表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/201

【経験】のフィオドール




《ニール様……良かったですね。魔界へ来れて……うぅ、オレも……オレも嬉しいです》



 魔族より我慢出来なかったことは気にしないのですね。

 魔界へ来たがったのも、きっと闘争に身を委ねたかった……というか、気が済むまで戦いたかったからなのでしょう。ニールさんはバトルジャンキーですからね。

 ぱっと見た限りでは、爵位持ちもいないみたいですし、あちらは任せても問題無いでしょう。


 さて、私の方は……



「…………」



 はぁ……まだ動きませんか。きっと魔族達で《念話》でもしているのでしょうが、何が悲しくて男同士で見つめ合わなくてはならないのです。しかも無言で。

 どうせ見つめ合うなら……そうですね、キリリスさん。貴女と見つめ合いたい。


 深みを感じる紫色の瞳……例え心が読まれてしまおうと、私は貴女から目を逸らしたりしません。時より見せる流し目も、こちらの反応を窺うような目も……全て私が独占しましょう。

 『恋は盲目』と聞いたことがあります。私以外が視界に入らない、それほど虜に――



「今だッ!」

「やれ! 攻撃開始だ!」


「はぁ……」



 魔族達から攻勢魔術が放たれます。【識別】……火炎球、雷槍、闇刃……典型的なものばかりじゃないですか。部分不可視化は無し、付属効果も無し……【識別】は要りませんでしたね。


 シクティスさん達が見ている様ですから、右手で受ける振りでもしておきましょうか。



「う、動いてやがる……」

「百人規模の妨害魔術だぞ⁉︎ 高位天使でも指一本動かせないはずだ!」

「チッ……やっぱ七階位じゃねぇか……」



 妨害魔術……? なるほど、そちらが本命でしたか。ですが耐性を持っているものだった様ですね……

 常時発動型の能力は、こういう時に不便です。まるで私が策に嵌ったみたいじゃありませんか。



《みたいも何も、耐性が無かったら策に嵌まっていただろう。そんな事より……お前を知っている者が居るな?》



 私は魔界でも名が売れていますからね? 困ったものです。ファンは女性だけで良いのですが……

 まぁ、 彼から【統率】の居場所を聞きましょう。仮に【指揮】でも、この場の魔族を全て討ってしまえばいいのです。


 ではさっそく……【空間跳躍】



「金色の翼だとッ⁉︎ 」

「な、なんだ⁉︎ 《転移》か⁉︎ 」

「いやそんな予兆――」


「捉えましたよ?【重力結界】です。加減が難しいので、動かないでくださいね?」


「チッ……【経験】の――」


「この方以外、要りませんので……【炎域】」



「ぐぁああああああああああ⁉︎ 」

「火! 火がぁ⁉︎ 」

「消えねえ⁉︎ しょ、しょうめ――」

「クソ! クソ! こんな所で――」



 ふぅ……やはりフレイヤさんの能力は殲滅向きですね。一気に静かになりました。

 そして、舞い散る光の中に佇む私……確実に美しい……


 ウル、どうですか? 誰もが見惚れる光景でしょう。



《オレは知ってるぞ。こういうのを『薔薇』と言うんだ。男同士が愛し合う……禁断の愛らしい》


「チッ……俺をどうする気だ。【経験】のフィオドール」



 ……そういえば一人残していましたね。ウル、記憶から消しなさい。さもないと次は……ニールさんと『百合』を教えます。






***






「え……つ、強い! ……強いですフィオ先輩!」


「ん……これが【経験】……」


「ふふ、ゾッとしたでありんす」



 目の前に映し出される観測映像を見ながら、私――リーリアは思わず叫んでしまいました。


 フィオ先輩……こんなに強かったんですね。そ、そりゃぁ使徒の皆さんがあれだけお強いんですから! フィオ先輩が弱い訳無いと……いいなぁ? と思っていました。

 フィオ先輩が私と戦ってくれないのが悪いんですよ! 修練をする時も、常にカリンさんやニールさん相手でしたし……



「あ、あれ……? でも【経験】って?」


「ん……経験に耐性を持つ……万能防御型」


「で、でも! フィオ先輩が使っていたのって【炎域】ですよね? もしかして、二つ目の能力ですか⁉︎」



 稀にですが、能力を複数持つ方もいるそうです。生まれた時から二つ所持していたり、天使として長い研鑽を積むと発現することがあると聞きました。いいなぁ……フィオ先輩……



「ん……フィオドールは【経験】だけ……【炎域】も経験した」


「えーと、うーん?」


「はぁ……キリリス様、お願い」



「ふふ、噛み砕いて言えば……フィオ坊は他の能力を【経験】すると、それが使える様になるんでありんす」


「え……えぇー⁉︎ じゃ、じゃあフィオ先輩は、どんな能力でも使えるって事ですか⁉︎ 」



 な、何ですかそれ⁉︎ そんな幾つもの能力を使えるって……『最上天使ケイレム様』と同じじゃないですか⁉︎ 金色の翼も、複数の能力も……やっぱりフィオ先輩が――



「全部じゃ……ない……」


「あら? ふふ……」


「あっ……ごめん、なさい……」



 キリリス様とシクティス様が見つめ合っています。キリリス様の瞳って、片目しか開いていないのに凄い色気があると言うか……そのまま絡め取られてしまいそうになると言うか……

 シクティス様も恥ずかしそうです。え、待ってください……これは、もしかしてフィオ先輩から教わったあの『百合』ですか⁉︎


 教育係の時、フィオ先輩は言っていました。

 『私が天界でたった一人の男。今日は私が誕生するまで、天界に咲き誇っていた百合の花について教えましょう』と……ま、間違いありません! 女性同士で愛し合ってしまう禁断の愛です! キリリス様はシクティスを狙って――


 ひっ⁉︎ キリリス様がこちらを向いてしまわれました! あっ……凄い色気……だ、だめですよ? この身はケイレム様――じゃなくて天界へ捧げているのです! な、何とか話を戻さないと……



「ふふっ……」


「あ、あの! 全部じゃないって、使えない能力もあるんですか?」


《うん。まず能力じゃないけれど《魔術》は無理》


「ひゃぁ⁉︎」


《うるさい。私は喋るのが苦手……念話で伝えるから、ちゃんと聞いて》


「は、はい!」


《うん。さっきも言った通り……フィオドールも天使だから魔力は扱えない。つまり、魔に属する《魔術》と能力は扱えない》


「万能では無い、という事ですね」


《そう。ただ耐性は問題なく獲得できる。経験を重ねれば無力化も可能》


「経験を……重ねる?」


《一度で完全耐性を獲得できる訳じゃ無い。何度も何度も……物によっては何千、何万とその身に受けてやっと無力化できる。私が彼を信用しているのは、きちんとそういう努力を――》


「……? シクティス様?」



 シクティス様がこちらに手のひらを向けています……『待て』でしょうか?


 そういえばニールさんは……まだ戦っていますね。ですがもう一方的です。逃げようとする魔族を捕まえて……うっ、く、腐らせています。

 ニールさん、強いんですがあの能力はちょっと怖いです。魔族の攻撃も全く効いていませんし……ぜ、絶対怒らせない様にしましょう!



「流石……フィオドールから、《念話》……尋問開始」



 うぅ……やっぱりフィオ先輩は、『最上天使様』なんですか? わ、私どうしたら……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます

ブックマーク・評価・感想などいただけますと
作者が非常に喜びます!よろしくお願いいたします

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