魔界に立つ
「うーむ、見事に破られておるのう……」
「ええ、無理矢理こじ開けたのでしょうね。隔壁がまるでウルの様……」
《見るも無惨だと、そう言いたいのか? それが遺言でいいのだな?》
まあ、これは人間界に対しての隔壁。魔族……それも大魔王に対しては少々心許ないですね。
簡単に……とまではいきませんが、多少面倒くさい程度で破られてしまったのでしょう。折角ですし、直していきましょうか。
「ニールさん、少し離れてください。隔壁を修復します」
「いっそのこと張り直したらどうじゃ? ワシでも破れるぞ? この隔壁」
《ニール様、今は時間がありません。見てください、奴の顔……今にも『隔壁を張り直したら、魔界へ行かなくてもよくありませんか?』などと言い出しそうです》
失礼な……私はそんな面倒くさがりではありませんよ。
それに、今回は魔界の【統率】持ちを討つという話ではありませんでしたか?目的を履き違えてはいけません。
リーリアさんを犯す為に、魔界へ行くと天議会で決まったではありませんか。
《いつから天議会はそんな卑猥な話し合いをする場になったのだ……》
「……ひとまずはこれでいいでしょう。」
「うむ、穴は塞がったな。では行くのじゃ!」
ここから介入先――魔界へと世界を越えます。隔壁に認証された者なら、阻まれることもありませんからね。ここを越えたら、魔界はもうすぐです。
ウル、分かっているとは思いますが姿は見せないでくださいね。まだ、貴女が影に潜れる事は秘密です。
キリリスさんにはバレていそうですが……
《分かっている。この能力をバラす様な真似はしない……というか狐の件はお前が――》
「行きます」
「くくっ……突撃じゃー!」
***
隔壁を越え、いくらか空間の波に揺られた後、私達は魔界へと降り立ちます。
目の前に広がるのは緑の無い不毛な大地、雲がかかって光の差し込まない空。
そしてむさ苦しい男……男、男、男……はぁ。
「うむ! 丁重なもてなしじゃ」
《待ち伏せだ。完全に包囲されている……何体いるのか数えるのも面倒だ》
数える必要はありませんよ? ウル。男はただ一人、私を残して死滅していただきます。
いつか人間が魔界へと堕ちる条件も変えましょう。天界と同じ様に女性だけにするべきです。
「おい、新しい天使が来たぞ? 二人だ」
「だが……何かおかしくねえか?」
「金髪の方は胸がねえな、俺は銀髪の相手だけでいいぞ」
「あの獣人、天使にしてはいい格好してますね」
「前が全然隠れてねえじゃねえか! おいおい、誘ってんのか?」
「チッ……面倒なのが来たな……アグラ様に報告しろ」
「……御意」
逃がしませんよ? 一人残らずここで消滅し――
《フィオドール、状況は? 魔界へはもう着いているはず》
《おや、シクティスさん。私に念話されるのは初めてですね》
《ん、そう。状況を教えてほしい。こちらも、もう少しで映像が繋がるけど……繋がった。待ち伏せ?》
《ええ、ご覧の通りです。今は品定めを受けている……といった所でしょうか》
シクティスさん、《念話》ではよく喋りますね? 可愛らしいお声が私の脳内に響きます。
……はっ! 閃きましたよ?『念話プレイ』です。しかし、《念話》は双方の許可が必要……
どうやってシクティスさんに受け入れて貰うか、これが鍵ですね。いや待ってください、無理矢理というのも良いかもしれません。
嫌、嫌と拒絶するシクティスさん……しかしその力は弱く、本心では私の事を求めてしまっている……
大丈夫ですよ、シクティスさん。ちゃんと優しくしますから――
《妄想も大概にしてくれ。そろそろ奴等も我慢の限界が近そうだ》
「のう、主人様?ワシがやっても良いか? いいじゃろ? いやもう我慢できん!」
「ええ、どうぞ」
「くくっ【経験】の使徒ニールじゃ! 行くぞ魔族どもぉおおおお!」
魔族よりも堪え性のない使徒……それがニールさんです。




