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単純な死
幼児にとっては力こそ正義。
強いか、弱いか
偉いか、偉くないか
高価か、廉いか
硬いか、軟らかいか
そのような単純な価値観が確立している。
たとえば硬いダイヤモンドや火を吹く戦車が高価で貴重なのは理解する。
茶器や絵画がなぜ高価なのかは解らない。
平和とか福祉とかは全然解らない。
その程度の単純な頭脳の幼児にも図鑑は読める。科学図鑑は幽霊が出てくる漫画や人が死ぬと星になる絵本よりも「偉い」。
すなわち人は死ぬと終わり、それが科学的で正解。
幽霊とかは幼稚で誤りで。
幼児はなまじ思想や教養がないから。
人は死ぬ、死ぬと脳がなくなるからなにも考えなくなる
という科学図鑑程度の真理が深刻だった。
死
というものを、考えている自分がいなくなる。
考えても解らない、むしろ何をどう考えるべきなのかも解らないことだった。




