闘争の宴
「くはは! もっとじゃ! もっとワシを楽しませるのじゃ!」
「な、何だこいつ⁉︎ 《魔術》が効かねえ!」
「俺の【炎撃】もダメだ! 物理で行け!」
「刃が当たってるはずなのに……血が出ねえってどういうことだよ⁉︎ 」
数多の魔族に囲まれながら、ワシ――ニールは高揚感に包まれていた。
これじゃ! 互いの命を本気で奪い合う……この闘争こそワシが求めていたものじゃ!
最近はずっと『経験の園』で営んでおったからの。ま、まあ? あれも悪くはないんじゃが、戻ってこれなくなりそうじゃからな……
やはり、ワシら獣人は闘争こそが本望!この欲求は他では満たせんのう。
「ほれ、ワシの手に触れたら腐ってしまうぞ? くくっ……逃げぬのか?」
「奴の手に触れられるな! 死角を突け!」
「《魔術》は牽制に使え! 目眩しにはなるだろう」
「能力を割り出すことを優先しろ。無敵などありえん……」
良いぞ? もっと本気になってワシの命をとりにくるのじゃ! 命を狙われるこの緊張感……
そして奴らが散って行く時の、あの悔しそうな表情……た、たまらんのじゃ!
時間があれば、もっとじっくり甚振ってやるんじゃが……主人様を待たせるのも悪いからのう。
程々にせねばならん。
「構え……放てッ!」
「む?」
魔族共が《魔術》を放ってきたのじゃが……種類は先程と変わらんのう? まあ爵位持ちでもなければ《魔術》に多様さなど期待できんか――
「貰った!」
「《転移》が見破れんとでも思ったかの? その程度でワシの命は――むっ」
「……っ! 隊長!【石化の魔眼】が効きました!」
「よし! 今のうちに叩けるだけ叩け! 手には触れるなよ⁉︎ 注意しろ!」
うーむ……石化はあまり【経験】しておらんかったのじゃ……主人様の能力も、耐性が付くまでは不便じゃな。
まあ使徒になるまでは得られなかった力……感謝こそすれ、文句を言うのはお門違いじゃろう。
「クソッ! やっぱり刃が通らねえ! こいつの体はどうなってやがる⁉︎」
「剣も槍も刃が立たん、矢はどうか?」
「《魔術》に紛れて放ちましたが……刺さっていません」
「俺の棍もダメだったぜ? 全く堪えちゃいねぇ」
「つーか動けないんだろ? なら、俺の出番だ。ちょっと触れりゃ【鑑定】できる」
む? 何やら雲行きが怪しくなってきたのう? 主人様以外の男がワシに触れると……ふむ。
確かにワシの身体は魅力的じゃろうからな、無理もないんじゃが……
それは――
「へへっ、悪りぃな? これも欲望の為なんでね?」
それは――
「許さん」
「へっ? あ――ぐぎゃぁあああああ⁉︎ 腕、俺の腕がぁああ⁉︎」
「どうなってる⁉︎ 【石化の魔眼】は⁉︎ 」
「掛けています! 私はずっと掛けていますよ⁉︎ 」
「効いた振りをしてたってのかよ⁉︎ き、汚ねえぞ獣人!」
「すまんのう? ワシはこれでも、主人様に操を立てておるのじゃ。それに、騙し討ちではないぞ? 丁度耐性が付いただけの話じゃ」
ワシよりも非力な体、劣った能力で良く戦ったと褒めてやりたい所じゃが……結局はワシに届いておらん。惜しいのう……
それにしても、魔族が『汚い』などと……くくっ滑稽じゃな?
やはり主人様とは比べ物にもならんか。興も醒めた……終いじゃ。
「耐性……この場で耐性を獲得したと言うのか⁉︎ そんな馬鹿な話――」
「次の手は無いのじゃろう? ワシの手で果てるのじゃ、光栄に思え。まずは……獣人を馬鹿にしたお主からじゃ」
「ま、待っ――」
「くどい」
さて、さっさと片付けて主人様の所へ行くとしよう。こやつらでは満足できん……今度はもっと強い者と戦わせて貰わねば……




