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足を手に入れそして進化

 

 今日は島に上陸してみようと思う。

 この島の大きさとしては半径50キロメートル程の円形だというのを泳いでいた時に把握している。

 一応、どんな島に今住んでいるのか、というのを知りたいのだ。なんだかんだ初めての外出だ。海の外に出ることを外出と呼ぶなら。

 砂浜のあるところはあらかじめピックアップしてあり、今はそのうちの1カ所へ向かっている。


 着いた。水面から顔を出す。砂浜が真っ白に輝いていてとても綺麗だ。見える範囲には奥まで続く緑に生い茂った木々と白い砂浜しかない。

 危険はなさそうなのでいざ、上陸。

 苦労しながら前ヒレを動かして砂を掻いて進んでいくと唐突に視線が高くなった。なんだ!?と思い下を見ると、なんと今まで砂を掻いていたヒレが無くなり、4本の足が生えていた。先ほどより断然進みやすくなったが、これほどまでに違和感のある変化は初めてで戸惑いを隠せない。


 そうだ、ステータス


 ---------------------

 name: ハルカ・ドウジョウ


 race: 玄武(幼生体)


 level: 8


 skill: 鑑定Ⅴ 咬撃Ⅴ 硬化Ⅵ 魔力操作Ⅳ 遠泳Ⅵ 速泳Ⅲ 飢餓耐性Ⅲ 睡眠耐性Ⅲ 環境適応- 異世界の思考Ⅹ

 ---------------------


 環境適応というスキルのせいだろう。鑑定してみる。

 《環境適応スキル。その環境において適した変化を行う》

 

 陸地を歩くのに適した足になったのか。便利だなこのスキル。レベルは無いようだがいろんな場面で助かりそうでありがたい。


 手に入れた足でのっそのっそと砂浜を歩く。未だに魔物の影すら見かけない。魔物のいない島なら嬉しいのだが、そうもいかないことが上陸した時に気がついた。とてつもない大きさの魔力を持った存在が島の中心部にいるのが感じ取れたのだ。どうあがいても、というか成長したとしても勝てる気がしないほど大きな存在感を持っているので中心まで向かうことはこれから先も無いかもしれない。

 今日は砂浜からすぐに見える森に少し足を踏み入れてみて、日が暮れたら帰ろうと思う。


 1時間ほど歩いただろうか、海辺から見えていた森の中に突入した。鬱蒼と茂った様々な種類の木々がこの距離からなら分かる。どれも地球で見たようなものや、毒々しい紫色をした主張の激しい果物がなる木があったりと目が楽しい。キョロキョロと辺りを見渡して散策してみる。


 そこからさらに5分ほど歩いた頃、右の方少し遠くからタイヤを叩くような鈍い音や動物の悲鳴のような声が響いてきた。なにごとかと思いつつ警戒しながら様子を伺うと、高く茂った草を掻き分けてイノシシのような獣が飛び出してきた。イノシシは一心不乱に逃げているようで、こちらを見向きもせずに走り去ってしまった。

 そのイノシシから時間を置かずに緑色をした人型の生き物が3体同じように走って飛び出してきた。ゲキャキャとそれぞれが意思疎通をしながらイノシシを追い立てている。どうやらゴブリンよりも背のずいぶん低い亀である俺は目に入らなかったようだ。あ、そうそう鑑定しました。ゴブリンでしたこいつら。


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 ゴブリン。魔物。1度も進化していない普通のゴブリン。どこも食用に適さない。

 level: 10

 skill: 悪路耐性Ⅰ飢餓耐性Ⅰ

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 3匹とも似たようなスキルを持っていて、悪路耐性をさらに鑑定すると、文字通り悪路で転びにくくしたりするスキルだった。


 ついでにさっき一瞬だけ見えたイノシシも鑑定済みだ。


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 ボア。イノシシの魔物。臭みがあるが煮込むと美味しい。

 level: 12

 skill:

 --------------------


 ボアと言うらしい。どう考えてもゴブリンよりこっちの方が食べる気が湧くだろう。あの緑の人の形をした生物を食べれる気もしないし。

 レベルはボアの方が高いのにゴブリンに追い立てられているという事は、スキルの差もあるが囲まれるとレベルで勝っていても覆されるということだろう。気をつけないと。

 ゴブリン達を追いかけて茂みを進む。もしかしたらの漁夫の利狙いだが、可能性は低いだろう。行くところもないし行ってみるだけだ。


 どうやら少し開けたところに出たようだ。木々がまばらに生えたところで傷ついたボアとゴブリン達が相対している。ボアも逃げられないと悟ったか一か八かにかけることにしたようで、後ろ足で地面を掻きながらゴブリンを睨みつけている。


