3.
この世界の説明書てきなお話。ほぼ趣味に特化したものなので、あまり面白くはないかもです…。
主に主人公の現在状況です。
キリア=ナイトレイは齢17、エナシスタ公国という北の最果ての地に生まれた。キリアの生まれたナイトレイ家は、代々エナシスタを治めるアッシュベリー公家の側近臣下の一族である。
エナシスタ公国は今から500年ほど前に建国された歴史のある国だ。しかし資源も少なく、毎年多くの雪が積もる。冬場になれば海は凍り、貿易も難しくなってしまう。それはかのグランヴィルとは真逆の特徴だ。
しかしこの極寒の地に住むエナシスタの人間は、その厳しい環境から身を守るために、屈強な体を持つ。並みの人間よりも寿命はうんと長く、そのためか潜在的な魔力量が高い。
閉鎖的な環境のなかで、生き残るために独自で発展し、独自の魔法学を大成していた。
そのためキリアも幼い頃からナイトレイ家で厳しい魔法教育を受けた。
そして2年前の、キリアがグランヴィルのライトメリッツを受験することが決まる少し前、エナシスタ公国では度々大規模な公国会が行われていた。
“グランヴィルの奇妙な兵士たち”
2年前の当時よりも数年前から、時々耳にしていた言葉だった。条約を結ぶ近隣諸国からの救援要請を行う度に聞くのだ。
“1週間ほど前にグランヴィルの兵士を見た。”
エナシスタは農作物が育たない代わりに、各地で魔物退治の救援活動を行い、それでトレードすることがある。
魔物の出現にはだいたい何かしらの原因があり、意味なく現れることはほぼないに等しい。エナシスタがそれを検証すると、決まって周辺の人たちはこう言うのだ。
“グランヴィルの兵士を見ると、魔物が出る”
そんな噂が巷に流れつつあるなか、エナシスタも確かにここ数年で魔物の発生件数は増えていることに気づく。
エナシスタを治めるアッシュベリー公は、正式にグランヴィル国王との話し合いを設け、直接国王に会うものの、特に変わったところは見受けられず、むしろ失礼な結果に終わってしまい、関係は若干悪くなったと言える。
エナシスタは、住民が不安の中で生んだ偏見だった、とも考えたが、それでも減ることはなくむしろ増えていく魔物発生件数に仕方がなく、身内の者にグランヴィルへ留学させるという結論に至ったのだ。
つまりは、建前上勉学に勤しみつつ、本音はそれとなくグランヴィルの様子を探ってこいということである。
そしてまさにちょうど良く、キリアという存在がいたというわけだ。
ただ予想外だったのがアッシュベリー公の実の娘であるシアリスがキリアに付いていくと言って聞かなかったことである。
普段は聞き分けもよく、物静かというか静かすぎるほど静かな娘なのだが、今回の件では頑としてキリアから離れることを拒んでいた。
それに対してついに折れたアッシュベリー公の
どことなく漂わせていた哀愁をキリアは忘れない。
かくして、キリアとシアリスはグランヴィルのライトメリッツ高等魔術学校に受験することになったのだが。
実技試験だとばかり思っていたキリアは、入学試験が筆記試験と聞いた時、軽く固まってしまった。
何を隠そう、キリアは実践こそ得意だが、筆記などは適当である。暗記などは苦手、というか嫌いの域。
一方、シアリスは何でも卒なくこなすため、ほぼ合格間違いなしの学力。
このままでは当初予定していたことが逆になりそうだと、シアリスの弟のノックスに笑われ、これはいかんと自覚し1年間受験勉強に励んだ。
一時はどうなることかと思われたが、難攻不落の倍率5倍を何とか突破した。
よくよく調べてみれば、筆記試験のあとに実技試験もあったみたいで、もしかしたらそこで点を稼いだのかもしれない。
こうして無事にライトメリッツへ入学し、1年が過ぎた。2学年に進級してから数カ月経つ。しかし肝心のグランヴィルについての内情は未だよく分からない。たかだか学生の分際で分かるもんかと言われればそれまでなのだが、何せ国附属の学校だ。何らかの繋がりで、魔法機関に接触出来るかもしれない。
2学年になってそれもだんだんとはっきりしてくる。
今が本格的に動き始める頃合いだと腹を決め、最近のキリアは色々と積極的に情報を仕入れ始めた。