恐怖の魔具
《ウル、カリンさんは――》
《ダメだ……反応がない。まだお前が直接呼びかけた方が可能性があるぞ》
それもそうですね? ウルに頼った私がどうかしていました。
《流石にそれは酷いんじゃないか? オレだって傷付くんだぞ?》
《カリンさん! 緊急事態です!》
《むにゃ……ダメよ……フィオ、そんなに入らない……》
くっ……《念話》は返してくれるのに、起きる気配がありません。
こうなれば最終手段です。ウル、『体重計』を出して下さい。
《そんなもの持っていない。何に使うんだ?それは》
《エイリーンさんに効くのです。早く持って来て下さい》
《だから『タイジュウケイ』って――》
チリン――
「はぁ……このままでは会議になりんせん。これは貸しにしておくんなし?」
キリリスさんから体重計が飛んで来ます。
流石ですね……やはり犬より狐です。
《狐が……いい気になるなよ?》
「はっ⁉︎ 邪悪な『魔具』の気配⁉︎」
そして、すかさず私が体重計をキャッチ……これで私の勝ちが決まりました。
さて、ただで終わらすには惜しい状況ですね。
どうしてやりましょうか?
「エイリーンさん、私の話を聞いていただけますか?」
「フィオ様⁉︎ それは危険な『魔具』です! 今すぐ手をお放しください!」
「……いいんですか? これが貴女の足下へ転移しても」
「ッ⁉︎ ま、まさか……使い方をご存知なのですか?」
《なあ、それ何なんだ? 危険な物なのか?》
《……これは上に乗った者の、重さを測定する器具です》
かつて『科学』が発達した小世界で発明された遺物。
そこでは多くの女性達がこれに乗り、一喜一憂していたと伝えられています。
要するに女性特効……使い方を知る者には恐怖の象徴なのです。
《察するに、重いとダメなのか?》
《ダメという訳ではありませんよ? 好みは人それぞれですから》
《では……何故エイリーンは嫌がるんだ?》
《彼女は自らの重さをコントロール出来ないのです》
《……うん?》
想像してみて下さい、貴女の意中の人が目の前にいます。
その人物の前で体重計に乗る、そしてそれが砕け散る。
当然、見た者は『うわ、こいつ重っ』と思うことでしょう。
そして大抵の女性は自らに『軽さ』を求める。
これが何を意味するか分かりますか?
《なるほど……それが『科学』世界での拷問方法だったのか?》
《ウルも乗ってみますか? 重さはスタイルを保持する指標の一つだそうです》
《……え、遠慮する》
「フィオ様? それは……それだけは何卒――」
「うわー、フィオちゃん随分珍しい物持ってるねー? ほら、こっちに来なよエイリーン」
「フェリス姉さんも、随分と自堕落な生活を送られているようですね? 試しに乗られてみては?」
「え゛?」
そりゃ二万年も運動してないですからね? さぞ体重計は恐ろしいでしょう。
特に胸の大きな女性はその分、他の方より体重には厳しい傾向に――
「遅れた……ん? フィオドール、その手に持ってるのは――ッ⁉︎」
私の手が、体重計ごと氷結します。
訂正しましょう……胸の大きさに関係なく、嫌なものは嫌みたいです。




