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リーントレスと冒険者ギルド

人と関わります。

 


「この国とかどう?」

 《デンスタル共和国ですね。人族50%、亜人族49%で奴隷はおらず、とても住みやすい土地柄ではありますね。》

「何か引っかかる言い方だな」

「残りの1%って何族なの?」

 《魔族です。冒険者として活動している者がほとんどですが、1体だけ国の中枢にいますね。

 追加の情報ですが、経済状態が良くありません。国全体でインフレが加速しています。》

「まさか魔族が…?」

 《いえ、魔族は何も関与していません。むしろ勤勉ですね。このインフレは色々と条件が重なってしまった結果です。》


 今の話し方だと確実に魔族関わってると思いこませようとしただろ。真面目に働いちゃってるよ魔族。


「もっと良い国を見つけようか、天のおすすめだとどこになるんだ?」


 天は一息タメてからある国の名前を出した。






「いや〜やっぱり天ちゃんが言ってた通り冒険者が多いね」

「みんな最近できた迷宮に潜りに来たんだろ?迷宮特需ってところか」

 《ここアイセヌス王国の地方都市リーントレスに突如現れた迷宮により冒険者は以前の20倍もの人数がこの街に訪れてますからね。》


 結局天のおすすめの街にした。俺たちよりも圧倒的に世界の情勢を把握している天に任せておけば最初から楽だったのだが、答えを聞いちゃつまらないというルリに付き合って適当な国を候補に挙げていたのだ。


 まあ後々に天が選んだ街の情報を知ると二人で即決したんだが。



「よっ、兄ちゃん達も迷宮に潜りにきたクチか?」

「そんなところです。やっぱり今この街に来るのはみんな冒険者なのですか?」

「そりゃそうだな。一攫千金の夢を掴みに来た命知らず達だけどな」

「まあ冒険者ってのはそんなものなのでしょうね」

「何でもいいけどな。そのおかげもあってか最近景気が良いから冒険者は歓迎だぜ。おっと、長々と話しちまってすまねえな。ようこそ迷宮都市、リーントレスへ」

「はい、ありがとうございます」



 都市を丸々囲うサイズの防壁を見上げたり周りを見ていると、いつの間にか冒険者が並んでいた列がはけて俺たちの番になっていたようで、門番の30代くらいのおっちゃんに話しかけられた。


 冒険者が多くやって来る街の門番をしているだけあってある程度の力を持った人選がされていた。まあ地方都市にしては強い、レベルだったが。


 --------------------

 name: ヤゴール・ロートルマン

 race: 人族

 level: 31

 skill: 槍術Ⅲ 危機感知Ⅱ 記憶Ⅱ

 option: リーントレス門番

 --------------------


 あ、初対面の人には基本敬語ですよ?当たり前ですよね。



 街並みをざっと見渡すと、ある程度発展した様子が見受けられる。レンガや石材で造られた家々が並び、3階まである建物もたまに目に入る。


 冒険者が多いせいかどこもかしこも喧騒で包まれ、静かな場所の方が少ないくらいだ。


 とりあえず冒険者登録をしないといけないな。


 《冒険者ギルドは120m真っ直ぐ歩いた先にある4階建ての青い建物です。付近で一番高い建造物なので見たらすぐに分かります。》


 ありがとう。あ、そうだ。


「もう魔法解いて喋っていいぞ、ルリ」

「…やっとね」


 低めの男声で返事があった途端、隣を歩いていた黒いフードのローブ姿が頭一つ分シュルっと縮んだ。


 フードを下ろして中から出て来たのは、赤い髪をショートにした迷宮を管理している朱雀の魔神種の美少女。後半の属性が強いな。



 この街の郊外で人目につかないところに転移して着いたは良いものの、門の外には検問待ちの冒険者が多かったこともあり、並んでいる間にルリが絡まれる恐れがあるということで、天のアドバイスに従って門を抜けるまでは変装することにしたのだ。


