? 裸にローブというのは?」
「なっ⁉︎」
「いいわね。ニール、脱ぎなさい? そして自分からローブを着るのよ。わたくし達の前でね」
「ワシが……裸で……ローブ?」
「フィオ、ちゃんと前が開く物にしてね? でないとニールが気持ち良くなれないわ?」
「もちろんです。こんな事もあろうかと、所々穴の空いた安っぽいローブを所持しています」
《すまない……そろそろニール様を虐めるのはやめてくれないか……辛いんだ、オレが》
「とうとう元部下にも見限られたわね? この被虐性欲の変態猫」
「いっ――んんッ〜〜〜〜!」
《カリン様……お許しください……ニール様はもう……》
さて、ニールさんに着替えて貰うかどうかも情報次第です。報告をお願いできますか? ウル。
《ああ、まず中の様子だが……思ったよりもきちんとした都市だ。住居があり、宿泊施設の様な建物もあった。都市の中央には大きな闘技場があり、魔族による一対一の殺し合いが行われていたな。》
「宿があるわよ? フィオ」
「良い情報ですね。土の上では味気ないですし、体を痛めてしまうかもしれませんからね」
《……次に【帝王】の情報だが、現在アグラはここに居ない。奴は定期的に各都市を見回り、普段は『中央都市』という場所に居るそうだ。》
「その『中央都市』とはどこにあるのかしら?」
《それが……申し訳ありません。魔族共は『中央都市から来た』とか『中央都市へ行く』としか言わず、ここからの道筋までは分かりませんでした……》
「いいえ、良くやったわ。フィオ?」
「ええ、これで【吸収】が使えます」
ウル、その『中央都市から来た』と言っていた魔族の所まで案内してもらえませんか? そこまで分かっているのなら、私の能力で記憶が抜き取れます。
《そ、そんな事が可能な能力があるのか……》
【吸収】はあまり使いたくない能力です。記憶を抜き取ると言えば聞こえはいいかもしれませんが、私のものではない記憶が吸収されるのです。最悪……人格が変わってしまうでしょうね。
《なっ⁉︎ だ、ダメだ! 発言していたのは見るからに粗暴な魔族だった! オレはご主人様にああなって欲しくないぞ⁉︎》
ええ、私もなりたくありません。ですので、今回は部分的に吸収します。
ウルが特定してくれた『中央都市』に関する記憶だけを吸収する事で、人格までは影響されずに済むでしょう。
ちなみに、普通はこんな使い方はできませんよ?【限定】【吸収】【緻密制御】の三つの能力を使用しますので。
《そうか……いいんだ。オレはご主人様が無事ならそれでいい》
「素晴らしい使徒だわ。ニール、帰ったらウルの足を舐めなさい。いいわね?」
「う……ひゃぃ……」
《お、お待ちくださいカリン様! ニール様も! 今のは了承の返事ではありませんよね⁉︎》
「そういえば、捕虜の扱いの件はどうだったのです?」
「そうだったわ? この性奴隷は連れて行けるのかしら」
《捕虜と奴隷はどちらも一般的ではありませんでした。ほとんどがその場で討たれ、魔族の糧にされている様です。稀にアグラへ取り入ろうと貢ぐ者がいるくらいで、そういった者は《転移》で『中央都市』へと運んでいるとの事です》
「《転移》の可能性を考えていませんでしたね」
「フィオは魔界で《転移》できないのかしら?」
「一応、可能です。かなり効率は悪いですが……」
「そう、ならやめておいた方がいいわね。『中央都市』から来た魔族が《転移》で来ていない事を祈りましょう」
《……聞いてもいいか?》
そうですね……説明は都市の中に入ってからでもいいでしょうか? もしかしたら、実際に目にして貰うことになるかもしれません。
「ニールは連れて行かない方がいいでしょうから、わたくし達はここで待つわ」
「助かります、カリンさん。《不可視化》を掛けておきますね」
「今、見えないのよね?」
「ええ、大魔王級の魔族が目を凝らしても見えません」
「そう……ニールを脱がしてもいいかしら?」
「程々にしてくださいね? 戦闘になるかもしれませんので」
《早く! 早く行くぞ! ニール様がこれ以上壊れてしまう前に早く!》
では、都市の中に入ってみましょうか……案内をお願いしますね? ウル。




