逆臣尋問
「何で七階位の中でも【経験】が来るんだ……運が悪すぎる」
「さてさて、拷問と尋問……どちらがお好みですか?」
まるで私じゃなかったら勝てた様な発言が気になりますが……まあいいでしょう。
私が来たからには魔界はお終いです。いえ、魔界の男共はお終いと言った方が正しいですか。魔界で女性を見かけるのは本当に稀ですからね……それもこれも、この男共のせいです。
女性を見たら襲いかかることしか考えない……まったくなっていません。
《自分が普段、どんな言動をとっているか省みるといい。そろそろオレはお前の使徒だと名乗るのが恥ずかしく思えそうだ》
《……ウル、愛していますよ。私の中で貴女は特別です》
《なっ……ぁ?》
《私と魔族の違いはそこです。分かっていただけた様ですね》
《……っ⁉︎ た、謀ったのか⁉︎》
嘘ではありませんよ? キリリスさんに心を読んで貰っても構いません。しかし、今はこの魔族から情報を得ることにしましょう……続きは帰ってからです。
「何も答えないのなら、ここで貴方を消します。別の魔族に聞くとしましょう」
「待て。喋ってやる……だが、分かるだろう? 言いたくても言えないんだ」
「ふむ……『誓約』ですか? 慎重なことです」
「…………」
「首肯もできないとは……かなり強力な物の様ですね」
《な、なあ?『誓約』ってオレにも結ばせていたあれか?》
その『誓約』で間違っていません。無論、貴女に結ばせたのはお遊びみたいな物ですが。
この方の『誓約』は本物ですよ? 十中八九、破ったら消滅するか……消滅する事すら出来ずに苦しみ続けるか……
《それでは情報など吐くわけが無いではないか。吐いたとしても、信憑性など無いに等しい》
その通りですが……『誓約』というのは強力な分、非常に手間が掛かります。何をどう縛るのか、一々誓わせなくてはいけませんからね? 自分の配下全員に誓わせているとすれば称賛に値しますが、必ず穴があるでしょう。
そして、嘘の対策にはこれを使います。
「【審判】」
「ッ⁉︎」
「私の質問に答えないのは構いません。ですが嘘を吐けば、この場で消滅していただきます。返答を」
「……いいだろう」
《【審判】……とは何だ?》
ウルの前で使うのは初めてでしたか? 分かりやすく説明するのならば、『その場限りの誓約』です。
通常、『誓約』は誓わせた者が破棄しない限り、恒久的に持続しますが【審判】は違います。
それと、【審判】はそこそこ知名度の高い能力です。人間界などでも裁判に使われたりしていますので、これを機に覚えておいてくださいね?
《うぐっ……分かった。絶対に忘れん》
「質問を開始します。まずは貴方の名前は?」
「ヤグンだ」
「ではヤグンさん、貴方が『誓約』を結んだ相手の名前は?」
「アグラ様だ」
「……名前を秘匿する様には言われていないのですね」
「名前で誓わされたのは『名前に様を付けて呼ぶ事』だけだ。これも秘匿されていない」
何というか……慎重なのか尊大なのか、分かりませんね? まあ魔族が理解できないのは今に始まった事では――
《待て、オレに心当たりがある。オレの感が正しければ、そのアグラという者……龍人だ》
《龍人、ですか? 龍が人と交わって生まれたと言う……》
《そうだ。奴らは高慢で、他者を見下す事を好むくせに弱者を恐れる。龍という超常の存在から生まれた自負と、それでも姿が人族に似てしまった事への劣等感を合わせ持つ……難儀な種族だ》
《詳しいですね。ウル》
《……以前、ニール様の配下であった時に一戦交えたのだ》
《ふむ、勝ったのですか?》
《負けていたら、ここには居ないだろう?……オレはお前の使徒だ。あまり見くびるな》
ふふ、嬉しい事を言ってくれますね? ウル。いいでしょう……貴女がその気なら私も応えなくてはなりません。
ここが魔界だろうと私は貴女を抱けます。ウル、出て来てください……『忠犬散歩プレイ〜魔界編〜』を開始します。
《そういう所だ! わざとやっているだろう⁉︎ いいから早く聞け! オレの勘が正しいとも限らん》
「そのアグラという者は、龍人ですか?」
「ッ⁉︎ そ、そうだ……これだけの問答で分かるものなのか」
「次です。アグラは【統率】持ちですか?」
「違う」
「ふむ、では【指揮】持ちですか?」
「いや……違う」
「どんな能力を持っているか、口に出すことはできますか?」
「…………」
《おい……話と違うぞ》
ええ、とても帰りたくなって来ましたね。これはシクティスさんともう一度話し合わなければいけません。【指揮】でも、【統率】でも無いとなると――
「一つ、俺からも質問していいか?」
「……? ええ、どうぞ」
「先程の戦闘から気になっていたのだが、何故お前は――」
「最後は貰ったのじゃぁあああああああ‼︎」
「何――ガッ⁉︎」
先程まで話していたヤグンさんが光の粒子に変わっていきます……『信じられない』と言いたげな顔をしていますね? 安心してください、私にも信じられません。
《ニール様……これは……オレにも擁護できません》
ウル、縄と鞭を出しなさい。この猫を躾けなければいけません。




