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60?と体力

 


 地面で蠢くエンペラーグラトニースライムの背後から攻撃しようとしているわたくし玄武。エンペラーグラトニースライムは幅20m、高さ5mくらいの赤い半透明のゲル状生物で物理攻撃の一切を無効化する。

 スライムの進行方向の真後ろから顔を出したが気づかれていないようだ。進行方向にきっと目があると踏んだのだ。目があるのかは知らないが、上手くいったようでなにより。


 まだ気づかれていないからどんな攻撃をやってみようか。試してみたいことをやろうかな。物理攻撃無効はこのスライムだとどういう風になるのか、今から機関銃を撃ち込んでみる。どうせ効かないのだから思いっきりやろう。普段の倍の威力、速度でフル稼働してエンペラーグラトニースライムに弾を射出していく。超高速で放たれた弾はゲル状の体に当たると同時にエネルギーをゼロにされて体内に吸い込まれてしまった。唯の1度もスライムボディを削ることなく弾が飲み込まれて尽きてしまった。

 これはこれで面白い。どんなに撃っても壊れない的になったな。別の方法で壊しますけれども。攻撃に気づいて振り向いたスライムは《加速》スキルを使ってこちらに高速で突進してきた。さすがはレベル8のスキル、速いな!

 俺は転移でスライムの上空に移動し、次の攻略法を試す。目標を見失い体をモゾモゾと動かしているスライムに向かって大量の水を喚び寄せて叩きつけ、その何百トンもの水でスライムを包み込み、圧縮していく。俺の持つ『水の支配者』のおかげで容易に圧縮されていくエンペラーグラトニースライムは、宙に浮いた大きな水球の中で体を丸めてコアを守ろうとしているが、こちらには余力がありあまっている。

 徐々に圧力を高めていくとゲル状の体を歪めてもがき始めた。コアをよく見るとヒビが入っている。スライムの持つ《再生》スキルによって、ヒビが入っては修復され、すぐにヒビが入って修復されを繰り返している。もう少し圧力を強くすると殺すことはできそうだが、もう1つだけ試してないことがあるのでそれをやりたい。

 水球は維持したまま、『時空の管理者』で俺の存在している次元を少しずらしてからスライムに突撃する。物理攻撃無効のスライムボディも空間をずらされると弱いようで難なくコアまで到達する。そして10cmほどのコアを前足で触れると同時に転移でその場を離れて、水球の真上に転移した後は虹色に輝くコアを《無限収納》に仕舞う。あの赤いスライムボディで分かりずらかったが、コアは虹色だったのだ。そんなことはどうでも良くて、コアを抜き取られた形になったエンペラーグラトニースライムは唯のゲルと化して水球の中を漂っている。それも《無限収納》に回収してステータスを確認する。


 ---------------------

  name: ハルカ・ドウジョウ


 race: 玄武【時空種】


 level: 51


  skill:

『天眼』

『装甲』

『魔の理』

『水の支配者』『時空の管理者』

『異世界の思考』


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 一気に15もレベルが上がった!それと同時に悲しいお知らせがある。最大レベルが40ですらなかったことだ。このままだとレベル60までは進化するチャンスが恐らくないだろう。次の進化が待ち遠しいなあ。はあ。もう遅いし帰ろう。





 ♢♢♢♦︎♦︎♦︎♢♢♢

 アルメルフェンド城



「はぁっ!どうだっ『ライトアロー』!!」


「素晴らしいですわ!クニミツ様!まさかこんなにも早く魔法を習得してしまうとは!クニミツ様はまさに天才ですわ!」


 アルメルフェンド城の修練場にて陽キャ君こと佐々木邦光とその他勇者たちが木で作られた人型の的に向かってスキルを発動する訓練をしていた。この国の常識や魔法の概念など座学は数日前に終わらせ、実際に体を動かしてスキルを使ってみようという事になったのだ。今日も佐々木邦光につきっきりで話し相手になっているのは召喚の際に立ち会っていたアルメルフェンド王国第1王女のフェリシアだ。運動しやすい格好をした勇者達とは違って、ドレスを着て長いブロンドの髪を揺らしながら勇者の訓練を見学している。今も、《光魔法》の一種、貫通力が高い光る矢を放つ魔法である『ライトアロー』の練習をしている佐々木邦光を、満面の笑みで褒めちぎっている。


