05 挨拶
「セルディ殿……!セルディ殿…………!!」
「ん……」
体を前後に揺らされて、思わず目を覚ます。うっすらと開いた瞳に映る光景を、まだ寝ぼけている頭をフル回転して考える。綺麗に日焼けした肌。日光に照らされてもなお輝く金の髪。騎士団の制服を身に着けていて想像はできなかったけど、逞しい腕をお持ちの様だ。両肩を揺すられた時の力強さといったら……貧弱娘の私とは大違いだなと、内心苦笑する。
「ジョルジュさん……?」
「よかった……このまま寝ていたらどうしようかと……」
グリーンの瞳に浮かぶのは安堵の色。胸に手を当て、ニコッとほほ笑む姿は好感をもてる。
「熟睡していました、すみません」
疲れが溜まっていたせいか、初対面の人を目の前に思いっきり寝ていた私。しかも相手はこの国の騎士団副団長。温厚な人だからよかったものの、自分だったら呆れ果てるところだろう。
「この中にいるのはわかっているんだよ!!」
「早く出てこい!」
「なんだか外が騒がしいですね……」
馬車の外から聞こえるやかましい声。思わず顔をしかめる私。
「襲撃に遭ってしまったようです、この辺りはならず者などが多いので」
溜息をついて困ったように眉毛をハの字に曲げるジョルジュさん。わざわざ迎えに辺鄙な村まで来てくれた人。寝ている間も気を張って自分は一睡もしていないのであろう。表向きは元気そうな表情だが、顔は少しやつれている。
「ふむ……」
いるのはわかっている。
早く出てこい……ね。心の中で彼等の言葉を反芻する。目的は……私か。
「おはようございます」
馬車の扉を勢いよく開け放ち、地面に着地。周りを見回した後、一言挨拶させてもらう。のんきに挨拶してる場合じゃねーんだよという厳ついおっさんの鋭いツッコミもスルー。いち、に、さん、し……十四人か。馬車を取り囲むのは十四人。私が出てきた扉部分の方向に三人。後方に二人。前方(馬側)に四人。あと五人が少し離れている感じね。背後はさすがに見てみないとわからないから、確認できるだけで十四人。めんどうだなー……。
「てめぇが勇者か!悪いがその命もらうぜぇ、ケケケ」
一番威勢のいい男が、私めがけて剣の切っ先を向けてきた。走り込み、そのままの勢いで突進してくる。呆然と立ち尽くす私にそのまま攻撃が命中したかのように……思えた。
「遅い」
しかし、彼の目の前に私は既にいない。空振りした剣。背後を振り返って驚くように目を見開く男。彼の首元には私の短剣が向けられている。
「形成逆転」
ニヤリと笑うのはならず者……ではなく、勇者気取りの私。
「お、親分!!」
「なんてことだー!」
「やめてくれー!!」
周りを取り囲んでる奴等が、口々に喚く。
両手で目を覆って泣いてる奴もいる。乙女か……!(私が乙女だけど)
そうか、こいつが親分だったか。このならず者たちのリーダーってことは、利用できそうだ。
「こいつの命が惜しいなら、いうことをきけ。武器を捨てて、大人しく拘束されろ」
親玉の首を方腕で絞め、短剣をもう片方の手で突きつける。
決して小さくはない声でひきょうものー!鬼!悪魔ー!!などと聞こえるが、どうでもいい!
やったらやり返される、それが自然じゃない?
「ジョルジュさん、この者たちを捕らえてもらえますか?」
「え、ええ……」
ジョルジュさんは僅かに戸惑いを見せたものの、素早く馬車から降りて次々と縄で男たちを拘束する。私は全員が拘束されるのを見届けると、自らの手で親玉をきつく縛り上げる。勇者がなんで狙われたのかとかはどうでもよくて、私の貴重な睡眠を妨害したのが許せなかったからだ、単純に。
理由を書くことが遅れているのに、また書かねばならないことが増えている事態。少々時間は掛かるかもしれませんが、マイペースで更新していきます!ジャンルを思い切って恋愛からファンタジーに変更してみました。ファンタジー要素を強めていきたいと思っていますm(__)m