紹介と殻
寝て起きたら朝が来た。当たり前だが。
マイホームで『天眼』を使い、ほぼ日課となっている勇者達の動向の今日この頃を眺める。
今日は勇者達5人vs騎士団長含めた兵士達10人で対人の模擬戦をするようだ。勇者達に比べて兵士たちの人数が多いのは、まあそういうことだ。勇者達の成長に合わせて戦う際の人数を増やしているのだ。模擬戦も今日で3回目であり、勇者達も手馴れた様子で各自の装備を確認している。
「礼央、優美、渚、一樹、準備はいいか?」
「ああ、いつでもいいぜ!」
「私も大丈夫!」
「あたしも!」
「ぼ、僕も大丈夫です」
輝く鎧を纏った陽キャ君が4人に声をかける。何気に初登場な女の子達含め、今の勇者達のステータスはこちら。
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name: クニミツ・ササキ
race: 勇者
level: 1
skill: 身体強化Ⅳ 剣術Ⅲ 光魔法Ⅴ 聖剣召喚-
option: オルファ神の加護
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name: レオ・ヤマウチ
race: 勇者
level: 1
skill: 身体強化Ⅴ 腕力向上Ⅲ 脚力向上Ⅲ 硬化Ⅳ
option: オルファ神の加護
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name: ユミ・シラサキ
race: 勇者
level: 1
skill: 身体強化Ⅲ 回復魔法Ⅴ 補助魔法Ⅳ 錬金術Ⅲ 薬学Ⅱ
option: オルファ神の加護
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name: ナギサ・ノリツキ
race: 勇者
level: 1
skill: 身体強化Ⅲ 全属性魔法Ⅳ 魔力自動回復Ⅲ
option: オルファ神の加護
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name: カズキ・マツモト
race: 勇者
level: 1
skill: 身体強化Ⅲ 調理Ⅱ 射撃Ⅲ 収納魔法Ⅲ
option: オルファ神の加護
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上から順番に、陽キャ君、筋肉、聖女、魔女っ子、陰キャラだ。何の話かって?名前覚えるのが苦手だからぱっと見の印象であだ名を付けただけである。ステータスを見れば名前が分かるのにわざわざ覚える必要も無いだろう?
陽キャ君は両刃のロングソードの聖剣を使う剣士
筋肉は両腕にガントレットをはめた拳闘士
聖女は優しそうな顔をした実際優しい子で、僧侶向きのスキル構成
魔女っ子は勇者パーティーイチの元気っ子
陰キャラはスキルを活かすために弓を持って後衛を担当
魔女っ子の《全属性魔法》を見た時は何そのチートと思ったが、詳細はこうだ。
《全属性魔法。火水風土光闇の6種類の魔法を使えるようになる。各属性の魔法攻撃に対して耐性を持つ。レベル依存。》
全属性と言いながら《氷魔法》も《時空魔法》も無いのだ。魔女っ子もレベルを上げたら覚えるのかしら。
勇者達の模擬戦が始まった。聖女が《補助魔法》を使い、勇者達全員の攻撃力と防御力を底上げし、魔女っ子が呪文の詠唱を始めた。
陰キャラは牽制のために訓練用の矢を先頭の兵士に放ち、筋肉はそれと同時に全身を《硬化》させて兵士達の横から突っ込んだ。
陽キャ君は《光魔法》の詠唱をしつつ聖剣を振りかぶって真っ直ぐ走る。
ふぅん、中々様になってきたじゃないか、と上から目線で語ってみる。『天眼』で上から見てるんだけどね。
勇者達は危なげなく闘い、誰も脱落することなく団長以外を戦闘不能にし、最後に残った団長の奮戦に苦戦するも5人でなんとか追い詰め、ついには降参させて5対10の模擬戦を勝利で終わらせた。
今日はこれで終わりにするらしい。明日は迷宮に行って初めてのレベル上げをするからだ。まあ恐らく勇者達にとっては初めての殺しにもなるんだろうけれど。
解散した勇者達をぼーっと見つつ今日の予定を立てる。時差的なあれこれでこちらはまだ朝早い時間だからだ。
俺もレベルを上げに森に行こうかな。と腰?を上げたところで勇者達一行は目的地に着いたようだ。うん、これを見届けたら森に行こう。
勇者達は1日の汗を流しに王城内にある大浴場に向かっていたのだ。聖女と魔女っ子は女性用と書かれたドアを開けて中に入る。男勢?知らない子ですね。
2人は先程の模擬戦でも着けていた軽鎧を外し、インナーシャツとピチッとしたスパッツのような姿になった。これはこれで身体のラインが出て良きかな。
先に服を脱いだ聖女はスポーツブラのようなものを脱ぐと、思っていたよりも2回りは大きい胸がブルンと飛び出してきた。巨乳さんだ。
次に服を脱いだ魔女っ子は…うん、貧乳もステータス。僕は好きよ。年齢的には高校生だもんね、まだまだ成長するさ、と適当に感想を述べる。
裸になった2人はタオルだけ用意して浴場に入る。出た後の着替えは城仕えのメイドがすでに用意していて、今まで着ていた服も洗濯して貰えるのでそのまま置いてある。
さすがは王城だけあって地球と比べても遜色ないような高級なボディーソープで体を洗っていた魔女っ子が隣で黒い長髪を洗っている聖女に話しかけている。
「ねえ優美、明日あたし達迷宮に行くじゃん?」
