天界の頭脳
「……介入禁止を解除、ですか?」
私の介入禁止を解除? それではまるで……いや、まだ可能性の話です。シクティスさんもお疲れで、頭が回っていらっしゃらないのでしょう。
ウル! 待ちなさい……まだ私が行けとは言われていませんよ!
「シクティスさ――」
「フィオドールを筆頭に……少数精鋭で強襲……【統率】を討つ」
《ニール様、起きてください。魔界行きが決まりました……ああ、また服も着ないで……》
ニールさん……また裸のまま寝てるのですか……
フィオドール・アイ……発動!
***
フィオドールが私――シクティスを見つめてくる。本気の目……
いつもは滅多に見せない透き通った碧眼に、私はまるで心を見通されているような錯覚に陥る。
「突入する理由を……聞かせていただけますか?」
理由……? そんなもの彼なら分かっているはず……ああ、他の天使にも伝えようとしているの。
いつも問題ばかり起こして、困らされているけど……こういう時は本当に頼りになる。
「次の聖魔大戦への……最善手……」
そう、彼も知っているとは思うけど【指揮】や【統率】持ちは指揮下の魔族・悪魔を大幅に強化する。
それこそ格上の六階位を討ててしまう程に。
だから他に犠牲者が出る前に……聖魔大戦が起こる前に……討つ。
それができるのは並外れた力を持つ七階位だけ。それも【経験】のフィオドールなら安心。
放置したら【指揮】・【統率】が魔界で魔族に討たれるかもしれない。けど、そんな希望的観測に頼るのは不安……
何より大魔王が同じ魔族に討たれるというのは、新しい大魔王が生まれるということ。それじゃ問題の解決にはならない。
「戻ってこられなくなる可能性もあります」
「そうはさせない……魔界側の介入経路を抑える……」
確かに。そこも説明しなくては……フェリス様やエイリーン様に反対されてしまうかもしれない。
二人ともフィオドールの事をとても大切に思っているみたいだから。
フェリス様が魔界へ行くのも困る。天界が割れてしまう……物理的に。
「死守する、という訳ですか……防衛には誰が?」
そこが悩みどころ。フレイは周りに他の天使がいたら戦えないし……一人にすると何かしそうで怖い。
フェリス様は動かせないし、エイリーン様も天界の指揮に必須……私も同様に離れられない。
残るのは――
「リーリアと……キリリス様」
正直、もう一人フィオドールが欲しい……彼は何でも出来すぎてずるい。
さっきも凍った手を一瞬で解凍していた。見たところ後遺症も無さそう……すごい。
そういえば『体重計』は? あれはダメ。あれだけはダメ――ッ⁉︎
フィオドール……何故……女性物の下着を握りしめているの?
本当に……そういう所が困る。台無し。変態。色狂い。
***
《話はまとまった様だな》
《……はっ⁉︎》
《遠視》でニールさんを視姦していたら、話し合いが終わっていました。
うつ伏せに寝ていたせいで、本丸は拝めませんでしたが……気怠げに揺れる銀色の尻尾、それに合わせて震える尻をこの目で楽しむことが出来ました。
ニールさんも私が覗いている事には気付いていたのでしょう。
最初は動きの鈍かった尻尾も、途中から誘う様に動いていました。
ウルも、ニールさんくらいのサービス精神を持ってもいいんですよ?
《む、無理だ! オレには真似できん……あんな恥ずかしい動き――》
《誰の何が恥ずかしいんじゃ? この戯け》
《ニ、ニール様⁉︎》
《おはようございます。ニールさん……随分長く寝ていましたね?》
《お主がワシの気をやるまで続けるからじゃ。腰が痛うてかなわん》
第二使徒、ニールさんも起きて来られました。代わりにカリンさんが寝てしまっていますが。
これで何とかなるはずです……というかニールさんが起きたなら、今ここで七階位に襲い掛かっても勝てるのでは?
まずは……リーリアさん? 貴女です。言葉通り『天上の快楽』という物を教えて差し上げましょう。
《おお、七階位か!【天狐】もおるのか? 腕が鳴るのう!》
《お待ちくださいニール様! まずは魔界! まずは魔界にございます!》
《む、そうじゃったな……よし、戦の支度をせい!》
《ははっ!》
やはりニールさんが起きると一気に賑やかになりますね。私の気も上々です。
む……シクティスさんが私の『戦利品』を見つめています。
何ですか?これはあげませんよ? 欲しければ奪い取るのです。そして負ければ貴女の下着が奪われる……
天界は単純明快、弱肉強食。そして酒池肉林です。
「はぁ……フィオドール……」
「フィ、フィオちゃん? お姉ちゃんも行っていい? 後……いい子だから返してぇ」
「フェリス様……それは無理という物だ。フェリス様が天界を離れれば、たちまち天界は崩れ落ちてしまう」
「ふふ、難儀な身体でありんすね……」
「何故⁉︎ 何故エイリーンがフィオ様と一緒ではないのです⁉︎ まさか……シクティスもフィオ様のことを――」
「エイリーン様! たぶん違いますから! 落ち着いて、落ち着いてください!」
話をまとめましょう。私、リーリアさん、キリリスさんで魔界へ侵入。
二人を介入経路の防衛に残し……私が単身、潜入でも突撃でもして厄介な能力持ちを討つ。
……ということで間違っていませんよね?
《聞いていた内容では、そういう事なのだろう》
《なんじゃ? 潜入などと……突撃じゃ! 単騎駆けこそ戦の華よ!》
まあ、使徒もいるので単騎では無いのですが……いいでしょう……私の力、皆さんに見せつける良い機会です。
自分が誰のものなるのか、その目にしっかり刻み込んでくださいね。




