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断罪の悪役令嬢  作者: 夾竹桃


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14/20

14.断罪、その後

本編より後のお話。

断罪の場は終了した、めでたしめでたし、では終わらない。今夜のことを両親に報告して今後のことを話し合わなければならない。

フランチェスカは学友に帰宅することを謝罪した後、予め用意していた馬車に乗り込む。慣れたもので従者はすぐに馬車をグデーリアン公爵家まで走らせた。


「あのクソガキ、ただ殺すだけじゃ飽きたらねぇ」


「まぁまぁ貴方、まずは陛下とお話し合いをしてから今後を決めましょう? ね?」


夜会の件を両親に報告すると、父は溢れる怒りを隠そうともせず怒声を上げ、そんな父を母は宥めていた。


(お母様、話し合いと仰っていますが、それなら何故剣の手入れしていらっしゃるのでしょうか)


見惚れるような美しい笑顔で剣の手入れをする母に突っ込みたいフランチェスカだが、その後自分がどうなるか想像して言葉を飲み込んだ。


「フラニーは暫く部屋に籠もっておれ。どれだけ身の潔白を叫ぼうとも、悪意でねじ曲げる者は必ずいるからな。噂のネタ欲しさに訪れる者もいるだろうから、明日からわしが良いと言うまで人と会うな」


「お爺様、お心遣い感謝いたします。ですが、そのような者から逃れる為に身を隠せばグデーリアン公爵家の名折れです」


「こういうことへの尻拭いは大人がするもんじゃ。それに、わしらも怒り心頭なんじゃ、鬱憤晴らす場をくれんかの」


「承知しました。ではわたくしは心の傷を癒やすため療養中、という体で部屋に引きこもります。何かあればジャックかレンに伝えてください」


ジャックはフランチェスカの専属執事、レンは専属侍女だ。二人ともフランチェスカに十年以上仕えているベテランだ。


「それとお爺様、わたくしはもう大人ですよ? いつまでも子供扱いはやめてください」


「そう言っている内は、まだまだ子供だ」


祖父の指摘にフランチェスカは押し黙る。


「参りました、お爺様。ところで明日より人と会わない件ですが、ディーデリヒ第二王子殿下やエレオノーラ第一王女殿下が心配して御訪問される可能性があります。お二人には会って事実をお伝えしても宜しいでしょうか」


「二人なら問題なかろう。ただしフラニー、お主が王宮へ行くのは禁ずる」


第二王子か第一王女に命じられても登城はするな、そう理解したフランチェスカは少し迷ったが最終的には祖父の命令を受け入れた。

王族に「話があるなら自分たちの所へ来い」と言って不敬にならないか、と若干不安はあったが、それを祖父が認識していないはずはない、と考えて子細は尋ねなかった。

本音を言えば、最近多忙で会えていない兄たちに会いたい気持ちがあったが、今の王宮に出向くのは兄たちに迷惑がかかるので諦めた。


「承知しました、お爺様。お兄様たちに、わたくしは元気ですとお伝えくださいませ」


フランチェスカの願いに彼女の祖父は優しい笑みを浮かべて頷いた。


翌日、フランチェスカの祖父の言うとおり、野次馬根性まみれの親族や一族を筆頭に、いろいろな人間がグデーリアン公爵家を訪れたが『当主様の御許可を得られた方以外、お通しするなと厳命されております』と拒否した。

フランチェスカの様子が分からなくとも、否、分からないからこそ臆測まみれの噂話があちこちで囁かれた。しかし、噂話はそれほど大きな声ではされなかった。

何故なら、噂話を聞いたアーサーが『変な噂を流すなんて、分かっていないのかな?』と呟いたからだ。

そんなこんなでフランチェスカの噂話が小声で話される頃、二人の人物がグデーリアン公爵家を訪れた。普通なら門前払いだが、二人はフランチェスカと会うことを許された面子だった。


「お久しぶりでございます、ディーデリヒ第二王子殿下、エレオノーラ第一王女殿下」


第二王子ディーデリヒと第一王女エレオノーラ、第三王子クラウスの兄と姉である。 


「よぅ、思ったよりも元気そうだな」


ディーデリヒの言葉にエレオノーラは頷く。流石に今回の件は傷ついているのでは、とディーデリヒはフランチェスカを見るまで思っていた。

しかし、全くと言って良いほどフランチェスカが傷ついた様子はなく、傷ついたことを隠している感じもしない。

強い女だな、と思いつつディーデリヒは席につく。エレオノーラが続くと、フランチェスカ自ら紅茶を入れた。

楽しい茶会が始まったが、フランチェスカが爆弾発言をしたために、すぐ混沌と化した。


「ディーデリヒ第二王子殿下、エレオノーラ第一王女殿下、アーサー王太子殿下から王太子の座を奪いませんか」


まるで近所を散歩してくるかのような軽さでフランチェスカは爆弾発言をする。


「絶対に嫌だ!」


「絶対に嫌!」


彼女の発言を予想していたのか、ディーデリヒとエレオノーラは即断りの言葉を口にする。だが、フランチェスカは予想の斜め上の返答をした。


「そうですか、残念です。3対1ですから、これは気合を入れないといけませんね」


「おい! 人の話を聞け! 俺はお前やアーサー兄上と違って凡人なんだ! 頼むから俺の命を勝手にベット(BET)しないでくれ!」


「わたくしは隣国の幼馴染と結婚しますので、王太子の座は男どもで勝手にしてくださいませ。ディーデリヒお兄様は頑張ってください」


「勝手に人を生け贄にするな! 嫌だからな! アーサー兄上と争うぐらいなら、王位継承権破棄にサインする方がマシだ! 第一、俺の嫁は鋼の心臓を持つおまえらと違って繊細なんだよ。俺が王位継承権争いをすると知ったらショックで一週間は寝込むわ!」


「誰が鋼の心臓持ちですって!」


「お前だよ!」


ディーデリヒとエレオノーラが喧嘩を始めるが、それはフランチェスカの一言でおさまる。それは勿論、聞き捨てならない台詞を彼女が零したからだ。


「なるほど、隣国から調略で攻めてくるのですか。流石はエレオノーラ第一王女殿下です、わたくしの弱い所を確実に狙ってきますね。これはうかうかしていられません」


「違いますわよ! そんなことを考えるのは貴女だけです!」


「ところで可愛い義妹だった者の、可愛い我が侭を聞いていただけませんか?」


「嫌ですわよ! 貴女のは可愛い我が侭の範疇を超えているんですの!」


「『お姉様』なら笑って聞いてくれますよ?」


「あの御方は別格です! はぁ……流石に傷心しているかと思いましたが、元気そうで何よりですわ」


「いつも通りで良かったと言うべきか、それとも傷心して大人しくしてくれというべきか、判断に迷うな」


「間違いなく後者ですわ」


などと茶会に相応しくない悲鳴が聞こえた、とこの日茶会の準備を担当した侍女が日記に書き残した。


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