「そうだね。最初に出てくる魔物は弱いって聞いてるけどやっぱり怖いよ私…」
「大丈夫!何かあったらあたしが守ってあげるから!優美は回復と補助お願いね!」
生死をかけた闘いをしに行くんだもんな。隣の浴場でやる気に満ち溢れている陽キャ君や筋肉がおかしいだけで普通は怖いよな。
「それに松本君のことも…今からでも松本君だけでも地球に返してあげることって出来ないのかな……」
「王女様の話では魔王を倒して宝物庫に隠された帰還の魔法書を手に入れないと地球には帰れないって話だったじゃない」
「だって渚!召喚の魔法陣が現れたのは私達4人だけなのよ!家に帰ろうとした松本君がたまたま私達の近くに…」
ヒートアップする優美を宥めつつ渚が再び口を開く。
「松本君が地球に帰ることも魔物と戦わずにただ王城で暮らすことも、松本君自身が望むならそうすべきなんだろうけど彼の口から一回もそんなこと言ってなかったよね?」
「でも…」
「模擬戦終わった後も、明日のために弓の手入れをするって言ってたじゃない。松本君がやりたいって言うならそれを聞いてあげるのも私達のすべきことなんじゃないかな」
「うん…分かったよ渚、明日は頑張るね。私がどんな怪我だってすぐに治しちゃうんだから」
元気を取り戻した優美に渚が微笑みかける。
ほう。あの陰キャラは勇者召喚に巻き込まれたのか。あの子はどんどんテンプレ主人公要素が出てくるな。
そのうち彼の内に眠るドラゴンが彼に力を貸して目覚めるパワーを発揮したりしてチート化するのではないだろうか。いや、強奪系の能力に目覚めるかもしれないな。
はい。以上、妄想でした。
埃で輝きを失っていた黒髪に艶やかさを取り戻し、温泉にも入って体をピカピカにしてから2人はお風呂から上がる。
しっかりと服を着るところもガン見してから『天眼』の焦点を外す。もう勇者達は寝るだけだろうからな。
さて、気力も充分得たところで森に行きますか。先日エンペラーグラトニースライムを倒した地域がマイホームから森の中心部に真っ直ぐ進んだ辺りだったので、今日は森の右の方から入って中心部に向かおうかな。
前のスライムくらいのレベルの相手がいれば進化がより近づくからね。
森の入り口に転移で降り立つ。道中でこちらを襲ってくるゴブリンや蛇の魔物を倒しつつ…蛇ってあの蛇だよ。普通の。玄武の背中で砲台と化しているのは蛇と言っていいのか疑問だよね。
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ビッグポイズンスネーク。毒を持った蛇の魔物。ポイズンスネークが進化した事で毒もより強力になっている。
level: 35
skill: 毒牙Ⅳ 熱感知Ⅵ 猛毒生成-
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全長が5メートル近くあろうと大きいのはただの的なので、すぐに掃射されて肉片が散らばる結果となったが。頭部の巨大な牙から繋がる毒腺は役に立ちそうなので《無限収納》に回収する。今までもちょくちょく今後役立ちそうな素材は回収していたのだ。ただ経験値にするのも勿体ないからね。
森をズンズン進んで行くと何故か森の掃除屋が密集している地域に突入した。森の掃除屋って大っきなタニシのことね。
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フォレストスネイル。森の掃除屋と呼ばれるタニシの魔物。その殻はとてつもなく硬く、殻をいくら攻撃しても傷一つ付かないと言われるほどの強度を持つ。
level: 52
skill: 硬化Ⅸ 外殻Ⅸ 消化力向上Ⅴ
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このタニシの魔物が50匹ほど集まって競い合うように地面を這っていて、しかも1匹が1m〜1.5mの大きさなのですごい圧迫感を感じる。
一体何が起きているのか『天眼』を使うと、2匹が繋がって交尾しているようだった。どうやらここはパートナーを見つけるための婚活パーティ的な場所になっているようだ。
魔物って自然発生じゃなくて交配で増えていくんだ…
さすがにこれ程の数の森の掃除屋を殺すのは生態系的にどうかと思ったので目をそらしてスルーする。
転移をしてパーティー中のタニシの向こう側に移動する。さっさと離れて道無き道の上をビューンと飛んでいると100m先に小さな山が見えた。頂点の高さが地上から10mの地点にあり、少しツヤのある黒い三角すいのような形をしている。
うーん完全にタニシの上位互換みたいな魔物だなこれ。《鑑定》
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グランドマザーフォレストスネイル。森の掃除屋と呼ばれるタニシの魔物の頂点。自己受精することで普通のフォレストスネイルを無限に産み出すことができる。殻は傷つかない。
level: 91
skill: 硬化Ⅹ 外殻Ⅹ 再生Ⅵ 雷魔法Ⅴ 消化力向上Ⅶ 同族生産Ⅷ
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レベル100間近!?レベル10のスキルを2つも持ってるし倒せるのか分からない魔物に出会ってしまったな。タニシ側の攻撃手段が《雷魔法》しかないが殺しきるのに苦戦しそうだ……
まあ空間歪めれば勝てるんですけどね。それは最終手段にしよう。手持ちのカードを上手く使って殺したいな。




