大タニシ攻略
小さな山のようなグランドマザーフォレストスネイルを倒すにあたり、いや名前長いな。大タニシでいいや。
大タニシを倒すためにライフル弾を使おうにも、普段通りに撃ったって効かないことは分かりきっているので、魔力ガン積みで威力、スピード共に上げていけばいつか穴を開けることは出来そうだ。
でもそれだと面白くないので、《再現魔法》で人型になって倒してみようと思い立ち、服も生前の物をしっかりとイメージしてから魔法を使う。
パッと目線が高くなると同時に久しぶりの靴越しの足に地面を感じた。問題なく人だった頃の自分になれたようだ。
ただ失敗は、動きやすい服をイメージしたからか上下共に黒いジャージを着てしまっていることだ。誰も見てないから良いんですけどね。
俺は大学2年生の春、20歳の時に死んだが、その時の姿をまんまコピーしたかのような姿で、髪が長めだ。自分の姿にあまり頓着していなかったからな。
髪の毛が長いのも邪魔くさいので、そこは魔法で微調整する。ある程度見れる格好になったところで武器を用意する。
人間の姿になったからには剣を使ってみたい。生前やってたVRゲームでは銃を持って戦場を駆けずり回っていたが、やっぱし剣も男としては憧れる。
王国の騎士団長と勇者達の訓練を散々見てたので剣の振り回し方は大体わかる。
《再現魔法》で勇者の持っていたものに形を真似た聖剣を創って構え、自分用に足捌きや構えをチューニングしてみる。自分の動きを逐一《並列思考》を使い観察して、騎士団長のやっていた素振りに近づけていく。
魔法で作ったせいなのか体の性能がいいので、1時間もしないうちに剣の扱いが上手くなっていった。ブンブンと腕を振り回しながら考える。
剣だけだと大タニシ相手じゃ決定力に欠けるなあ。空いた片手に銃を持つのもアリかな。どうせ魔法で弾を撃つんだけど、そこは気分で。
またもや《再現魔法》を使って、左手にAKMを装備する。銃の下部に使わないマガジンが付いてるけどこれはただのオシャレだ。
最初に見た時から全く動いてない大タニシにそっと近づいていく。大タニシとの間に障害物が無くなったのを見計らって走り始め、速度をつけてから転移をして大タニシの殻を勢いよく斬りつける。
キンッと音がして虚しく弾かれ、殻には案の定傷一つ付いていなかった。左手をAKMを大タニシに向けて、魔力多めにして引き金を引く。まだまだ足りなかったようで、ガィンという鈍い音を残して砕け散った弾が地面に落ちていく。
自分を何者かが攻撃していると気づいた大タニシは、頂点の高さが10mほどもある黒い殻に帯電し始めた。バチバチッと光る白い稲妻がいくつも殻を沿うように走っていき、ある程度溜まった稲妻が無作為に周囲に放出された。
慌ててバックステップで避けていく。射程はそれほどでもないようで5mも離れると、地面に吸い込まれていくように全ての稲妻が下に落ちた。
あれ?今慌てて避けたけど『魔の理』の《魔力支配》スキルで他者の魔法も操作できるんだよね。避ける必要なかった。
大タニシで厄介なのが、《硬化》と《外殻》のスキルレベルが10なのと、《再生》を5レベルで持っている点だ。
やっとの事で殻に穴を開けることができても、すぐさま穴ごと再生されては敵わない。
大タニシの魔法は気にする必要がなくなったので殻の前に無造作に立つ。どう攻撃したらいいかを考えていると《雷魔法》を再び発動させたらしい。どんどん高まっていく電圧に俺の髪の毛も逆さに持ち上がっていく。
小学校の頃にやった、下敷きを頭に擦り付けてから上に持ち上げると下敷きに髪の毛がついてくるアレみたいだ。
懐かしいなぁと感傷に浸っていると大タニシはイラついてたのか、さっきとは比べ物にならないほどの威力で、こちらだけに向けて稲妻を放ってきた。
どれだけ威力を上げても当たらなければ意味がない訳で、『魔の理』を使って稲妻の支配権を俺自身に移す。それと同時に《雷魔法》の使い方を自然と理解する。
ほう、魔力をそのまま電気に変換してるのか。雷発生の原理とか知ってると更に威力、射程共にアップねぇ。雷のメカニズムとかは中学の理科でやった記憶があるので余裕で分かる。
支配した雷をそのまま俺に帯電させてみる。おお、カッコいい。電気が体の上を走る姿って映画とかアニメでも観てたけどやっぱりカッコいいと思う。
密かに憧れていたことを実現した俺は、テンションが上がって右手に持った聖剣もどきに雷を付与する。
ちょ、待って砂鉄を集め始めてるから!待って待って!