 同じく修練場で日課の訓練をしていた、王城に勤めている兵士の1人がポツリと呟いた。


「勇者達ってまだレベル1なんだよな?なのに魔法を10発も撃てるのか?俺たちなんか最初はその半分がせいぜいだったよな……」


「勇者は俺たちと違ってポテンシャルが最大限に引き出されている上にオルファ神のご加護も得ているからな。レベルが上がれば俺でも勝てなくなるだろう。……それよりもお前、訓練に戻らなくていいのか?」


「えっ、だ、団長!すぐに復帰します!失礼します!」


 慌てて訓練に戻って行く兵士を見て思わずため息を吐く。今の兵士の気持ちも分かるのだ。普段から血の滲むような修練を重ねて、魔物相手に何度も闘って少しずつ力を付けてきた自分含めたくさんの兵士達に比べて勇者達は、早い成長スピードと、上がりやすくなっているレベルであっという間に人類に並ぶものがなくなってしまう程の強さを得るのだ。それにレベル1にも関わらず勇者の魔力量は常人の倍以上も多いのだ。自分達との差にボヤきたくなるのも仕方ないと思い始めている。今日から勇者達に戦闘技術を教える立場としては、嬉しいのか嬉しくないのか微妙なところだ。ここで考えても仕方ないので歩いて勇者達に近づいていく。


「お前たちがこの前召喚された勇者達だな?今日からお前たちに戦闘技術を教えることになった、アルメルフェンド王国騎士団団長、アルバート・ディーゼラントだ。よろしく頼む。周りからは団長と呼ばれているからお前たちも俺を団長と呼んでくれ」


「アルバート団長は王国内でも1番の強さですのよ。勇者様方の訓練に、私が是非にとお願いしたの」

 佐々木邦光の隣にいたフェリシア王女が勇者達に俺のことを説明する。


 実際に訓練を始めていくと5人の勇者達に重大な欠陥が見つかった。それは体力の無さだ。ポテンシャルが目一杯引き出されていても、元の体力が少なければそれを十全に活かすことはできない。まずは走り込みからやらせる。十分体力が付いてきたら各自にあったメニューをやらせていこう。こちらの都合で呼び出したのだからせめて、力が足りずに死ぬなんて事にはならないように本気で鍛え上げよう。


 さすがは勇者と言うべきか、1週間もしないうちにしばらく走り続けても疲れを見せない程の体力を手に入れていた。中でも拳闘士向きスキル構成の山内礼央は最初から全力で走っているにも関わらず他の勇者と同じ時間走り続けられるほどの体力お化けとなった。


 こうして体力もある程度付いてきたのでそれぞれの勇者にあった訓練をしていく。とは言っても自分に適性のある剣士や僧侶などの基礎を固めるためにその分野に精通した講師を各自に付けて学ばせるのが先だが。俺の担当は佐々木邦光だ。こいつは聖剣を呼び出すことはできるが剣術の基礎は全く知らないようなので持ち方から足運び、色々と教えていく。才能なのかどんどん自分のものにしていく佐々木邦光に末恐ろしさを感じる。駆け引きや気配を読む力などまだ教えてないこともあるが、いずれすぐに俺も抜かれるだろうことが分かる成長速度だ。


 1ヶ月後には迷宮へ行くことになっているが、勇者達なら余裕で目標とした10階層もクリアしてしまうだろう。



亀さんの出番が少ない……増やしたい……

勇者を早く育てないと…!

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