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迷宮と問題

人間のいる町へ行きまぁす(この問題が片付き次第)

 


「ハルカ、迷宮ってどうやって成長していくのか知ってる?」


 リビングで鑑定妨害をルリに習いながらそんな話になった。


「そう言えば考えたことなかったな。入ってくる人間を糧にしているとか、周囲の魔力を吸って養分としてるとかか?」

「後ろのが正解。周囲の魔力を迷宮が勝手に回収して大きくなっていくんだけど、ここの迷宮ってどういう訳か日々膨大な量の魔力が溜まるのよね。特別大きな火山の火口に位置してるからかもとは考えてるけど」


 まあこの大火山なら特別な地脈の影響という可能性がありそうだな。


「それで、迷宮は500階層を超えて今尚成長してるんだけどちょっと問題が起きてて…

 それを一緒に解決しに行きたいんだけど、いい?」


「別にいいぞ。お、これはどうだ?今のは成功した感じがしたぞ」

「うん、ちゃんと鑑定妨害が成功してる。感覚掴めたと思うから、もう他人からステータスを見られることは無くなると思うよ」

「ありがとうルリ。それで問題って?」


 ルリから鑑定を妨害する小技のオッケーを貰えたので話を聞く体制になる。


 今更だがお互い名前呼びにしている。あの日の事後に、ルリから名前呼びを求められたのだ。それから向こうも名前で呼び始め、それからこれが定着している。


 コップに淹れられたお茶を一口含んだルリは真剣な表情になって話し始める。


「迷宮は基本的に放置されるとモンスターの数が増えて強さもどんどん増していくの。そしてここは魔力が豊富な土地って事もあって、下層に生息しているある程度の知能を持つ魔物が、階層の広さに対して増えすぎちゃったのよ」


 上層の本能で生きてるような魔物なら縄張り争いとかで勝手に死んでいくんだけど、無駄に賢いとね……とルリはため息混じりに呟いた。



「じゃあ解決しに行くってことは下層の魔物をある程度の数に間引くのか?」

「当たり。丁度お互い殺されないし良いレベル上げになるでしょ?レベルは上がって迷宮の問題もとりあえずは解決する、何よりデートが出来るから一石三鳥よ」

「そうだな、行こうか」


 デートの部分だけやけに嬉しそうに口にするルリに笑って返す。

 今日明日の問題では無いそうだが、早いに越したことはないらしい。


 魔物がせっかく生まれているのに殺されて経験値になるのではなくて、環境によってただ死ぬなんて勿体無いじゃない。私の目の届く範囲にいるのにそんなことはさせないわ。

 とはルリの弁。



 ソファーから立ち上がり、お互いの手を握ってルリの『迷宮管理一級権限』スキルで最初に向かう階層へと転移する。

「せっかくだし目的地に着いたら私の本当の姿を見せてあげるわ」

「鳥モードか、楽しみにしてるよ」

「じゃあ行くよ、《迷宮転移》」



 景色がくるんと一回転して視界が真っ赤に染まり、マグマに覆われた魔物と地面すらない溶岩の海に浮かぶように転移した。


「ここって何階層なんだ?一面溶岩だが」

「401層よ。ここから魔物の知能が高くなってくるから、同士討ちとかもしなくなって数が増えすぎちゃってるの」

「さっそく削って行くか」

「うん、その前に本来の姿になるね」


 隣を見ると、神々しく輝く緋い炎で鳥を形作られた、10mを軽く超える鷲がいた。


「それがルリの言う鳥モードか。朱雀、強そうだ」

「早くハルカも亀モードになってよ」

「はいはい、亀モードって言うのね」


 俺も魔法を解いて玄武としての本来の姿に戻る。しばらく振りのせいか懐かしく感じる。



「さっき間引くとは言ったけど魔物を全滅させるくらいに減らす方が迷宮の魔力の収支的には助かるのよね」

「魔力が使われないことが原因だったもんな」

「そうなの。だからお互い『天眼』で見つけ次第どんどん殺していくってのでどう?」

「よし、それでいこう。この階層はゴブリンが多いんだな。ほいっと」


 マグマの熱に適応した黒いゴブリンの頭を吹き飛ばしつつ次の魔物を探す。





 ダンジョンマスターだからって迷宮の魔物を殺してはダメってことは無いようで、ルリはしっかりと魔物を経験値に変え、俺もここの迷宮には相性のいい水系の魔法を使って、周りへの被害を気にせずに処理していっている。


「このペースなら1日に10層くらいいけるんじゃないか?」

「思ったより順調に進んでるからそれくらいは行けそうね。さっきちゃんとカウントしたら542階層まであったから、大体2週間で終わる計算よ」



 会話が続いているが、先ほどからずっとお互いその場から1歩も動かずに魔物を殺している。

 俺は『時空の支配者』で空間を歪めてそこから攻撃を放っているが、ルリの『大空の支配者』も似たことができるようだ。大気を媒介として攻撃できるそう。マグマの中の魔物なら『火の支配者』の管轄なのだが、火属性無効がここでは大抵の魔物には付与されてしまっているので、仕方なく『風の管理者』を使って首を切り落としたり、弱点に風の刃を当てて地道に倒しているようだ。


「火属性無効が地味に効いてるな」

「そうなのよ!ここは私にとってすごいやりづらい迷宮なの!だからハルカに手伝ってもらってありがたく思っているわ」


 迷宮の主が苦戦するのが自分の迷宮とは。苦戦はしてないか。



「よし大体終わり!次!!」

「さあ早く終わらせようか」



 そんなこんなで2週間が経とうとしていた。




テスト勉強しなきゃ〜

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