エネルギー波が撃ちたい
「エネルギー波が撃てるようになりたいんだ!」
今日はオフである。フィーアポルトから小船に乗って、オレたちパーティーにファラーシャ嬢、アキラを加えて無人島に来てBBQだ。
「エネルギー波が撃てるようになりたいんだ!」
浜辺に椅子を並べ、海を見ながらぐて~っとするのが良いのだ。向こうではファラーシャ嬢の執事とメイドがBBQの支度をしてくれている。ああ、至福だぁ。
「エネルギー波が撃てるようになりたいんだ!」
三顧の礼じゃあるまいし、三度同じことを言われたからといって、折れた訳じゃない。目の前で手を突き出しながら唸っている友人が、周りから白い目で見られているのがいたたまれないから手を差し出してあげるだけだ。
「エネルギー波ってなんだよ?」
「そこから!?」
アキラ的には常識らしいが、オレには全然ピンとこない。何のエネルギー波なんだ? 電波か? X線か? ガンマ線か?
「こう、手からエネルギーの塊がズドーっと出るんだよ!」
「?」
オレが首を傾げると、アキラは頭を抱えて懊悩している。
「マンガとかアニメで見るだろ!?」
「マンガもアニメも見ねえよ」
また懊悩している。
「こう、光がドバーっと出て敵にダメージを与えるんだよ!」
光波なのか。
「できるようになれば最強だと思うんだよ!」
最強かは分からないが、光速の攻撃なら不可避だろうから強いだろうな。
「それをオレの前で言うってことは、オレにどうすればそのエネルギー波が撃てるようになるか考えろ、と言いたいのか?」
「だからさっきからそう言ってるだろ?」
分かるか! なんか期待に満ちた目を向けてくるんですけど。
「どうよ?」
「そうだな…………、とりあえず、肉が焼けたみたいだから肉食ってからにしようぜ」
BBQは最高でした!
ハァー、肉食ったらなんか動きたくなくなったなあ。
「エネルギー波が撃てるようになりたいんだ!」
botかな?
「分かったよ、考えるよ」
うわあ、思いっきりガッツポーズしてるのがむかつく。
「聞いた感じ、光波なんだから魔力をエフェクトで光に変えれば良いんじゃないのか?」
うわあ、何でオレ残念な者を見る目で見られてるの?
「それはもう皆やってんだよ。それで結果が出てないからリンを頼ってるんだろ?」
そんなん知らんがな。
「どういう結果なの?」
「まずピカッと光って終わりだ」
なるほど。魔力で光源を造ったら、光が360度四方八方に拡がって収束しなかったのか。
「収束させたり指向性を持たせたりできなかったのか?」
「やったけどさあ、こう光線がビーって感じで、イメージと違うんだよ」
アキラはそう言って手を水平にしてスーっと横に動かす。う~む。聞いた感じじゃ問題点が分からんな。
「エネルギー波はそうやって動かないのか?」
「エネルギー波はさ、こうエネルギーの塊がドーンっと相手にぶつかる感じなんだよ」
ドーンっとぶつかる、ねえ。何でさっきからエネルギー波の表現が違うのかは、突っ込んじゃいけないんだろうなあ。
「気になってたんだが、エネルギー波ってもしかして遅いの?」
「そんなことねぇよ! スゲエ速さで敵にぶつかるんだから!」
「でも目では追えるんだよな?」
「当たり前だろ?」
エネルギー波は光速より遅いらしい。そして「ぶつかる」とアキラがしきりに表現していることから、エネルギーと言うより、物質と考えるべきなんじゃなかろうか。
「つまり、こういうことか?」
オレは右手の人差し指を突き出し、その先に魔力を集める。そしてその魔力をマテリアルで質量を持つ光に変換すれば、オレの人差し指の先には、光が~って、
「うわあ!?」
質量を持たせた光は、まるで糸の切れた風船のように空へと飛んでいってしまった。
「何やってんの?」
うるさいぞアキラ。う~む、光に質量を持たせても、元が光だから質量が空気より軽くなってしまうのか。でも大量に集めて重くしようとしても、物質だから光としての重ね合わせができない。つまり重くしようとしたら巨大になってしまうんだよなあ。飛行船を造りたい訳じゃないし、アキラの説明から、手から出せる程度の大きさなのが分かる。
う~む、中々難題だな。





