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09.今さら泣き言言っても手遅れだよ

「俺は……そんなこと知らない!」


「知らない、じゃなくて、知ろうとしなかったんだろ?」


アーサーの的確な指摘にクラウスは言葉につまる。


「君、フラニーちゃんが良く学園を休んでいた理由を知っているか?」


「それは、単にサボっていただけでしょう? 学園で学ぶ内容などないのですから」


クラウスの返答にアーサーは馬鹿な子を見る目をする。実際馬鹿だから、彼がそのような態度を取るのは当然だ。


「他国の文化を覚えるのが苦手な母が、ここ数年は父と一緒に外交の仕事をしていることも忘れたのか。アレは他国の文化を詳細に把握しているフラニーちゃんが補佐としてついて行っているからだよ。彼女自身は他国と横の繋がりを得る目的で、母について行っていたんだけども……その様子じゃ、母の説明は左から右に聞き流していたんだろうね。五月蠅い奴がいなくなって清々する、とでも思っていたのか?」


「ち、違……」


「寝言をほざくなよ。君が今までフラニーちゃんにしてきたこと、忘れたとは言わせないよ。フラニーちゃんの誕生日は花束と定型文のバースデーカードだけ。しかも自分で届けるんじゃなくて全部人任せ。なのに自分の誕生日はフラニーちゃんが届けないとわめきちらす。公式行事ではフラニーちゃんといる間はずっとふて腐れた態度で、必要なことが終わるとさっさと退席、日常生活でも愚弟は傲慢だったね。君、予定を尋ねるおつむすらないのかい? 先触れもせずいきなり訪問して、恥ってものがないのかい? あ、ごめんね、恥って感覚すらないんだったよね」


アーサーはクラウスに容赦ない言葉を浴びせる。彼が語るたびにクラウスは心を抉られたが、アーサーは手を緩めなかった。

またまたアーサーに場を取られたフランチェスカだが、彼女は計画通りにいかないし、ゴチャゴチャとまとまりがないな、と思いつつ成り行きを見守っていた。


「アーサー兄上!」


「兄上って呼ばないでくれるかな。君、王族から追放処分されたんだよ? 既に君とボクは他人さ。君のような無能に兄呼ばわりされるのは甚だ不愉快だよ。そうそう、今思い出したけどディーデリヒとエレオノーラから伝言を預かっていたんだ。ディーデリヒは『俺の視界に入ったら挽肉にする。嫌なら俺の視界に入るな』だったかな。エレオノーラも『二度と顔を見せるな』だったね。もう少しひねりが欲しいけど、そんなことを考える時間すら無駄だと思ったんだろうね」


和やかに話すアーサーだが、聞かされたクラウスの顔色は土気色だった。

父や母だけでなく、第二王子と第一王女の兄姉二人にまで毛嫌いされていた事を今さらながら理解した。


何かを察してクラウスはフランチェスカを見る。王立騎士団は国王の命令のみ動く。たとえアーサーが何をしようともだ。

そんな王立騎士団を動かしたのは誰か。語るまでもない、フランチェスカだ。

彼女は国王と交渉して王立騎士団を動かした。言葉にすれば単純、だが実行するのがどれほど困難な事か想像に難くない。


味方にするべきは誰だったか、敵に回して恐ろしいのは誰だったか。

背筋に寒気を覚えながら周囲を見回せば、フランチェスカと仲の良い令嬢からは、感情が抜け落ちた笑みを向けられていた。

陣営の貴族たちからは蔑むような目で見られ、仲が良いと思っていた学友たちからは冷たい視線を向けられていた。

ようやくクラウスは現状を正しく認識した。そのお陰で耳が飾りではなくなったが、最初に聞いたのは心の中で何かがへし折れる音だった。


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