七階位パーティー会場
《魔界……魔界だと⁉︎ まさか『魔界インフェロス』か⁉︎》
《他にどの魔界があるのですか? 知っていたら教えて下さい。ああ、女性が居ないのなら結構です》
《知らん! ただ、オレは魔界に行ったことが無いからな……》
天使でも魔界に行った経験がある者は少ないですよ。いえ、ほんの一握りと言っていいでしょう。
過去の天魔大戦で魔界に攻め込めたのは、たった一度だけですからね。
《それで? 行くのか?》
《お忘れですか? 私は介入を禁止されています》
過去にちょっと力み過ぎてしまいまして……介入中に人間界を消滅させてしまいましたからね。
無数にある小世界の一つとはいえ、問題になってしまいました。
まぁそのお陰でリーリアさんの教育係になれたのですが……
《だが今回の介入先は魔界だ。人間界じゃないぞ》
何でしょう? ウルがやたらと魔界行きを推して来ますね。
確かに魔界にも美しい女性は居ますが、男の方が多いのですよ?
百害あって一利あるかどうかも分からない、そんな場所です。
そもそも、ここに楽園があるではないですか?
見てください。どこを向いても可憐な女性ばかりです。
「フィオ先輩、どうしたらいいでしょうか?」
「そうですね……」
リーリアさんが縋るような目で私を見つめて来ます。
とても庇護欲が掻き立てられますね……ここは先輩が一肌脱ぐので、代わりにその服を脱いで貰えないでしょうか?
《馬鹿な事を言ってないで、ちゃんと対策を考えたらどうだ?》
《対策も何も、やる事は決まっていますよ》
《ま、魔界へ行くのか⁉︎》
いや、もう結構近くまで来ているのですが……気付かないのですか?
仮にも忠犬が聞いて呆れますね。
《ッ! オレはおおか――》
「失礼する。む、急いで来たのだが……フィオドールの方が早かったか」
「お久しぶりですね。フレイヤさん」
【聖炎】が来たら、やる事は殲滅以外ありませんよ。
***
「なるほど……事情は分かった。大変な事になっているな」
「ええ、私もどうしたものかと悩んでいたのです」
「あの……えっと?」
朱色の髪に同色の瞳、真っ赤な騎士鎧に身を包んだ七階位……【聖炎】のフレイヤさん。
聖術が苦手で天界での転移もできませんが……それを補って余りある身体能力と、渾名にもなっている【聖炎】の力が武器です。
「いっそのこと殴り込むか?」
「如何に【聖炎】といえど、単独では分が悪いのでは無いでしょうか?」
「む? フィオドールは行かないのか?」
「……私は介入を禁止されていますので」
ウ、ウルと同じ事を聞いてきますね。
いくら考える事が苦手だといっても、犬と思考回路が一緒とは――
《次に犬と言ったら、お前のアレを喰いちぎる》
「そう言えばそんな事もあったな……だが今回は魔界だぞ?」
「ま、魔界⁉︎」
ああ、言ってしまいました……周りの天使達も騒ついていますね。
これで知らなかったと言い訳も出来なくなりました。
もうリーリアさんを連れて、帰っても良いでしょうか?
『最上天使』の証である金色の翼は見せましたから、後は睦言を交わすだけなのです。
「うむ、お前達もよく知るあの魔界だ」
「じゃ、じゃあさっきの大男は⁉︎」
「隔壁を突破されたのか? だとしたら間違いなく大魔王級の魔族だな」
む、天使達の視線が私に集まるのを感じます……こ、これは素晴らしい。
私は今、確実に羨望の的です!
良くやってくれましたフレイヤさん!後でお礼にその鎧を引ん剝いて差し上げます!
そして……フィオドール・イヤー発動!
「聞いた? 大魔王級だって」
「でもたった一撃だったわよ?」
「フィオドール様が強過ぎるのよ!」
「金色の翼……綺麗だったなぁ」
「『最上天使』ってフィオドール様の事だったのね!」
「私、さっきフィオドール様に胸を触って貰っちゃった……」
「ねー、触れられた部分だけくれない? 使ったら返すからさー」
「こ、こらニンク! 胸は貸し借り出来ないってば!」
ふ、ふふ……ふははははは! 来ました! 来ましたよ私の時代が!
仕方無いですね? 魔界だか何だかんだ知りませんが、私が消滅させて来ましょう。
ほら、行きますよウル。貴女も存分に力を振るうのです。
《待ってくれ! 魔界へ行くのならニール様も!》
「しかし、魔族に天界への侵入経路を知られたのは不味いな」
「そ、そうでしょうか? フィオ先輩は、交信する暇もなく討滅させていたと思うのですが」
「……向こうにも、こちらと同じ様な観測手が居ると考えるべきでしょう。ですが、私の手際を評価してくれたのは嬉しいですよ。ありがとうございます、リーリアさん」
「いえ! こちらこそ、ありがとうございます! 私、助けて貰えて……」
いけますね……これはもう失敗のしようがありません。
しかし、どうでしょう? 魔界を消滅させ、時間を掛けて全員を堕とすのも悪くないのでは?
いえ、やはりここは計画通りリーリアさんを――
《おい!》
《何ですか? 今良い所なのです。魔界への散歩はまた今度にしましょう》
《臭う……臭うぞ!》
馬鹿な……私はそんなに臭いますか?
先程の戦闘に汗をかく余地なんて無かったはずですが……こうしてはいられません。一度戻りましょう。
いえ、リーリアさんが匂いフェチの可能性もありますね?
一度匂っていただいて――くっ、しかし危険な賭けです。
これで『先輩、ちょっと臭います』なんて言われてしまったら……ふむ。
それもありなのではないでしょうか? ええ、試してみる価値はありま――
《違う! ってさっきはオレより早く気付いていただろう⁉︎ なんで今度は察しが悪いんだ⁉︎》
チリン――
《忌々しい……狐の臭いだ!》
……今日は七階位でパーティーでもするんですか?
たかが魔界に繋がっただけですから、そんなに皆さんで集まる必要はありませんよ……
お読みいただきありがとうございました。