剣に電気を流すのは良くないと分かったので、今度は銃に流してみる。うーん、無くはないね。
電気の力で弾を発射とかも出来そうだし。んんん?電気の力で発射………?あ、思い出したレールガンだ。電流を使ってローレンツ力で加速させて弾を飛ばすんだよな。生前のVR戦争シミュレーションゲームでも、高コスト高火力武器として何度か使ったことがある。
今なら魔法があるし出来るんじゃないか?
《再現魔法》で昔使っていたレールガンを地面の上に呼び出す。レールガンは大きすぎて人が持てるサイズでは無いのだ。
全長が3mほどで、アダマンタイト製の2つのレールのある砲身で、それを支えるように先端部と中間部分と手前側にそれぞれ地面をグリップするためのツメが付いた土台部分が設置されている。
アダマンタイト製なのはゲーム通りに作ったからだ。戦争シミュレーションとかいいながらもファンタジー金属が結構あったなあのゲーム。
機能すればどんな形だろうといいので、早速やってみよう。弾はすでに込められているので後は電力を供給するだけ、となった段階で、ありがたいことに再び大タニシが《雷魔法》を供給してくれたのだ。
学習していないのか、魔法を途中で取られるという未知の経験で動揺しているのかもう一度フルチャージで発動してくれたので簡単に支配権を奪って電力の足しにするが、まだレールガンの発射には足りなそうなので自分の魔力で水増しする。
大タニシは理解できる許容量を超えたのか動きを止めて固まってしまった。もともと微動だにしてないけどな。
動きがないので遠慮なく試射させてもらう。大タニシという大きすぎる的にまっすぐ狙いを定め、帯電していた分と自身の魔力を大量に込めて発射までのカウントダウンをする。
3
2
1
発射!
ゲームでも違和感のあったミュンッという音を森の中に響かせて弾が飛んで行った。もちろん弾道が見えるはずもなく、弾が貫通してできた大タニシに広がる大きな穴で判断したまでだが。
大タニシは向こう側の景色が見えるほどの大穴が致命傷となったようで、《再生》が発動する間もなく死んでしまった。
レールガンの後ろで座り込み、レベルが上がる時特有の心地よさに浸りながら実験の成功を喜ぶ。付近に魔物はいないようなのでステータスを表示する。
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name: ハルカ・ドウジョウ
race: 玄武【時空種】
level: 70
skill:
『天眼』
『装甲』
『魔の理』
『水の支配者』『時空の管理者』『雷の管理者』
『異世界の思考』
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levelの文字が光ってる!!進化できる!来たああああああ!!
今回は進化まで長かったなあ。それだけ強力な個体に進化したからだろうけれど。
早くマイホームに戻って進化したいので丸ごと大タニシを《無限収納》に仕舞い込み、その場を後にする。
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アルメルフェンド王国王直轄迷宮前
「今日は迷宮の10層まで進む予定です。もちろん勇者様方に何かあった場合、不測の事態が考えられる場合はすぐに引き返します。何か質問はございますか?」
「いえ、大丈夫です。ちなみに兵士の方々は何名ほど付いてくるのですか?」
「私を含め10名がご同行させていただきます」
迷宮に初めて突入する勇者達に騎士団長の命令で兵士が10名随行することになった。この兵士達は戦闘には参加せず、魔物からの剥ぎ取りやもし何かあった時に身を呈して勇者を守る役目を国王から言い渡されている。
迷宮にはたまにイレギュラーな存在として、下層にいるはずの魔物が上層で産まれてしまうことがあり、そういった魔物に勇者が殺されることを避けるために勇者を逃すための人柱に選ばれた兵士達が、今勇者の周りを固めている10名なのだ。
「それじゃあ行こうかみんな!『聖剣召喚』!」
次回ッ…!進化ッ……!
そして新作を投稿しました。こちらもよろしければご覧ください。https://ncode.syosetu.com/n4376ev/




