魔物と魔核と素体
「マグ拳ファイターで稼ぐには魔物を倒さなくちゃならない」
「魔物? そんなのがいるのか?」
何ともおどろおどろしい響きだ。暗闇に蠢く何かを想像させる。
「ああ、アレだ」
「えっ!?」
まさかこんな近くに魔物がいるなんて思いもしなかった。
緊張で身構えながらアキラが指差す方を見ると、何やらバスケットボールぐらいの水滴と呼ぶには大きすぎる「何か」があった。
「アレ?」
「アレだ」
「…………何アレ?」
「スライムだ」
スライム。ラノベ等で名前だけはよく見かけるアレか。
「アレ、ホントに魔物なのか? 魔物って人を襲うものだろ? 初日からこの草原の至る所で見かけてるけど、こっちに近付いてこないし、っていうか動かないから、このゲーム特有のオブジェだと思ってたぞ」
「基本的にフィールドの魔物はノンアクティブだからな?」
「ノンアクティブ?」
「受け身。こっちから攻撃を仕掛けなければ攻撃してこないってこと。逆にダンジョンの魔物はアクティブだから、見つかったら戦闘は避けられない」
「なるほど……」
一応頷いているが実は半分くらいしか分かってなかったりする。
「で、あいつは倒すと金になるのか?」
「いや、倒しただけじゃならん」
「そうなのか」
まぁ、倒したらお金になるとか意味分かんないしな。
「そういうゲームもあるけどな」
あるんだ。
「魔物は倒すと「魔核」と「素体」になるんだ」
「マカクとソタイ?」
またよく分からん名前が出てきたな。
「「魔核」は魔物の心臓だと思え。「素体」は依代だ」
「はあ……?」
何語をしゃべっているのだろうか?
「魔物ってのは素体を依代に魔核を埋め込むことでこの世界に召喚された化け物なのさ」
「へぇ」
「だから魔物を倒すと元々の素材の魔核と素体に戻るんだ」
「なるほど……」
もう、魔物を倒したら魔核と素体になる。だけ覚えればいいや。
「んで、この魔核がマジックアイテムの素材になるんで、街の魔核屋で売れるんだ」
「なるほど、やっと魔物とお金が繋がったな」
魔物を倒したら魔核を回収し、街の魔核屋で売ればお金になる、と。…………?
「素体はどうなるんだ?」
「モノによるな」
「…………?」
「素体ってのはピンきりでな。そこら辺の石ころのこともあれば、信じられないようなお宝、例えばこの世界に一つしかないユニークアイテムとか、同じスライムでもどんな素体を依代にしてるかは、倒してみないと分からないんだ」
「なるほど」
「街には素体屋もあるから、石ころや枯木みたいなクズ素体じゃなければ街に持って帰って売ればいい」
考えておこう。
「という訳で、実践だ。リン、あのスライム倒してみ?」
お前はいつもいきなりだな。