竜と混沌
今回は勇者いません。
《水と時空の支配者。水と時空に関する全権限を持つ。》
《成長限界突破。どの進化をしようとも、最終進化にはならない。無限の進化は無限の可能性。種族適性に関わらず全てのスキルを獲得可能。》
《永遠の命。寿命や、自分が望まない限り、 状態:死 にならない。》
簡単に言うとチート化が一層進んだって感じね。
時空も管理者から支配者にランクアップして水とまとめられたし、これから先、最終進化になることも無くなったし、なにより死ななくなったって……
我、強キャラすぎん?
こうなったら勇者達のラスボス枠という手もあるな。犠牲を出しながらも頑張って倒した魔王の背後には1匹の亀が!って一瞬想像したが……亀じゃインパクトがない………うるせぇ!
『水と時空の支配者』により、勇者達を元の世界の元の時間に戻すことも可能になったが、赤の他人の亀さんはそんなことしません。せっかくこんな面白い暇つぶしを見つけたのに手放すなんてもったいない。
勇者達がもしこの世界で死んでしまうならそれも運命だったのでしょう(棒読み
棚ぼたで俺が死ぬことは無くなったのでレベリングがてら森に向かって、最深部のドラゴンを殺しに行きたいと思う。
現在時刻の真夜中の世界には搦め手を使うイヤらしい魔物が多いので、日が出てきたら向かうことにする。
3時間後、体に変化は無いと言っても進化したばかりなので使い勝手を確かめつつ時間を潰していると、昇ってきた太陽が森を徐々に照らし始めた。
森に転移で移動すると、《並列思考》を『天眼』と同期させフル稼働させて森中の魔物を探した。
30キロ離れた所に見つけたホブゴブリンのぼーっとした顔に標準が合うように、“転移の応用で作った2点の空間を繋げてこちらの攻撃が届くようになる窓”、略して“転移窓”を設置する。
地点A、つまりここから目標である地点Bに繋げた転移窓にライフル弾を撃つと、地点Bの転移窓から威力そのままの弾が出てくる無限射程システムなのだ。
今日でこの森の主を撃破するつもりなので、森の生態系も全てぶっ壊すつもりで機関銃やライフル弾をサーチアンドデストロイで魔物にばら撒いていく。
もう慣れた魔法なので熟練度とレベルを上げるためのボーナスタイムと思って魔物を処理し、転移窓越しにも《無限収納》が使えるのでガンガン集める。10匹に1秒もかけていないので、広大な森の中から急速に生命の声が失われていくのがここにも伝わってくる。
野生動物の声しか聞こえなくなり、静けさに包まれた森の中央部、強引にレベルを上げた俺は、この土地の生態系の頂点に存在する巨大なドラゴンの元へ転移する。
前回『天眼』でチラ見したときは巨躯を横たわらせて睡眠を貪っていたのに、今目の前で翼を広げてこちらを睨みつけているのは西洋竜の見た目そのまんまのドラゴンさんだ。
さすがに森の異常な空気に気づいて起きたようで、漆黒に染まった全長50mを超える強固な鱗に覆われた巨大な胴体を4本の太い脚で支えて立ち上がり、背中に付いたこれまた大きな翼を時折はためかせている。
目の前に突然現れたにも関わらず驚いた様子も見せず、人間の身長を優に超える大きさの牙が並んだ口をガバッと大きく広げて、光線にしか見えないドラゴンブレスを容赦なく放ってきた。
すぐさま転移で回避をしてドラゴンの上を位置取る。
ドラゴンから放たれた熱線は森を一直線に切り裂き、木々を破壊しながらも50km先にあるはずの海面にぶつかり大爆発を起こした。
ドバァァァァァァァン!!
