結ばれない
結ばれないことはわかっていた。
どんなに、想っても、想っても、想っても。
「あ。瑠奈いた!ちょっといい?」
「三笠…」
三笠悠真は私の友達。
男女間に友情があるなんて、私は信じていない。
だけど三笠は?
「彼女とまた喧嘩しちゃって…」
その有り得ない友情を堅く信じて疑わない三笠に、どうしようもないくらい恋してる私。
「本当、女ってわかんない。機嫌悪いと言葉選んで話すのとか、本当疲れる…」
こうやって、三笠は私に警戒心なんて持たずに、彼女の愚痴やら相談やらしてくる。
大きな溜め息をつきながら話す三笠に、私は呆れた口調で言った。
「じゃあ彼女と別れたらいいじゃん」
「え!?ないない!」
即答する三笠に、また一つ胸が痛んでることを、三笠は気付いちゃいないのだろう。
「…じゃあ私は?」
「…え?」
この鈍感男の困った顔が見てみたくて。
「瑠奈なら本当疲れないし楽なのに」
もう。清々しいほど私は眼中になくて、悲しくさえならない。
好きな人の幸せを願う。これが本当の愛だなんて、17歳でそんなことを悟ってみたりする。
「まぁ。三笠が彼女といて幸せならいいじゃん」
そう三笠に言って、その言葉を自分に言い聞かすように頭の中を繰り返す。
「瑠奈って本当良い奴だよな」
良い奴は彼女にはなれないことに私は気付いてる。
そんな中、今日も三笠はいつものように彼女の話を私にする。
「てかさ、今度は本当もう無理かも」
「はっ?!」
またか…。
内心そう思っていたけれど、三笠の表情がいつもより寂しげで少しだけ心配になった。
「…何で?何が原因?」
知りたいわけじゃない。
だけど、好きな人には幸せでいてもらわなきゃ困る。
私が入る隙なんて一切ないくらいに。
「…実は、彼女が疑ってる」
「何を?」
私はチラリと三笠を見た。
三笠は何だか気まずそうにボソボソと話し始めた。
「瑠奈と浮気してんじゃないかって…」
「……は?!」
私は驚きを隠しきれず、変な声が出てしまった。
「な!何でそんなことになってんの?!」
私は動揺から、三笠の肩を掴んで上下に揺らした。
「いつも一緒にいるって…」
「だ、だってそれは…!」
それは、一緒にいるのは私が三笠に片思いしているから。
そんな言葉言えるわけなくて、私は言葉につかえてしまう。
「だからさ、俺言ったんだよ?」
三笠の言葉に私は一瞬ビクッとなってしまった。
「瑠奈はただの友達だって。これからもずっと変わらないからって言ったのに」
「…うん…」
胸が苦しい。
この先も変わらない人を想うのは苦しすぎる。
「でも、彼女がさ…俺はそうでも瑠奈は俺が好きなんじゃないかって…」
私は恥ずかしくなって顔が真っ赤になる。
きっと三笠の彼女にはバレていたんだ。
恥ずかしくて死にそうな気持ち。
「だから俺、ちゃんと言っといたから。絶対ないよって」
笑いながら言う三笠を、どんな顔で見たらいい?
清々しいくらいに疑わない。
これっぽっちも女として見ていない。
最初から結ばれないことはわかってたはずなのに。
三笠の幸せが私の幸せなんて、本当に私はそう思えるの?
ずっと彼女が羨ましくて、彼女になってみたくて、憎いなんて思っていたのに…。
「あぁ…もう…」
涙が溢れ出てきたけれど、必死で零さないように私は笑顔で三笠を見た。
「本当…ないのにね?」
困らせることも出来ない。だって、そしたら三笠と友達も続けられなくなるかもしれないから。
「早く彼女に謝って、ちゃんとわかってもらえるまで話した方がいいよ!」
三笠の彼女は女友達の存在も許せないなんて、心狭いなぁ。なんて思ってみたり。
私だったら、寛容でいられるのになんて思ったけれど。
でも…。
結局は私も三笠を独り占めしたくなる。
「瑠奈本当ありがとう!」
私は笑顔で三笠を彼女の元まで送り出す。
好きな人の幸せを願うのが本当の愛だなんて。
いつか、心底思えるその日まで。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ちょっと悲しい感じですが、好きな人の幸せを願うと言うことが出来たらすごくいいなぁと思いながら書きました!