 今まで喋っていなかったのはルリの判断だ。別に声も背丈も顔すらもその辺にいそうな成人男性と化していたのだが、口調で違和感を感じるかもってことで必要な時まで口は開かないと宣言していたのだが、今の今までバレることなく検問をクリアしたので変装を解くように指示をした。


 街の中で絡まれるかも知れないけれどそれはもう仕方ないこととして処理していく。

 さすがに息苦しいし、男同士が手を繋いでお店に入るのも絵面がちょっとね……


 もう一つは、冒険者ギルドの例のテンプレを期待して俺とルリの男女のペアで登録に行くのだ。

 ギルドで起こるであろう事をルリに伝えると、ノリノリで承諾し、やってくれるそうだ。

 天は呆れていたが。


 冒険者ギルドまでの短い道のりを2人で歩きながら話している。100mと少しの距離なのに屋台が数多く出店していて、美味しそうなタレの匂いがそこかしこから醸されていたり、肉がジュウジュウ焼ける音をBGMにしながら足を進める。


 うわ、あのホットドッグ美味しそう。手持ちのお金が無いから買えないけど。



「それにしてもハルカの世界には面白い話があるんだね。美少女を連れてギルドに行くとほぼ絡まれるのがお決まりなんて。しかもその場面がいくつもの本で書かれているんでしょ?」

 《マスターの読んでいた本の内容は全て私が記憶しておりますので、許可さえ頂ければ《再現魔法》を使用して何冊かピックアップいたします》

「え、本当に!?許可する許可する!ハルカの読んでいた本は私も読みたい!」

 《かしこまりました。マスター、宜しいですね?》

「うん、構わないよ」


 《作製しました。マスターの《無限収納》の中に6作品50冊を入れておきましたので、お好きなタイミングでお読みください。》

「ありがとう天ちゃん!」


 さすが天、仕事が早いな。


 《ありがとうございます。》




 《右に見えている青い建物です。》

「いかにも冒険者ギルドって感じだな」


 剣と矢がクロスした絵が描かれた看板をぶら下げた、青く塗料が塗られた4階建てはさすがによく目立ち、分かりやすい。沢山の冒険者がさっきから出入りしているので、うまくタイミングを見計らって木製のドアを押して開く。


 ギィっと音を響かせながらギルドの中に足を踏み入れると、中にいる冒険者たちの目線が先頭を歩く俺に一瞬集まり、次に後ろに目を向けて固定された。


 《この一瞬で数名の性的興奮が高まりました。特に右方のテーブルに着く4人組のうち1人が最も興奮しています。彼からは多少のアルコール成分を検出しています。》


 右をチラッと見ると、茶色の髪を雑に切り揃えた190はあろう大男がルリを熱心に欲情の篭った目で見ていた。

 彼の側には、一回り背丈の低い男たちが同じくルリをチラチラと見ながら話をしている。こっちはただの取り巻きだな。



 テンプレは彼らに任せるとして、まずは目的である冒険者登録をしよう。


 正面から少し歩いた所にカウンターが並び、受付カウンターや素材買取カウンターなどそれぞれに統一された制服の女性が応対している。

 ぱっと見でも10名ほどがいて、人族だけではなく猫耳の獣人族の子も同じように働いて冒険者の相手をしていた。



 《受付カウンターにて冒険者登録を行うようです。》


「受付はあっちみたいだよ、行こうハルカ」



 向かった先では10代半ばほどの若い人族が受付カウンターに座っていた。淡い青い目と同色の髪をおさげにした優しげな顔つきの女の子だ。胸も大きく、ボタンが上まで留められているにも関わらず、制服のシャツと肌との隙間を思わず覗き込んでしまいそうな魅力を放っている。


