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02.お子様ですか?

「それで、わたくしがレティ様を苛めていたと王太子殿下は仰いますが、グデーリアン公爵家の人間であるわたくしに、そのような真似をする理由がございません」


「世迷い言を! 貴様が取り巻きの令嬢を唆し、レティに対して暴言や暴力をふるったのは分かっているのだぞ!」


それを皮切りに側近候補も会話に加わり、フランチェスカがレティにした苛めの内容を責め立てる。

彼らの話を聞くにつれ、フランチェスカは呆れの表情を浮かべる。それも仕方ない。

彼らが語った内容は制服を隠した、教科書を隠した、わざと足を引っかけてこかした、レティを見ては嘲笑ったなど、今時子供でもしないであろうみみっちい内容だったからだ。


「王太子殿下、いえクラウス様。わたくしは何度も申し上げました。ソレ(・・)と愛を育むことに、わたくしは何も異論はございません。ただ不相応な妄言は慎んでください、と警告しただけです」


「言うに事欠いて、レティをソレとは!! 貴様に良心はないのか!」


「人の友人を『取り巻き』と侮辱する方に、良心を語られたくはございません。そもそも何ですか、教科書を隠すとか今時の子供でもしませんよ。それに、本当にわたくしがその気になっていたなら、その程度で済むとお思いですか?」


「ッ!」


「何なら御自身の身で味わってみますか? そうですね、最初に経験したい人がいたら挙手してください。それなりに手加減はしますわよ?」


フランチェスカの言葉に顔色を悪くしたのは王太子であるクラウスや側近候補、ではなく周囲で成り行きを見守っていた者たちだった。

学生であるクラウスたちは知らないが、伏魔殿である王宮においてフランチェスカの評価は『猛毒の黒薔薇』である。

この国では珍しい長い白銀の髪と紫の瞳、妖艶と可憐さが混じった姿態、ワインレッドを基調としたドレス姿は、女性ですら感嘆の声を上げるほど美しかった。

目つきが女性にしては鋭いが、見ようによっては彼女の意思の強さが感じられると言える。

誰もが振り向く見目麗しい容姿をしているが、その中身は権謀術数に揉まれた猛者も裸足で逃げるほど逞しい女傑だ。


クラウスも彼の側近候補も完全に忘れているようだが、クラウスは第三王子で元は王太子になれる可能性が皆無だった。

それを魔王の異名を持つ第一王子から王太子の資格を奪い取ったのは、フランチェスカの暗躍があってこそだ。

宰相の父親、王妃を護衛する第四騎士団に絶大な影響力を持つ母親、優秀な文官である二人の兄という家庭環境を持ち、幼少期から貴族や平民を問わず、様々な人脈を構築していたフランチェスカがいなければ、第三王子のクラウスが王太子の座を得るなど夢のまた夢だったであろう。

仮にフランチェスカがいない状態でクラウスが王太子の座を望んだ場合、人格破綻者の第一王子陣営に完膚なきにまで潰されていたのは想像に難くない。


本音を包み隠さず言えば、クラウス陣営にいる貴族の内、9割はクラウスより彼の背後にいるフランチェスカに忠誠を誓っていた。

クラウス陣営というよりフランチェスカ陣営と言ってしまう方が分かりやすいほどに。

そしてフランチェスカ陣営の人材は、時々第一王子陣営が引き抜き工作をしてくるほど優秀な面子ばかりだ。

勿論クラウス自身に忠誠を誓う貴族もいるが、それは『彼自身は大変扱いやすい』と思っているからだ。

要するにクラウス自身は未だ貴族から舐められており、時々フランチェスカのおまけ扱いと馬鹿にされているが、彼の耳は飾りであった。


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