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07.馬鹿だと思っていたけど、ここまで馬鹿だとは思わなかった

クラウスの宣言にフランチェスカの表情が凍る。彼女は驚きを隠せなかった。常識と恥があれば到底言わない台詞を、クラウスは恥じることなく堂々と言い切ったからだ。

フランチェスカは視線だけアーサーに向ける。彼は左手で口を隠し、右手で腹を押さえていた。肩が小刻みに震えており、彼が笑いを耐えているのは明白だ。


(頭が痛いですわ)


「そもそも貴様の考えは古い。俺が王になれば、貴様らのような古い考えの者は追い出す。そしてレティとともに俺が新しい風を王宮にふかせてみせる」


計画を頭で練り直していると、反論しないフランチェスカに気をよくしたのか、クラウスは次々と妄言を吐く。

その言葉が耳に届くと同時、先ほどのことが夢ではないとフランチェスカは悟る。できれば夢であってほしかった、と願った彼女だが現実は無情だった。


「そうです、いつまでもかび臭いルールを守るからこの国は良くならないのです! 新しいーー」


「お黙りなさい」


クラウスに続いてレティまで騒ぎ出したが、フランチェスカの一声で二人は押し黙る。愛情も憎悪も感じられない、ただただ冷たい目でフランチェスカは二人を見下ろす。


「カビ臭いルールも守れず、周囲が納得するような実績もない者が囀らないでください、不愉快です」


底冷えする声だった。口調は怒っているように聞こえるが、背筋が凍るような寒さを感じるフランチェスカの言葉に、クラウスとレティは冷や汗をかく。


「……本来なら、少しずつ叱咤する予定でしたが、ここまで愚かなら叱咤も無意味でしょう」


フランチェスカが一気に攻勢を変えなかったのは、ひとえに情けであった。

クラウスがレティと出会うまで、フランチェスカはクラウスに婚約を破棄するほど不満はなかった。

政略結婚ゆえ愛があっての始まりではないが、愛がなかったと言えば嘘になる。

少なくともフランチェスカはクラウスを愛し、半年前までは(・・・・・・)彼を支え続けようと心に決めていた。


「申し訳ございません、アーサー様。お約束を守ることができませんでした」


「いや、構わないよ。人間、愚かになるときは、ここまで愚かになれるんだねって学べたしね。それに十分、面白かったよ」


「寛大なお心、感謝いたします。さて……クラウス様、耳が飾りで理解力の悪い貴方にも理解できるよう告げましょう」


一回だけ深呼吸をすると、表情を引き締めたフランチェスカは言葉を発する。


「クラウス様、貴方様は今日、王族ではなくなりました」


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