「こんにちは。冒険者ギルド、リーントレス支部へようこそ」

「こんにちは。これから冒険者になりたいのですが、ここで登録できるのですか?」

「はい、お2人で登録ですか?」

「そうですね」

「…失礼ですが、ご年齢は?」

「2人とも20歳です」

「失礼いたしました。では準備をしますので少々お待ちください」


 日本人って若く見えるって聞いたことあるから年齢制限に引っかかると思ったのかな。


 《冒険者登録するには成人している必要があります。この世界の成人は15歳を指しますので恐らくマスターではなくルリ様への確認だったと思われます。》


「ルリは中学生と言われても納得する顔立ちだからなぁ」

「中学生ってなに?職業?」


 うっかり前世での言葉を言ってしまった俺に、首を傾げて聞いてくる。


「あー、学校って言って分かるか?」

「知ってるよ。人が勉強するときに行く所でしょ?」

「まあそうだな。それで中学生って言うのは、10代前半の子供が行かなくてはいけない学校のことだ。他にも小学校とか高校とかがあるんだけど似たようなものだな」

「行くのは義務なの?」

「確か国の決まりになっていたはず」

「ふぅん…あっ私が若く見えるって事なのね!」


 急に納得したルリはパッと笑顔になって喜んだ。若く見えるのが嬉しいらしい。

 正確な実年齢はルリすら知らないそうで、2万7千と何年かとは言ってたけど。



 他愛ない話をしていると受付ちゃんが戻ってきた。その手には頭ほどの大きさの水晶を持っている。


「お待たせしました。それではまず男性の方からこの水晶に手を乗せてください」


 カウンターに置かれた水晶は台座の上で仄かな輝きを放っている。

 なんぞやこれ?


 《冒険者ギルドが占有しているアーティファクトです。魔力を読み取ることで個人情報のうち、名前だけが登録された専用のタグが台座から排出されます。》


 名前だけ?


 《昔には全て表示していたようなのですが、タグを見られた王族の1人が誘拐されるという事件があってから名前だけ、それも任意で消せるようになったそうです。》


 タグを見られたって、王族も冒険者やってたのか……

 じゃあ種族とかがバレる可能性はない?


 《一切ありません。もし奇跡が起きて情報が抜かれそうになっても私が誤情報に書き換えますのでご安心ください。》


 さすがは天だ。さす天。


 《………。》


 すまん。



 言われた通り水晶に手を乗せると、一瞬だけフッと光を強くなり、台座に空いた穴から銅のプレートが出てきた。


 受付ちゃんはそのプレートにチェーンを取り付けて手渡してきたので手に取って眺める。


「こちらがハルカ様の身分を証明するタグとなります。チェーンを首から下げるか落とさないよう常に所持するようにお願いします。続いて女性の方もこちらに手を置いてください」


 ルリにもタグを渡した後、ギルドの説明を10分程かけてしてくれたのだが、天から大体聞いているので相違がないかくらいで聞き流してしまった。


 《内容をまとめましたが、私の調べたこととほぼ差はありませんでした。


 ・冒険者ギルドは相互互助組織。依頼達成でお金が貰える。

 ・ランクはF〜S

 ・自分のランクより1つ上までの依頼を受注できる。

 ・魔物の素材買取をしている。

 ・冒険者同士の諍いはその場の年長者が止める。


 簡単に必要なものを抜き出すとこの5つですね。

 最後のルールはこの地域で独自に作られたようです。》



 なんと、テンプレを阻害する罠がこんな所に仕組まれているなんて……!


 いやきっと彼なら上手くやってくれるはずだ…!



「依頼は左に見えるボードからお選びください。一番左のボードより順にF、E、Dと順番に分かれていますのでお気をつけください。何か質問はございますか?」


 ルリを見る。半分寝てる。


「特にありません」

「それでは改めまして、冒険者ギルドへようこそ。あなた様方のご活躍を期待しております」



 さぁて、本題だ。



次の更新は早くても金曜以降になりそうです(´・ω...:.;::..



「光魔法の亜種を手に入れました。〜あ、勇者はいらないです〜」

こちらも昨日更新しています。

https://ncode.syosetu.com/n4836eu/6/

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