遠い向こうで高い水しぶきを上げた張本人は微かな疲労も無いようで、長い首をこちらに捻り鋭い眼光を向けてきた。
「ガァァァァァァッ!!」
再び口を開いてブレスを吐き出そうとしたドラゴンの口腔内に氷のショットガンを放ってすぐさま転移で離脱した。
ブレスの熱量のせいか氷は溶けてしまったようで、何のダメージも与えることなく放出された光線は天空に伸びていき雲に大穴を開けて消えていった。
あぁ、俺もブレス攻撃欲しいなぁ。口からビーム出るなんて羨ましすぎる。
真似してやってみようか。
口を大きく広げて、トン単位の水を限界を超えて圧縮し、限りなく細くした射出穴を作ってドラゴンに向ける。転移で逃げても気配で居場所がバレてしまうのかこちらを振り向くドラゴンに即席ブレスをお見舞いする。
ヂュッと音がして透明なラインが伸びていき、ドラゴンの右前脚を5cmほど削った。
それっぽいのは出来たけど狙いが全然定まらないのが欠点だな………
修正しようにもドラゴンブレスの原理がさっぱりわからないからなぁ………
5cm程度では痛くも痒くも無いようでドラゴンは大きな鋭い爪を持った右前脚を横にスイングした。
到底こちらには攻撃が届かない距離だが、色々な作品で予習済みの俺はまたもや転移で不可視の斬撃を避ける。
予想通り背後にあった木々はスパッと輪切りにされ、ただでさえ広い更地がさらに拡張された。
「グゥウォォォォォォォォォォォォォン!!!」
攻撃がどれも当たらない事に腹を立てたドラゴンは島中に聞こえるほどの爆音で咆哮を上げる。空気がビリビリと震えて、この空間も少し歪むほどの圧力を放っていた。
今更だがこのドラゴンのステータス公開だ。
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エンシェントドラゴン【混沌種】。永い年月を生きたドラゴンが経験を重ねて進化し続けた先の最終進化の1つ。この世を恨み、混沌に手を出してしまったため寿命を失った。攻撃全てに混沌が付与され、どの存在にも等しく死が与えられる。
level: 297
skill: 龍の息吹Ⅹ 風魔法Ⅹ 再生Ⅹ 気配感知Ⅹ 魔力自動回復Ⅹ 物理攻撃耐性Ⅸ 魔法攻撃耐性Ⅸ 混沌に触れた者- 不老-
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さすがボス!って感じのステータスだ。スキルレベルが10か9しか無いラインナップに耐性付きすぎてダメージが通らない。耐性を上回る攻撃になったとしても再生し始める。
まあ簡単には死なないドラゴンさんですが、攻撃も凶悪ですね。
《混沌に触れた者。心の中に絶望を持つウインドドラゴンが偶然にも混沌と出会ってしまったために獲得。限りある寿命を奪う代価として全ての攻撃に混沌属性が付与され、そのダメージを負った存在の魂が消滅する。》
混沌ってなぁに?っと鑑定結果はこちら。
《混沌。破滅の使者、待ち望まれたモノ、邪神などと幾多の世界において様々な呼称で呼ばれる宇宙の中を彷徨うナニカ。時間や空間の概念がソレには無い。混沌に触れてしまった個体には奇跡か絶望が与えられる。》
新キャラの登場かー。混沌は宇宙を彷徨っているらしいから過去地球にも来ていたのかな。
それにしても物語終盤で勇者と関わりそうなネタがぶっこまれたね。あーあ、ラスボスポジションは亀ではなくて混沌だろうなきっと。別に悔しくとかはないんだけどね?
これでドラゴンの攻撃の一切を避けた理由になったと思う。混沌さんが付与された攻撃をくらうと魂が消えてしまうそうなので俺のスキルに『永遠の命』はあるけど、100%信じて攻撃を食らってもし死んだら元も子もないので保険程度に考えておく事にしたのだ。
ドラゴンに有効打を与えられる攻撃はそう多くない。今も大量の水を呼び出してドラゴンを包んで圧縮しているが、ドラゴンが水中で爪を一薙ぎするだけで不思議な表現だが、水が死んでしまい制御が外れてしまったのだ。
これも多分混沌の効果なのだろう。予想外に混沌の存在が手強く、攻め手がない。
さて、次はどうしようかな。
新キャラの登場ですね!