「ゲヒャ!」

「ブルゥゥウア!!」


 突っ込んでいったゴブリンの1匹が同じくダッシュをしたボアに突進され当たり負けして吹き飛んだ。大きく吹き飛ばされたゴブリンは茂みから顔を出していた俺のすぐ上を通って近くに落ちた。周りは茂みで向こうからはこちらが見えない。これはチャンスなのでは?


『咬撃』!


「グヒッ」


 目を回して仰向けになっていたゴブリンに近づき首に向かって『咬撃』を発動する。ゴブリンが出した声もそこまで大きくなく、気づかれないだろう。今の1撃でゴブリンは死んだようで、力なく手足を伸ばしている。


 よし、ステータス!


 ---------------------

 name: ハルカ・ドウジョウ


 race: 玄武(幼生体)


 level: 10


 skill: 鑑定Ⅴ 咬撃Ⅵ 硬化Ⅵ 機動力上昇Ⅰ 魔力操作Ⅳ 遠泳Ⅵ 速泳Ⅲ 飢餓耐性Ⅲ 睡眠耐性Ⅲ 環境適応- 異世界の思考Ⅹ

 ---------------------


 おぉ!レベルもついに10に到達した!上がりずらかったレベルが一気に2も増えた。完全に棚ぼただが格上を倒すと経験値の入りがいいなあ。新しいスキルも獲得しているし。


 《機動力上昇スキル。動作全般への補正。レベル依存。》


 亀の速度から脱したぞ!少し。

 このスキルは早くレベルを上げたい所存。


 levelの文字がチカチカと点滅しているのは何だろう?鑑定してみる。


 《玄武(幼生体)の種族レベル最大値に達したため進化を行うことができる。一度始めると半日かかる。》


 最大レベルになると進化できるのか、でもここでするのは危ないな。マイホームに戻ったらしよう。とりあえずはこちらが先だ。

 茂みから再び顔を出すと、2匹に減ったゴブリンが全身から血を流しながらも、限界を迎えてフラついているボアにとどめを刺そうと木の棍棒を振り上げるところであった。思い切り振り下ろされた棍棒がボアの頭に直撃し、ボアは力尽きた。2匹のゴブリンは死んだボアを見て喜んでいる。

 見たいものは見れたし得るものもあったのでここらでマイホームに戻ろうと思う。予定より随分と早いが進化をしたいのだ。


 そそくさと手足を動かし森を出る。砂浜を超え海に入る。と、今までの陸亀としての四肢がスルリと形を変え、ヒレに変化した。『環境適応』スキルが仕事をしたようだ。そこからはスムーズに来た道を戻りマイホームである岩場に到着した。定位置に体を収め、ステータスをもう一度開く。


 ---------------------

 name: ハルカ・ドウジョウ


 race: 玄武(幼生体)


 level: 10


 skill: 鑑定Ⅴ 咬撃Ⅵ 硬化Ⅵ 機動力上昇Ⅰ 魔力操作Ⅳ 遠泳Ⅵ 速泳Ⅲ 飢餓耐性Ⅲ 睡眠耐性Ⅲ 環境適応- 異世界の思考Ⅹ

 ---------------------


 点滅しているlevelを見ながら、進化する、と強く意識する。すると目の前に、というかステータスの画面に重なるように新しい文章が表示された。


 《玄武(幼生体)の第1進化先

 ⇒玄武

 進化しますか?Y/N》


 第1進化先ということは玄武になってからもまだ進化する可能性があるのか、それに派生進化もあるパターンか?今は1種類しか選べないようだが。

 まあ強くなるのが先だ。Yを押すイメージをする。


 瞬間、意識がホワイトアウトした。





 目覚めた。確か進化をしようとしたんだよな、……ってあれ?後ろにある苔むした岩が見える。なんで?前を見てる感覚もあるのに後ろもしっかりと見えている。なんで?



みなさんお馴染み(?)の玄武となります。

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